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【宇川直宏展ファンアート:長~いシール解説と展覧会の感想】

現在、東京都にある練馬区立美術館にて、現“在”美術家・宇川直宏氏の大規模個展『宇川直宏展 FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE』が開催されています。



今回はその展覧会に刺激を受けてマンマン堂が制作したファンアートとしてのシール(ステッカー)作品を紹介させていただきます。
展覧会自体について詳しく知りたい方は、宇川さん本人が解説している下の動画がオススメです!※動画の公開は会期中のみで終了しました。

宇川直宏が語る宇川直宏展とライブメディアの未来|練馬区立美術館で「宇川直宏展 FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE」が開催中の宇川直宏。DOMMUNEのこれまでとこれからを聞く





【 個展の雑感 】

私マンマン堂は、前々日の夜中に発症した食中毒が治りきらない病み上がりかけの体で9/18(月)に会場へ赴き、まず一人で場内を一周ぐるりと観て回ったあと、宇川さん直々の解説ツアーに参加してもう一周。帰る頃には考え事に夢中になってすっかり元気になりました。

宇川さんの解説は、展示順に沿って映像メディア機器や放送/配信の歴史をかいつまんで話すスタイルでしたが、これが大層面白くて、各作品に込めた意味や繫がりが明確になるだけでなく、タイムマシーンか何かに乗って時空を旅するような壮大な気分が味わえました。
大半の大人は自身の経験してきた放送メディアの変容と照らし合わせてカジュアルに楽しめるのではないでしょうか。「地デジカ」って鹿のキャラクターいたな~!

また、小中学生の社会科見学にも持って来いだと感じました。チャンネルが合う生徒は終始かなりわくわくするだろうし、ここでチューニングが合って目覚めちゃう生徒も出てきそうです。

ただ、説明中も作品の音が流れっ放しで聞き取りづらい事が多かったので、解説ツアーとは別にイヤホンガイドみたいな有料サービスがあっても良い気がしました。



大きな感想としては、AIの活用方法(AIとの戯れ方)が前向きでまっとうだと感じました。AIと人間との関係性を題材にして、全く異なる存在が絶妙な距離を保ちながら楽しく共存する姿を描き、未来に希望が持てるような構成は、自分が普段考えている理想的な社会像にも通ずる気がしてとても共感できました。
最後の部屋に多数展示された「AIが描いたDOMMUNEの絵」に折り紙のようなテクスチャが多用されていることも明るい気持ちになった理由かも知れません。

あとは、宇川さんが話してくれた上岡龍太郎の数々の逸話によって、逆説的に自分のスタンスが明確になったことも収穫でした。
【感想はまた後で追記していく予定です(noteのsage的使い方は気楽で便利☆)】


ちなみに会場の練馬区立美術館は、2018年夏の『芳年 − 激動の時代を生きた鬼才浮世絵師』以来でしたが、この時の展示も見応えたっぷりの充実した内容で、きちんとアンケートも書いた記憶があります。
折り込み式の大型図版を多用した図録がこれまた素晴らしく、痒いところに手が届かない事が多い展覧会図録シーンにおいては珍しい、たいへん満足のいく図録でした。
↓そういえば、こちらの商品写真でシールを並べているのがその図録の表紙でした。重厚なハードカバーでかっこいい…!宇川直宏展の図録(予約販売だった)も届くのが楽しみ!



