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月と六文銭・第十六章(26)

 留学生・劉少藩リウションファン=リュウは彼女の"パパ"となった武田と一緒にエレベーターで彼が予約してくれた部屋へと向かった。
 初めて新宿に行った中年男性とは未遂に終わった。事前の約束を守ってくれず、リュウが軽くパニックを起こしたからだ。
 しかし、今夜はこの武田と"大人の関係"になる。男性との行為は半年ぶりだが、単なる行為ではなく、本当の意味で大人になれたら嬉しい。いや、本当の意味で自分は大人の女になれたら嬉しい。

~充満激情~

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 武田の隣を離れ、リュウはエレベーターを出て、振り向いた。

「5206、右だね」

 リュウは武田が指差した方向、自分から見て左を向き、武田の手を引きながら廊下を進み始めた。

「このホテルは交互に部屋番号が付いているので、通路の左が5201、右が5202、左が5203となっています。5206は一番奥の右側です」
「そういう仕組みなんですね。
 初めて知りました」
「ホテルによっては廊下の片側から始まって、ずっと廊下の奥まで続き、端で折り返している場合もあります」
「あまり考えたことがなかったけど、そういうところ、あったと思います」
「そして、私たちの部屋は角部屋」
「カドベヤ?」
「角っこの部屋ということです。
 その方が景色が良いので」

 武田はリュウを驚かそうと思って、自分たちが食事をしたテーブルの真上の部屋を予約してあった。もちろんスケベな考えもあって、後ろから交わった時にリュウの目に映るのが、食事をした時と同じ景色になるようにして、食欲と性欲の両方からリュウに今日のことを印象付けようと思っていたのだ。
 部屋に入ると同時にリュウは窓辺に駆け寄った。

「わぁ、素敵!
 さっきと同じ景色ですね!」

 リュウは少し潤んだ瞳でゆっくりと武田の方に戻りながら椅子の上に小さなバッグを置いた。手に持った帽子を見つめ、部屋の入り口にあったコート掛けに掛けてくればよかったと思った。手に持ったまま部屋の奥まで来てしまったのだ。

「帽子、こちらに」
「あ、ありがとうございます」

 リュウは帽子を胸の高さに持ち上げ、武田が手を伸ばしてそれを受け取った。エントランスへと消えた武田が次に登場した時は手に革製のスリッパを1足持っていた。

「はい、靴を履き替えましょう」
「あ、はい、すみません、私、そのまま入ってきてしまいました」
「ホテルの部屋的には問題ないんですが、せっかくなのでリラックスしましょう」

 リュウが武田の足元を見ると既にスリッパに履き替えていた。自分は急いでパンプスを脱ぎ、スリッパを履いた。

「こちらももらって行きますね」

 そう言って武田はリュウのパンプスを拾い上げ、再びエントランスに向かった。

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 以前、同僚工作員の田口たぐち静香しずかに注意されたように、今回はうなじをガラ空きにしないよう、リュウの顔を見つめたまま屈んでパンプスを持ち上げた。
 しかし、角度的にリュウのスカートの中を覗いているようにも見えて、武田にとってはバツが悪かった。

「あ、私、相談して決めた下着を履いています」
「いや、ごめんなさい、覗いているわけではなかったのです。
 リュウさんのかわいらしい顔を見ていただけで」
「ごめんなさい、私、武田さんが確認したいのかと思ってしまいました」
「いやぁ、角度が悪かったですね。
 ハハハ」

 武田は笑って誤魔化した。まさか「君に殺されるといけないから、警戒して目を離さなかった」などとは勿論言えない。
 今度は不自然にならないよう、彼女の方を向いてしゃべりながらエントランスまでパンプスを持って行った。

 リュウは武田を迎える形でエントランスから戻ってくる彼に向かって歩き出し、ちょうど戻ってきたところで彼に抱き着き、キスをした。まずは軽く唇を重ねたが、少しずつ口を開け、舌を突き出して武田の唇を割り、舌を侵入させて彼の舌や歯や歯茎を舐めた。舌同士を絡め、武田が舌を出したら、それを吸うようにして、自分の口の中へと導いた。
 武田が手を伸ばして胸を触ろうとしたら、僅かだが、リュウが体を捻って避けるような仕草をした。手で払うとか、腕でガードするような明からさまな行動ではないが、まだ準備ができていない証拠だろうと思って、武田は手を下ろして、腰を抱くことにした。
 情熱的なキスは続いていたし、リュウも積極的に武田を抱き込む感じで腕に力を入れた。若干息が上がっている感じがした。しばらく激しいキスが続き、ようやく口を離したところで、リュウの目の端から涙が流れた。

