ゆとりのゲーム感想「デビルワールド」
【はじめに】
ファミコンソフトの中で売上に貢献したソフトを3つ答えよ、と言われたら多くの人は「ゼビウス」、「スーパーマリオブラザーズ」、「ドラゴンクエスト1」と答えるだろう。このソフト達はファミコンの転換期を作り上げた猛者であり、世間に「テレビゲーム」「家庭用ゲーム機」の存在を知らしめた偉大なゲームである。「ドラゴンクエスト1」が無ければ日本人のRPGを異常なほど好む性質は無かっただろうし、「スーパーマリオブラザーズ」が無ければいつまで経っても古臭いアーケード時代のアクションがのさばってたし、「ゼビウス」が無ければ、そもそもファミコンはここまで人気がでなかったと考える。
特にファミコン版の「ゼビウス」はゲーマーならリスペクトすべきだ。家庭用ゲーム機にエンジンをかけてくれたのは、何を隠そうコイツなのだから。マリオやドラクエと違って知名度は低いが、コイツはファミコンソフトの中でも「今でも通用するソフト」であると確信している。
私も「ゼビウス」の発売はファミコンの転換期であると考えている。このソフトがゼビウス前に発売されたのか、ゼビウス後に発売されたのか、いわば基準点のようなものだと思う。
ごちゃごちゃ言ってじれったい、と思う方もいるので、単刀直入に言おう。
「ゼビウス」前のファミコンソフトはほぼク〇ゲーである。
ク〇ゲーというと語弊があるな。レベルがめちゃくちゃ低かったのだ。「ゼビウス」がピストルだとすると、「ドンキーコング」や「パックマン」は石でできたハンマーみたいなものだ。さすがに次元が違うレベルの低さだし、「ゼビウス」が出てくるまではファミコンは古いアーケードゲームか「五目並べ」、「オセロ」といったショボイゲームしか無かったのだ。
従って、今でも語り継がれるファミコンの面白いゲームは基本「ゼビウス」後に発売されたものである。
今回はそんな「ゼビウス」前のつまらないゲーム「デビルワールド」を紹介する。
【ゲーム概要】
ファミリーコンピュータ用ソフト「デビルワールド」。1984年の10月に発売された。開発・発売は任天堂でプロデューサーはマリオで有名な宮本茂氏。
そう聞くと大層なものなのかとイメージされると思うが、内容は「フィールド上にあるアイテムを全て回収する」というのが主である。
本ゲームは3つのステージで1つのラウンドを構成している。
そのステージというのは、
「フィールド上にあるボワボワ(白ドット)を全て回収する」
「フィールドの端にある4冊のバイブルを中心にある真ん中のデビルホールの4つのくぼみに入れる」
「?箱を時間内に回収するボーナス面」
以上である。
簡単に言えば「パックマン」みたいなゲームである。そこに任天堂が少しアレンジを施した作品となっている。
とは言え、1984年の時点で「パックマン」は古臭い作品だったと思う。1980年に爆発的に流行ったが、1982年頃には廃れていたらしい。なので、多少変わっているとはいえ、1984年にもなって「パックマン」をやりたいと思った人はどのぐらいいるのだろうか。
さらに詳しくゲームの内容を説明する。
プレイヤーは「タマゴン」という恐竜を操作して「メダマン」や「ボンボン」といった敵キャラを避けながら、アイテムの回収を目指す。
このゲームの最大の特徴は「スクロール」だろう。この要素が「パックマン」とは違うゲーム性をもたらしている。
画面の上部にはその名の通り「デビル」が存在する。このキャラはフィールドの外部におり、プレイヤーは干渉することができない。コイツは、常に上下左右を指さしており、上を指すとフィールドが上方向にスクロールし、右を指すと右にスクロールする。つまり、常にフィールドが変化するというスパイスを効かせているのだ。
この説明を聴いて、「すっげぇぇ!パックマンと大違いじゃんか!おっもしろそうっ!」と感じる人はいない。断言してもいい。
そう、ゲームの特徴であるこの「スクロール」だがむちゃくちゃいらない要素である。まず、パターンが組めないから安定したクリアはできない。(パターンに頼った攻略法は攻略とは言えないと言う方もいると思うが)さらに、取ろうとしたアイテムがスクロールによって消えるというストレスを溜めるだけの要素となっている。
