大腸検査の巻
夫の入院をきっかけに、自分も今年は健康に意識を向けようと思って15年ぶりくらいに健康診断に行ってみたのですが(医者にドン引きされた)、何かそうなるともうこの機会にすべてを調べてもらおうと思い、循環器科に行ったり婦人科に行ったり内臓や胸をエコー検査してもらったりとここ数ヶ月やたら病院を梯子しまくった勢いで、人生初の大腸内視鏡検査を受けてみることにしました。
さっそく家から近い内科に予約して、どうされましたかという問診に
「どうもしてないのですが一度わたしの大腸の中見てもらいたいと思って参上しました!!」
と威勢よく医者に宣言したところその心意気最高だねみたいな感じであっさり検査食と2リットルの下剤を渡され3週間後の予約日を伝えられ、ついでに「生まれた時から便秘です」と告白したらマグミットという薬を処方され、慢性的な便秘の人は検査用の下剤だけだと全部出しきれないことがあるから検査日までそれ飲んでねと言われ帰宅しました。
検査までの流れを説明すると、自分の場合マグミットを毎日服用して腸内の便通を整えておき、検査前日に検査食を食べて、当日は絶食し朝から下剤を大量に飲んで自宅で大腸内を完全にカラにしてから病院に向かう、というものでした。
というわけで検査に向けての日々がスタートしたのですが、この便秘改善薬マグミットがめちゃめちゃ良くて、生まれて初めての「自然なお通じ」に毎日感動しながら予約日までおとなしく服用すること3週間。
ついに検査前日、その日は宇宙食風のレトルトパウチのごはん3食(中身はふつうにおいしいお粥とかシチュー)と水のみで1日過ごし、いよいよ迎えた検査当日。
昼過ぎの検査に向けて、朝7時から2リットルの下剤スタートです。
渡されていたのはモビプレップという名前の2種類の粉が入った袋で、ここに約2リットルの水を注いで粉を混ぜて、自分で下剤を作ります。そんでそれをコップに注いで、15分に一杯ずつひたすら飲むというわけです。
見た目はただの水みたいですが、これを飲むと腸内のすべてが出てしまうのかと思うと緊張します。覚悟を決めて一口飲んだモビプレップ、これが反射的に口から戻しそうになるようなものすごい味をしてました。
おいしくないとかマズイというのとも違う、なんて言うんだろう、
「これは絶対に摂取してはいけない」
と脳が本能的に拒絶してくる味というか、洗剤などの毒物を口にしたときのような危機感を感じてしまうため、なんとか冷静に「いやいやこれは体にまったく吸収されないように作られた安全な(?)人工液だから」と理性で本能を説き伏せないと飲み込めない味でした。
なかなか辛かったです。15分でコップ一杯のノルマがもう果たせない。一口飲んでは同じだけ水を飲んで口直ししながらじゃないと相当難しい。なんとかがんばりながら1時間飲んでも全体の三分の一がやっとの量で、そのうち胃が満杯になってセルフ水責めの刑みたいになり、いよいよ吐き気に襲われます。
どうしようこれできる気がしない。しかも1時間経っても便意をもよおさない。おかしい。
泣きそうになりながらちょっとおしっこだけしようとトイレに向かうと、いきなり下剤が効き始め、そこからは早かったです。お腹は全然痛くないのにトイレに座るだけでめっちゃ出る。出てしまえば胃の膨満感は消えるので下剤も飲める。このくり返しで1リットル飲みきる頃には完全に無色透明な液体しか出なくなりました。
ちなみに事前に渡された下剤計画表でも、約1リットル、時間にしておよそ2時間で排出液が無色透明になってたらそこで服用はやめてよいと書いてあり、本当にその通りになってて科学スゴイと思いました。
それ以上は脱水の危険があるため下剤は終わりにして、あとは経口補水液を飲みながら、下剤を完全に出しきるまで自分の場合はさらに2時間くらい、合計15回くらいトイレに行きましたが、ほんとにお腹はまったく痛くなくて、もしかしたらマグミットで計画的に大腸を整えておいたおかげかもと思ってお医者さんグッジョブと感謝しました。
便秘のままだったらモビプレップを1リットルではすまなかったかもしれず、脳が拒否するあの液体を飲む量が半分ですんでマジで助かりました。
予約時間は午後イチでしたが、朝7時から飲んで落ち着くのに4時間かかった自分にはちょうど良い感じでした。そのタイミングで内科から状況確認の電話がきて、下剤の飲んだ量と排便回数と排出液の状態を伝え、バッチリですので予約時間にお越しください、と言われました。
いやーなんか、自宅でここまで準備できるのは病院側にしても患者側にしてもウィンウィンで、大腸内視鏡検査が始まってからたくさんの人々の試行錯誤がこのような仕組みになったのかと思うと先人の知恵にも大感謝です。
さてシャワーを浴びて指定された時間に病院に向かいます。病院はめちゃくちゃきれいで新しくて、それだけで安心しますが、看護師の皆さんもてきぱきと優しくてさらに安心感が増しました。カーテンで仕切られた移動式ベッドに案内され貴重品を鍵付きロッカーに入れます。タイミング悪く生理だったのですが、検査着に着替えてからナプキン当てれば問題ないと言われてたのでその通りにするべく服を脱いでいたところ、看護師さんが隣のカーテンの人に声をかけているのが聞こえてきました。
〇〇さん目が覚めましたかーと言われたのは男性で、
「え・・・もう終わったんですか?ほんとに?」
と何度も聞き返していて、看護師さんがそうですよと笑っています。
