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小さいけど、大切なもの

台所で夕食を作っていると、お風呂場から微かな声が聞こえる。『ん….???』と耳を澄ますと小さな声が聞こえてくる。

「おかぁさ….ん、おかあさぁあ…ん…」


どうやら娘がお風呂場から、泣きながら私を呼んでいる。『何のことやら…また、相方の双子の妹とお風呂で喧嘩ですか?』


そう思いながら、ため息交じりに風呂場へ向かうと、裸のままビチョビチョになった娘が一人ポツンと脱衣所に立って、目をこすりながら体を震わせている。


『どうしたの?』そう娘の顔を覗き込みながら聞くが、泣き過ぎて言葉にならない。『な…もっ….わす…うぅ….」と、全く理解不能だ。するとお風呂の中から、相方が通訳をしてくれる。


『みーちゃんね、今日保育園で苗を見つけてもって帰ろうとしたんだけど、
忘れたんだって!!』

なるほど。でも、なぜ今なのか...?そう思いながらも、娘の説得に入る。「もう今日は遅いし保育園しまってるから、明日取りに行けばいいんじゃない?」娘はその言葉を聞き、少し落ち着いたようだ。



そして翌日。娘は私に似て、こだわりが強いのに忘れっぽい。昨日の出来事など、すっかりさっぱり忘れて、また帰宅してしまったのだ…。


そして、それに気づいた娘は、今回も言葉にならない言葉を発しながら、今度は夕食中に泣き出した。それも金曜日の夜だ。『週末に枯れてしまったらどうしよう...誰かに捨てられたらどうしよう...』そんな思いが娘にさらなる不安と悲しみをもたらした。


「大丈夫、きっとあるよ」と根拠のない言葉を放ち、娘の説得に入る。すると娘は新たな問題を指摘する。「お母さんも、みーちゃんも忘れんぼでしょ。だから今は覚えていても、月曜日にまた忘れたらどうしよう.... 」と。


なるほど、それは正論ですね...!そして、しばし考える。「じゃあ、玄関の扉にメモして貼っておくのはどう?登園の時にきっと気づくよ!」と私。

すると、今度は「でも、玄関で気づいても、保育園に行くまでに忘れちゃうかも….」と更なる心配をする娘。娘は私よりも賢く、慎重だ。最終的には、玄関に貼ったメモを持って保育園に行こう。そこでやっと娘との折り合いがついた。


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そして本日、その『苗』というやつを持ち帰ることに成功した。苗を見つけた娘は飛び跳ねて喜び、自慢気に私にそれを見せてくれた。その苗は想像以上に小さく、苗というよりは芽という言葉の方がしっくりくる。既に半分干からびているけれど、一応持ち帰ることにした。


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子供と暮らしていると、沢山の小さなものを持ち帰ってくる。石ころに、どんぐり、木の枝に葉っぱ。保育園でもらった、トイレットペーパーの芯やヨーグルトのカップなど。


どれも一見、どこにでもあるつまらないものに見えるのだけど、娘たちにとっては素敵な宝のように見えてくるから不思議だ。


小さな手で大切に持ち帰り、そのモノ1つ1つとの出会いを話してくれる。そんな子供たちは、日常の中でワクワクを見つけ出す天才だと、彼女たちの一喜一憂を目にしながら思うのです。


その小さなモノへの好奇心を、どうかこれからも伸ばしていきたい。少なくとも、潰すようなことは、極力避けたい。

だとするならば。
さて、親としては、どうしましょう...?

応えはまだ見つからないけれど、まずは子供達をよく観察するところから始めようと思う。そこにヒントが隠れているかもしれない。



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