【 ファンアート紹介 】

さて、私が行った日はまだ調整中の展示作品があったり、あるはずの看板がなかったり、これからのDOMMUNE配信に併せて展示作品が増える予定だったり等、まだまだ展覧会が成長中でした。さすがは現"在"美術。
帰り道の電車の中で「これは終わり間際にもう一度観に来る必要があるぞ」と思うと同時に、観たばかりの作品群から刺激を受けて、いくつかアイディアが湧いてきていました。

これをもとに次回の鑑賞までに作品を完成させることが出来たら、自分なりの現"在"美術へのリアクションになるし、何より今回の展覧会のテーマのひとつ「ドミューンを描こう!」に通ずるのではないか!?
そう考えて形にしたのが下のシール(ステッカー)作品(以下「シ作」)です。


第マン章:背景にすぎないS/U/P/E/Rゼウスと2000人以上のビックリマン世界の民

「BG S/U/P/E/R ZEUS & THE OVER 2000 BIKKURIMAN WORLD RESIDENTS」
(額サイズ:250mm x 250mm)


このシ作は、『宇川直宏展 FINAL MEDIA THERAPIST @DOMMUNE』の会場で唯一過去の(パンデミック以前に発表された)作品となる「DJ JOHN CAGE & THE 1000 WORLD WIDE DJS / with out JOHN CAGE」を題材にした濃厚オマージュ作品です。
「DJ JOHN CAGE & THE 1000 WORLD WIDE DJS / with out JOHN CAGE」についての説明は会場のキャプションをどうぞ(画質悪くてすみません…)



【 シールの構成(意味)】

「BG S/U/P/E/R ZEUS & THE OVER 2000 BIKKURIMAN WORLD RESIDENTS」は、原作となる「DJ JOHN CAGE & THE 1000 WORLD WIDE DJS / with out JOHN CAGE」の特徴をビックリマンシール(悪魔VS天使シリーズ)に置き換えて再現したオマージュ作品です。
以下に変換内容を簡単に解説します。

◉1000人に及ぶDJプレイのアーカイブ >>> 2000以上のBMキャラクターのアーカイブ

ロッテ公式ホームページ内にある「ビックリマンシール検索」というアーカイブコーナーに現時点でアップされているビックリマンシール2483枚の画像を一層に並べて配置することで1000人のDJプレイというインパクトのある絵面的な第一印象を表現しました。
画像は表裏使用しているので結果的に4966個の正方形が並んでいます。
シールの群れがブロックノイズのように見える様子は、DJの音が重なり過ぎてホワイトノイズ化して判別できないという状況を視覚的に再現しています。


◉45分に一回訪れる4:33の静寂と明滅 >>>シリーズの区切りごとに一回差し込まれる4.33cmのブランク(空白)と背景プリズムの明滅

今回の作品で並べたビックリマンシール画像は、左上から右下にかけて「シリーズ」を発売順に並べており、それぞれの「シリーズ」の区切りが訪れるごとに4.33cmのブランクを差し込みました。
※「ビックリマンシール検索」はロッテ公式の公開アーカイブなのですが、載ってないシールがあったり組分けが間違っていたりします(そもそもの画質も悪い)。面白いのでそれらの間違いもそのまま反映しました。


◉DJのかける曲ではなく「4:33」の無音時間に著作権が発生する皮肉>>>4.33cmから覗く「背景にすぎないスーパーゼウス」に最も著作権が発生する可能性が高い

4.33cmのブランクが作り出した隙間から見えるのは、ビックリマンの象徴的なキャラクター・スーパーゼウスです。細かすぎて判別できない他の多くのシールではなく、背景(BG)にすぎないスーパーゼウスの方に最も著作権の発生する可能性がある、という状況を作り出しています。
背景のシール素材は、明滅の表現としてレインボー素材にするか悩みましたが、シールが題材であることを優先して定番の四角プリズム(角プリ)素材を採用しました。



【 シールの構成(形)】

このシ作、実はシール3枚重ねでした。ガラスで挟むタイプの額に収めているので取り出すことは想定していないのですが、自分の意思を込めてオマージュ以上の意味を持たせるためにシール(ステッカー)を3枚重ねています。

