見出し画像

日々の雑感 その2

コロナの抗原検査キットを見て、妊娠検査を思う人がいるのではないだろうか。同じ形してるし、ふりかけるものは違うけれど。とはいえ、私が妊娠可能だった若い時分にはまだそんな手頃なキットはなかった。妊娠が疑われれば、あるいは妊娠が期待されればまず産婦人科に行かなくてはならなかった時代。受け入れ難い妊娠をした人にとっては、かなり高いハードルだったと思う。病院に行って確定すれば、産むか産まないかをリミット付きで決断しなければならないし、顔や身体を他人に晒して声を出さずとも「私は妊娠しました」とレッテルを貼られてしまう。そういう意味では検査キットで試し、心の準備をひとりで静かにできる時間がわずかでも与えられるようになったのではないか。もちろん、受け入れ難い妊娠などあってはならない。その上で(ここ大事)子宮に宿ったすべての生命は尊く大切に扱われなければならないと思う。(非常にデリケートな部分なので重ねるが、受け入れ難い妊娠はあってはならない)
話が逸れたが、コロナだった。ここ1週間くらい体調が悪く、ゴロゴロしながら読書していた。幸い熱は高くても38.4度ほどだったので、軽かったのかも知れない。まだたまに咳が出る。医者にもかからず解熱剤もなし、パブロンSゴールドWしか飲んでない。先月、孫ちゃんに鼻風邪をもらってから通して2びん飲み尽くしちゃった。小瓶だから大丈夫だろう。それで検査キットの話に戻るが、陽性反応が出て一番喜んだ、というか安心した(のだと本人の威信を守ってやろうか)のは最初にコロナにかかった夫だった。私のコロナ陽性は、彼の解放を意味することになった。トイレごとの、ドアノブ触れるたびの、どこもかしこも触れば必ずアルコール消毒しなければならない義務や、リビングに設置されていたデスクトップPC(仕事で使うため夫が自ら移動した)もろとも寝室に閉じ込められた不自由な生活からの解放……元々送別会だかなんだかで午前様してウィルスを持ってくる方がいけない。そのことに関しては動かぬ証拠がある以上、夫は反省しているようだ。やはり、夫は「動かぬ証拠」に弱い。逆に言えば、「動かぬ証拠」がなければ強気に出る。だから今後、私は彼の「動かぬ証拠」集めに勤しむことにした。そして手始めに私はおもむろに道具を差し出す、音声録音機!(どうぞここはドラちゃん風に)「これから飲み会があっても午前様はしませんか?」私は夫へスマホのマイクを向ける。人はマイクを向けられると拒めないものらしい、夫素直に応じる「はい、しません!」(この人、もうウソ言ってるよ)こんな手のひらサイズの証拠収集キットがあるなんて、結婚当時のピュアな私にタイムスリップして手渡してあげたい。これさえあったなら幾多のトラブルも回避でき、流す涙もワンカップくらいで済んだだろうに!
梅雨前の好い時節に自宅待機を余儀なくされ、さすがに読書三昧も疲れてきた。早く歩き回りたい。次の小説のネタもつかめないまま、来週木曜日には芥川賞候補作が発表になるという。また他人の作ったものをああだこうだと言い合う波に巻かれて、溺れたり、あるいは乗ったり果敢に泳いだりするのかな。まあ、今回もどんなすごい作品が並ぶのか楽しみではある。


万条由衣

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?