そうなんですこの病院は大腸内視鏡は麻酔で寝てる間でやるのです。隣のベッドの男の人は麻酔がめっちゃよく効いた様子で、寝てる間にすべてが終わっていることが信じられないらしく、看護師さんが去った後も「まじか・・・すげえ」を感動と共に小さな独り言で連呼してて、カーテン越しにそれを聞きながら、わたしも1時間後にはあなたのように無事に検査を終えて感動する人になっていたいですと願いながら着替え完了。
男女共用でごめんなさいねと看護師さんは気遣ってくれましたがとにかくきれいだしカーテンで完全に仕切られてるしそこにいる人も自分のように着替えて準備してる人か麻酔でボンヤリしてる人しかいないので特に気になりませんでした。
着替えたところで診察室の前の椅子に座らされ、麻酔注入用の針を事前に腕に刺されます。緊張MAX。
さっきの男の人はすでに着替えて帰るところのようですが「すげえ・・・いやこれマジでいい・・・」とずっと感嘆のつぶやきをしていて、その言葉信じるぞと思いながら、さらにしばらくそのまま待っていると中に呼ばれ、内視鏡やモニターのある診察台に寝かされ、血圧を測られたりしながらお医者さんを待ちます。
看護師さんに初めてですよね緊張しますか?と笑顔で聞かれ、めちゃくちゃしてますと答えるなどしてるうちにお医者の先生登場、登場と同時に身体を横にする姿勢に変えられ、腕の針に「では麻酔入れますねー」と看護師さん笑顔のまま4本ほど麻酔を連射してきます。
余談なのですが1本目が打たれた瞬間に胸にサーッとミントのような爽快感というか熱さを感じて、前にテレビで見たスイスの安楽死施設で高齢のおばあさまが安楽死の点滴を打った時に「胸が熱いわ」と言ってたやつこれかな?!と思い看護師さんになんか胸が熱いですと同じことを伝えてみると「麻酔の反応ですね」と笑顔で言われて、安楽死の人ってこんな感じなのか〜と意外な発見に驚きました。
その後ろではお医者の先生が「ではカメラを入れる準備のためにおしりにゼリー塗りますよ」と言ってるのが聞こえましたが、自分の記憶はここまでです。マイのしりにゼリーが塗られたかどうかは全然わかりません。
ふとなんとなく目が覚めるとまだ同じ姿勢で診察台に寝ており、お腹の中がゴロゴロする感じ(多分カメラ)とモニターに自分の大腸が映ってるのが見えましたが、とにかく心地よく眠たくてファーとりあえず検査は進んでるっぽいけどあとはよろしくですzzzみたいな感じで再度意識寸断。
なんか良い感じの夢を見ていました。
麻酔で寝るのってめっちゃ気持ちがいい。安楽死の人ってこのまま死ねるとしたらいや最高じゃんとか相当物議を醸し出す不穏なことを軽率に考えてしまうくらいに至福の睡眠体験。しかし次第に理性のほうが戻ってきて自分で自分を起こしました。
目を開けるとさっき着替えたカーテンの中に寝かされてます。看護師さんが「目覚めてますよね、もっと寝ててもいいですよ、ゆっくり準備してくださいね」と声をかけてくれます。
信じられない、もう終わってるとは、いやこれマジでいい、大腸検査めっちゃいい、と完全にさっきの男の人と同じことを思う自分。
麻酔のせいでまだフラフラなのに真面目な自分はさっさと着替えて外に出なきゃと考えてきぱき着替えましたが、ここらへんがまた記憶が途切れ途切れです。看護師さんに説明を受けたような気もしますがあんまり覚えてません。手元にはいつのまに渡されたのか異常所見なしにマルのついた紙があります。
そのままフラフラしながらあらためて診察室に呼ばれてお医者の先生に撮りたてのフレッシュなマイ大腸の画像を見せられ検査の説明を受けるのですが、ここも記憶があやふやなんですよね。すごいですね麻酔って。
とりあえず大腸は大変きれいで何の問題もないですよ!!という先生の話しを緊張から解き放たれた安心感と共に謎のハイテンションでヤッターヤッターとか笑いながら聞いてしまった気がします。
先生あの!!マグミットめっちゃよかったです!!と叫んだら先生もうれしくなったのか3ヶ月分ドッサリ処方してくれたので、そのあとそれを持って薬局に行ったはずなのですがこれもなんとなくしか覚えてません。
麻酔のあとは運転も重要な判断を伴う仕事も禁止と言われた意味がわかりました。限界を超えて酒を飲んだときと同じレベルで認知能力がおかしくなっていました。
そうして記憶が曖昧なまま無事に家にたどり着いたわけですが、まとめると、とにかく夢心地の間に検査が終わったことへの感動がスゴすぎた、というのがわたしの大腸検査への感想です。家で下剤の時も思いましたが、これらすべての流れは多くの人の知恵で確立したシステムなわけで、再び人類の叡智ありがとうという感謝の気持ちでいっぱいです。
下剤を飲む最初の1時間だけつらかったですが、あと針を刺されるとかそういうマイナスを差し引いても自分は大腸検査めっちゃ良かったなと思いました。
自分の場合は問題なしだったのがさらに最高ですが、小さな腫瘍ならその場で切ったりもしてくれるようです。
つまり何が言いたいかと言うと、中年のみんな一度は大腸検査(麻酔を添えて)やりなYO!!ということでした。
個人差とか体質とか当然いろいろありますけど、わたしはほんとにやって良かったなと思いました。
あと国民健康保険は神ということです。
税金払ってるんだし、いろいろなものがまともなうちにちゃんとその恩恵を受け、その大切さを守っていこうな!!
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