1番ムカつくのは「圧死」という死に方が生まれることだ。例えば、自分が左の端っこにいて、デビルが左を指したら、自分が今いる通路の壁が迫ってくる。すると、プレイヤーは身動きが取れずに挟まれて死亡。1番多い死因は敵の攻撃にやられる、とかではなくこれ。
後述するが、プレイヤーのタマゴンはパックマンと違って遠距離攻撃ができるので、攻撃面はそこそこ優秀である。なのに、このスクロールのせいでパックマンには無かった「スクロールを常に考えて行動しなければならない」という必要のないゲーム性が生まれたのだ。クソである。
プレイヤーの「タマゴン」であるが、殆どパックマンと同じと考えていい。上下左右に動くことが出来る。パックマンと違うのは、パワークッキーの代わりに十字架を持つことで攻撃ができるようになること。そもそもの話なんだが、なぜ恐竜vs悪魔なのだろうか。世界観がよく分からない。十字架を持つことでタマゴンは以下のことが出来る。
・ボワボワ(白ドット)が食べられるようになる。
・火を吐いて攻撃できる。
そう、パックマンと違って十字架(パワークッキー)を持たないと、そもそもエサを食うことすら出来ない。どんな恐竜なんだよ。といっても十字架はそこそこ多く配置されていて、何回取っても消えない。うーん、これでバランスが調整されているとは思えないが。
敵はメダマン・ボンボン・子デビルの3種類。子デビルは倒すことができない特別扱い(十字架持ってるのに・・・)だが、あとの二人は違いは特に感じなかった。「パックマン」のゴーストと違って頭はあまり良くないと思う。
全部で9ラウンド。9ラウンドが終わったら1周する(ラウンド10と出るので、一応数は増えていく)。エンディングが無いのは寂しいが、初期のアーケードゲーム(これはアーケードゲームでは無い)は大体皆そうだからしょうがない。
難易度だが、パックマンとほぼ同じぐらいだろう。アーケードゲームでも無いのに意地でもミスさせてやろうという気概が感じられる。初見ならせいぜい5分くらいでゲームオーバーになる。攻略としては圧死しないようにエサを取ったらすぐに画面の中央ら辺に戻ることを心掛けよう。
音楽はほぼ無いと言っていい。スタート画面で少し流れる程度。チャイコフスキーの「くるみ割り人形」が流れるが、分かりにくいし、短い。ゲーム中はボーナスステージで流れるがその前のステージでは流れない。
グラフィックやキャラクターデザインは、まぁ悪くない。パッケージは何か古い絵本みたいで良さげだし、実際のグラフィックも任天堂らしさがほんのり感じられる。
2P対戦もできる。やったことないが助け合ったり、殺しあったりできるらしい。おそらく2人でやった方が盛り上がりそうなゲームではある。
ゲームの内容はこんな感じだろうか。
【感想】
私はこのゲームが好きでは無い。単純に面白くないのもあるが、このゲームが存在する意味がよく分からないのだ。同じく1984年に発売された「クルクルランド」というソフトがある。
本作もパックマンと同じようなドットイートゲームにアレンジを加えた作品なのだが、こちらはハッキリとパックマンとは違うと言える。エサとなる金塊が目に見えない、方向転換する時にフィールドのターンポストを掴むという独特の操作を用いる。敵を直接倒すことが出来ない等、パックマンの雰囲気を残しつつも大胆なアレンジが特徴のゲームである。
私はこちらのゲームはそこそこ面白いと思う。他のドットイートゲームとの差別化は充分だし、ジャンルの進化が垣間見えるからだ。デビルワールドはそれが感じられなかった。やっていることは古いパックマンと一緒だし、アレンジ部分は最悪。クルクルランドの方が後に発売されることになるが、本作は果たして必要だったソフトなのか?クルクルランドだけで良かったのではないか?私はこのゲームの存在価値が分からない。
【まとめ】
散々言ったが、実はこのゲーム、友人が私にプレゼントしてくれたものだ。「なんか面白そうだったから」と言っていたが、舐めすぎである。おそらく、「魔界村」が好きだと言ったから似たような絵柄のデビルワールドを選んでくれたのだろうが、肝心のゲーム内容は見てくれなかったようだ。プレゼント自体はとても嬉しかったが、本作は私に嫌な濁りを残して記憶の隅に溶けていくだろう。
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