「気持ち良いキスですね。
 大切にされていると感じます」

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 武田は腰を抱いていた手を背中に沿ってあげて、ワンピースのファスナーを捉えた。首のところにある留めを外さずに、ファスナーだけスゥ―っと下した。思ったよりも長いファスナーで、腰のくびれを過ぎて、尻の上まで続いていた。

「脱がしますよ」

 武田にそう言われてリュウはコクンと頷き、彼の背中で絡めていた腕を自然に下ろした。
 武田は首の留めをプチンと外して、その両側を持ちながら背中側を広げ、襟の部分が肩を通り過ぎたところで手を放した。軽い素材でできているのか、重力に負けてストンというよりもフワリとワンピースが下がっていった。
 黄色のブラはリュウの胸によくフィットしていて、胸がはみ出るほどタイトでもなければ、胸からブラが浮いて隙間ができてしまうほど緩くもなかった。
 リュウは少し俯いた。

「恥ずかしいです。
 また胸が小さくなってしまいました」

 先日会った時、リュウは生理中だったため、胸が張っていて、若干大きくなっていた。普段は形成されない谷間ができていたのを武田に見せたことを言っていたのだ。

「きれいですよ、よく似合っています」
「ありがとうございます」

 武田は半歩ほど下がってリュウの全身を上から下まで眺めた。
 小ぶりだが形の良い胸、スッとへらで削ったような曲線の腹、黄色のショーツに包まれた適度に盛り上がった恥丘、すらっと伸びた両脚。スレンダー美人であることは間違いなかった。変に腹筋が割れているわけでも、上腕に力こぶがあるわけでもなく、自然体の美しい体をしていた。
 武田が眺めている時間を長く感じたのか、リュウがまた恥ずかしいと発言した。

「私だけ、恥ずかしいです」

 リュウは左腕で胸を覆い、右手で股間を隠した。
 強引にではなかったが、武田はリュウの左腕を下ろさせた。リュウは今度は両手で股間を隠した。

「ブラジャーを取ってください」
「自分で、ですか?」

 武田は頷き、リュウが行動するのを待った。

 長い数秒が過ぎた。

 意を決してリュウは背中に手を回し、パチンと音をさせながら留めを外し、慎重にブラジャーを取った。床に落とさず、左手首に引っ掛ける感じにしたまま、今度は右腕で胸を隠した。
 武田はリュウの右腕を外し、左手で彼女の右乳房を持ち、乳首に唇を寄せた。軽く息を吹きかけただけでリュウはピクンと体を震わせた。次に唇で乳首を挟み、舌の先で乳首の先を横に舐めた。

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「はぁん」

 リュウは感じ始めていたが、どう声を出していいのか、分からないという感じだった。あまりにもはっきりと声を出したら恥ずかしいし、あまり声を出すのを我慢したら武田の爱抚アイフ=愛撫を拒否していると受け取られてしまうかも、と悩んだのだ。
 この武田という男、決して強く吸うことなく、乳首を唇で軽く挟んだり、舌の先で撫でるようにした。気持ちいい。頭の一部が痺れるような感覚だ。
 もう一方の手はどこ?あ、手が膝を割り、内腿を撫で上げてきた。うわ、ゾクゾクする!うぅ、ゾクゾクが背中を這いあがってきた!全身に鳥肌が立つ!武田さんは次に私のそこを触るのね。そう、私の阴道インドウ=膣の入り口と阴核インヘ=陰核を。気持ちいい。上手だわ。李博雅リ・ハクガは本当に下手で乱暴だったのね。あぁ、気持ちいいわ。本当に頭の中が痺れる。私はこのまま、イっちゃうかも?!

 武田はショーツの上からリュウの下の唇の両側をなぞる感じで形を確かめた。敏感な真珠の位置はこの辺りだろうと予測して、中指で円を描くように撫でた。時計回りに3、4周、反時計回りに3、4周、縦に7、8往復、そして、細かく横に7、8回触った。
 それを繰り返そうと2巡目に入ったところで、リュウが手を添えてきて首を横に振り、弱々しく武田の耳に囁いた。

「ダメ」

 武田はリュウにキスをして、手を動かし続けた。リュウは手で武田の手の動きを制した。

「ダメです、私、イっちゃいます」
「イっていいですよ、夜は長いので、何度もイってください」

 武田はショーツのクロッチ部の上から的確にリュウの敏感な真珠に刺激を与え続けた。

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