◆1枚目

1枚目は小さいシール画像がびっしり印刷された透明シール。
最初はビックリマンシールのオモテ面の画像2483枚だけ並べたのですが、上がってきたサンプルを見たらシールの絵柄が判別できてしまったので更に小さくしないといけないと分かり、サイズを半分にして裏面も並べることにしました。
第1弾から第16弾までは弾ごとのシール枚数がほぼ同じなのでブランクがずれることで出来る模様が規則正しいのですが、公正取引委員会が介入した後の第17弾から弾ごとの枚数が大幅に変更されて、模様の形が乱れるのが意図せず面白い効果になっているのではないでしょうか。公式のアーカイブではちょうどこの境目で情報が乱れるので輪をかけて歪になっています。


◆2枚目

2枚目は角プリ仕様のノイズにまみれたS/U/P/E/Rゼウス。
1枚目の小さいシールで出来たブロックノイズをどかしても、2枚目の同じ部分にもノイズがあって結局ハッキリとゼウスが見えない・・・ようにしたかったのですが、崩しすぎても面白くないかな?などとぐずぐず悩みまくり、ハッキリしない態度でデザインしたので結構ハッキリゼウスになっちゃいました。※注:ロッテ様のビックリマンシールとは何の関係もありません!これはただのファンアートです!!!!!(って書かないと公式に凸する人がイルかもって冗談で無くもはやディストピア)


◆3枚目

3枚目は破れた紙の隙間から覗くゼウスの目。
マンマン堂お馴染みのドッキリシール「しょうじのやぶれ」モチーフ。
上質紙シールにレンチキュラーレンズシートを貼っているので、角度を変えるとノイズ部分がささやかに動いて見えます。これはレンチキュラーレンズの横線でブラウン管テレビの走査線を表現しています。
うっすらとD/O/S/E/A/Lのロゴが透けているのはD/O/S/E/A/Lの剥離紙側から覗いていることを示唆しているのですが、これがどういう意味を表してるかと言うと・・・ご想像にお任せします(笑)


◆裏面

3枚目のシールだけ裏面印刷ありで、ベタベタですがタギングで作品名を記しています。
何でタギングにしたかというと、1枚目のシールで並べるシールの枚数やブランクを4.33cmにするための計算など細かい調整ばかりしてぐったりしていたので気晴らしがしたかったからです(笑)
表裏ともに要素が密集してるデザインだけど方向性が正反対なので結果的に面白い対比になったと思います。タギングに挑戦するのは生まれて初めてだったため、ここは練習がてら既存のフォントを参考にアレンジしました。

下部にはお馴染みのネームタグを貼っています。こちらのタギングは完全オリジナルで考えるのがとても楽しかった!全部で4パターン作り、シール2枚目の裏面と外箱にも貼りました。



【 シールの構成(外装)】

・外箱

シ作そのものが思ったより地味に感じられたので、額縁を入れる箱を全面デコレーションしました。中身より外箱の方がかっこいい問題(ありがち)

使用している浮世絵マンシールは本物をそのまま貼付しています。
あちらこちらに貼ってある「ビックリマンシールにマンマン堂要素をコラージュした名刺シール」は、かつておまけに付けていたものと同じデザインですが、今回はネットプリントを使って原寸大で出力したものです。ビックリマンシールのサイズが分かる方には箱のサイズが想像しやすいかと。

※「ビックリマンシールにマンマン堂要素をコラージュした名刺シール」オリジナルの画像はこちら(94種類を掲載中)↓↓↓↓↓↓


・包装紙

額縁が届いた際の包装紙にシールを貼って流用。何から何までサンプリング (Everybody sampling)するマイアミ天国世代です。ドロボー!

オモテに貼ったDOMMUNEステッカーはマンマン堂がD/O/S/E/A/L 2023に出品した「知の海DOMMUNEフレークシール」の余りを再利用(リ・サイクル!)、裏にはドッキリシールオマージュの名刺シールを貼っています(リ・ミックス!)。そうです、私がマイアミ天国世代です。ドロボー!!

