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気持ちをあらたに小説を書こう

SNSを日常的にのぞいていると、知らぬうちに影響を受けている。才能がある人はネット上にたんまりと存在する。受賞したとか何次予選を通過したとか、めでたい結果が流れてくるたび、彼らがどんな小説を書いているかにはあまり関心を持つこともしないで、かつその賞を見極めることもしないで、ただあたふたする。そして自分もその賞に応募してみようか、と思い、つい書いてしまう。自分自身はどんな小説を目標にして書き続けているかということをつと忘れ、自分が強い気持ちで試し続けている作風をないがしろにして、まったく予期しなかった小説を書いてしまう。もちろん、場当たり的に書いた小説には期待した結果はついてこない。冷静に考えればあたりまえだ。自分はどんなジャンルでも書くことができる才能なんてこれっぽっちもないのだから。それにどんな賞も、天才が一瞬にして受賞するだけではない。長い年月をかけて歯をダメにしたり(執筆をしていると変なところに力が入ったりするものだ)胃潰瘍になったり、陽を浴びることを疎んで引きこもったりして努力を積み重ね、不健康と引き換えにやっと栄光を手にする人だって少なからずいるだろう。場当たり的に書く、などと見くびった態度で創作に向かうなんて言語道断である。
最近の自分には、とにかく常に焦りがある。まったくもってよくない状態だ。打開するためになすべきことはわかっている。無駄に吐き出した文字に埋もれてしまった自分の武器を掘り返し、汚れを落とし、磨く。しっかり構えて照準を定め、ぶっぱなす。それしかない。どん底に落ちても、そこに武器があるとわかっているから救われる。さあ、今すぐにゴミの山をほじくり返して、ないがしろにしていた武器を手にしろ。どっちみちそれは自分の一部なのだから、すねてなんていないだろうし、やみくもに乱射してやるなんて脅さないだろう。ごめんね、ちょっと回り道しちゃった、と裏声でファルセット効かせてつぶやけば、きっと許してくれるに決まっている。
言うまでもないけど、武器ってピストルじゃないよ。火炎放射器でもない。それはね(むにょむにょ~)……いつかきっと世の中に知らしめる時が来る、そう思いたいね。

万条 由衣


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