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10年ぶりのソウル(4)

ソウルあれこれ

 最後は、これまで触れなかった、今回のソウルでの体験をいくつか思いつくままにご紹介しようと思います。まずは教保文庫。ソウルに行くと私たちが必ず訪れる、韓国を代表する書店である教保文庫ですが、今回は光化門の近くまで行ったついでに、旅の最終日にやっと入ることができました。あまり時間がなかったので、じっくり店内を見て回ることはできませんでしたが、村上春樹コーナーがあったのが目についたので写真に収めてきました。もう何十年も前から、韓国でも村上春樹は大人気で何作もがベストセラーになっています。今回はたぶん、最新作の「街とその不確かな壁」の韓国語訳が9月に出版されるそうですから、その前宣伝なのでしょう。村上春樹の人気ぶりがうかがえます。(この文章を書いている時点では、すでにベストセラーになっているようです。)


 旧市庁舎前にあった、昨年の「梨泰院惨事」の慰霊施設のことは先に紹介しました。「梨泰院クラス」のファンだった私は、あの事件がなければ、たぶん今回の旅で梨泰院に行っていたと思います。下の写真はそれとは違う場所で見つけた慰霊施設です。横断幕に書かれている文章を読むと、「コロナ19ワクチン犠牲者焼香所」とあります。この施設を建てたのは、(社)コロナ19ワクチン被害者家族協議会という組織のようです。私はコロナワクチンはたくさんの人命を救ったと思いますが、ワクチン接種が原因で無くなった方がいたことは否定できないと思います。(結局、私たち夫婦はそんな可能性を考慮して、4回しかワクチン接種を受けませんでした。)犠牲者がたとえ少数だったとしても、身内をなくした家族にとっては決して容認できるものではないのでしょう。ワクチン接種(と死亡との因果関係の立証はなかなか難しいようですが、日本でもこんな犠牲者家族の組織はあるのでしょうか。

 いろいろと日本で問題になっている旧統一教会の本部は韓国にあります。ヒュンダイソウルの見物を終えて、地下鉄の汝矣島駅に戻った私たちは異様な黒い集団に遭遇しました。Tシャツ、ブラウス、スカート、ズボンと衣装は様々ですが、すべて黒一色なのです。老若男女がいました。いや、今思えば老人はいなかった。警官が何人か警備に出ていました。この集団は何だろう。私たちはすぐになにかの宗教団体だろうと思って、写真も撮らず目をそらせて、早々にその場を離れて地下鉄に乗りました。帰国してから、その黒い集団の「正体」を知りました。あの人たちは教職関係者と家族、それを支持する学生や市民だったんですね。日本でもそうですが、韓国の教師達もいわゆる「モンスターペアレント」たちから大きな圧迫を受けているようです。自殺者が出たと言います。この黒い集団は、その死者への哀悼の意を表すために黒服を着て、国会議事堂前の広場で開催される抗議集会に出席するために集まっていたのでした。市民の力で軍事政権から民主主義を勝ち取ったという成功体験がある韓国では、何かがあれば人々はデモに集まります。現在、福島での処理水放出に際して、韓国では野党が激しい抗議活動をしていますが、尹政権が理解を示しているので、中国のようにならなかったのは幸いでした。(9月初めからハンストをしていた野党党首の李在明が病院に運ばれたというニュースがつい今流れました。9月18日現在。)

ニューヨークタイムズがデモを報じたXのポスト

 最後は食事の話。長年、糖尿病を患っていて、ここ十数年は主食の米やパン、麺類などを食べない糖質制限の食事をしている私は、日本国内でも外食に苦労しているんですが、辛いものもどちらかといえば苦手で、赤っぽい料理が多い韓国では食べるものに困っていて、同行する家内にいつも迷惑をかけています。ここでは、そんな私が今回のソウルで食べた料理を一部紹介します。たぶん、何の参考にもならないと思いますが。

 最初は、仁寺洞の新しい複合ビル「アンニョン仁寺洞」で見つけた店で食べた鍋料理。店の名前も料理の名前もよくわかりませんが、値段の割りに量が多くておいしい豆腐と肉の鍋料理でした。食べきれない。他の韓国人の客も残していました。

 次はロッテデパート地下のフードコートで食べたソルロンタン。私の好物料理です。かつて、ソルロンタンのチェーン店を舞台にした韓国ドラマがありましたね。私の好きな女優が出ていた。ソルロンタンはスープの味が薄いので、自分で塩を足して食べます。

  次は明洞でたまたま見つけた店。店の名前はわかりません。ここでは、これも私の好物であるネギたっぷりのパジョンと韓国風すいとんを食べました。この店は最近日本でも多くなったタブロイドによる注文システムでした。もちろん、日本語でも使えるので楽でした。最近、韓国語の教師をしている人のSNSを読みましたが、その人は、これからは韓国語会話の教科書から料理の注文という項目はなくなるかもしれないと書いていました。良いことなのか悪いことなのかわかりませんね。韓国に限らず海外では、特に食堂において、言葉が通じないということがそもそも刺激的なドキドキする経験で、通じた時の喜びもまた大きいのですが。


 最後も明洞でたまたま見つけた店。日本式のトンカツの店です。店の名前は「ミルフィーユ」。メニューにもハングルでトンカツと書いてありました。サクサクでとても美味しいトンカツでした。ちょっと目に付かない店で、眼下の通りは人で溢れているのに、建物の2階にある店の中はゆったりしていました。おすすめです。  

 

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