こちらの名刺シールの記事はこちら↓↓↓↓↓↓



【 結び 】

上記のファンアートシール一式は、10/5(月)に2度目の鑑賞に訪れた際に暑苦しいお手紙も添えて宇川さんご本人にお渡ししてきました。目を細めて喜んでいただけたのでとても嬉しかったです。

この日も解説ツアーに参加するつもりで赴いたのですが、あまりに混んでいたので「今こそ会場内が一番空いているのではないか?!」と頭を切り替えて前半はツアーに参加せずに展示をじっくり鑑賞することにしました。この判断が大正解で、完全貸し切り状態で展覧会を堪能。
好きだったノイズ作品はリズムが少し変わった気がした。最初の方がストイックで好みだったように感じたけれど、単純にタイミングの問題かもしれない。
最後の部屋に展示された「AIが描いたDOMMUNEの絵」が増えていて、前回はなかった瀬戸内メカ寂聴に衝(笑)撃を受ける。AIったらお茶目ね!一方で人間が描いた「ドミューンを描こう!」も展示スペースが増えた中に好みのものを見つけてニコニコしました。

宇川さんの口から語られる上岡龍太郎の件は絶対に聴きたかったので、場内を一周したあと少し引き返して解説ツアー後半に参加すべく近くの展示室で座って待機。佐渡島で演奏するテリーライリーや八代亜紀、水槽に沈んで指揮棒を振るEYEちゃんなどの映像を眺めてぼんやり過ごしてから後半だけ参加した解説ツアーでは、前回と違った情報がたくさん聞けました。
1回参加した人も再度参加してみると新たな発見があるかも知れません。

ちなみにこの日は小山田圭吾氏と高木完氏も客としてツアーに参加していて、AIが描いたコーネリアスの絵を本人が眺める様子をすぐ横で見て軽く混乱しました。

というか!前回の来館時にまだ調整中だった「FM RADIO 出演中の宇川直宏の語りで揉まれる身体/NOBREATH Chapter3」という体験型のマッサージチェアの作品が今回一番の目的だったのに相変わらず調整中だったのどういうこと!!!!!!!!!!
結論:もうっ、もう一回行けばいいんでしょ!



【 蛇足 】

ところで今回、不躾だと理解しながらも、宇川さんに手渡した手紙に「DOMMUNEで取り扱ってほしい事柄」として数組のアーティストやら何やらの紹介を認めました。
ずば抜けて異質な才能(才能とは一体?みたいなのいりまへん。個人の主観で十分)を持ちながら世間から無視された(と私が感じている)アーティストたちがこのまま埋もれていくのをどうにかしたくて書いた嘆願書。本人たちはSNSでくだを巻いたり、諦観して創作意欲を失っていたりするから余計なお世話なんだろうけど、これは完全に自分の為なので自己満足だろうが何だろうが、やれることはやる。
宇川さんがどれかひとつでも興味を持ってくれるといいなあ。

実はTwitterで発信することをやめて1年過ぎたあたりから表現欲求と承認欲求のバランスがSNSをやる前に戻った感じがして、とても調子が良い。創作や鑑賞における自己肯定感が無遠慮にかなり高い状態。
自分が面白いと感じることは他人が何と言おうが「自分にとっては」面白いし、自分がつまらないと感じることは皆にどれだけ評価されていようが「自分にとっては」つまらない。この当たり前の感覚が戻ってきた。

そうなって世の中を眺めてみると、ジャンル関係なく本当にクソみたいにつまらない創作物がコミュニケーション消費に持ち上げられて至るところから溢れ出て、肥溜めに浸かっているような気分だなぁ~と思ってしまう。「でもそれらは全て誰かにとって大切なもの」みたいな平凡な理屈などどうでもよい。そんなことは当たり前だという前提で、今は自分にとってどうかの方が大事だ。
必要以上のコミュニケーションを優先するあまり、創作や鑑賞の質が落ちてゆく人々に興味なし。

という意思表明を伴った蛇足でおしまい。


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