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月と六文銭・第十六章(3)

 武田は台湾人留学生リュウショウハンの支援要請に応じてみようと考えていた。
 中国人工作員グループに狙われている今、思慮の足りない行動であり、厳しく批判される行動なのは分かっていたものの、好奇心に勝てず、自分なりにリスクを計算した上での行動だと思うことにしていた。

~充満激情~


 武田が引き続きリュウショウハンに興味を持ったのは、そのスレンダーボディはもちろんのこと、面白いバックグラウンドを有していたからだ。

 彼女は台湾からの留学生だったが、ただ日本の大学に憧れて留学してきたとか、海外の大学を卒業して故国での就職を有利にするための学歴ロンダリングのための留学をしていたわけではないと思われたからだ。
 リュウは現地で最高峰の台北大学に入学し、そこから日本の叡智大学に留学していたのだ。台北大学の母体は日本が作った帝国大学で東京大学を含む旧帝大といった場合、戦前までは台北大学も含まれていた。
 今は外国になってしまったので、当然日本の旧帝大ではないが、現地では帝国大学の伝統を引き継いでいて、通称はタイダイ=台大だが、今でもテイダイ=帝大と呼ぶ人が多かった。リュウの親戚も彼女がテイダイに受かったと聞いて大喜びだったし、そんな優秀な娘を預かっているのがステータスなのか、大学の近くの親類はリュウを自宅に下宿させた。

 日本でいえば東大にまで行ったのに、肉体関係をベースとした資金援助を受けないと学業を続けられないというのは屈辱以外の何物でもないだろう。
 今はパパ活をしている東大生もいるため、最高学府の学生としてのメンタリティーと経済的困窮は無関係と言えるが…。
 また、アジア各国から見た場合、日本、特に東京、は物価の高い土地で、幾ら学費そのものが英米に比べて低いとは言え、生活費は決して低いわけではなく、住居費が比較的高いことから、生活苦がすぐに訪れることが予想できる。

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 アルバイトの定番であるコンビニや飲食店で働いても、時間掛ける最低賃金しか得られない状況では、実家から多大な援助を受けている学生ならともかく、普通の家庭の子では経済的困窮がすぐに学業の制約に結びついてしまうだろう。
 昭和や平成の初めならば、風俗という方法が存在し、同じ時間でもそれを効率よく金銭に交換することが可能だった。
 ところがバブルがはじけ、女性の流入が続いたことから収入の低下が起こった。短時間でたくさん稼ぐのが難しくなったため、風俗を選ぶことが必ずしも有効な回答とはならなくなっていた。
 また、風俗であれば、ほとんどの場合、相手を選ぶことができない仕組みとなっていて、その点での苦労が精神面に影響していたとも言えた。
 接客するのが無理な客を拒むことはもちろんできる。しかし、それを続けると客が減り、やがては途絶えてしまい、収入が下がる結果となってしまう。
 逆に無理な接客を続けたら精神的に苦しくなって、結局は続かない、或いは続けられない状況に陥ってしまう。
 ところが、パパ活となると、女性側にも選ぶ権利があり、合わない人や付き合いたくない人とは継続して会わなくても済む。男性が提供できる金銭と自分が提供する時間などの価値が合致すると感じたら会い続ける、合致しないと感じたら継続して会わないでよい。
 リュウは、友人のフェイからそういった点を聞いていたが、マッチングアプリを使って自分に合った男性を見つける自信がなかったことや何度も顔合わせという名の面接を繰り返さないといけないこと、希望の支援が受けられる確証がないこと、たとえ見つかった場合でもいつ支援が終了してしまうか分からないなど、不安定要素が多すぎて、自分には合わないと思ったのだ。

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 そこで、リュウは羽田空港で偶然会った優しそうなサラリーマンの武田はどうだろうかと考えたわけだ。パパ活に対応してくれるのかは分からないが、無理のない範囲の金額をお願いしたら大丈夫ではないかという楽観的な見方をしていた。
 もちろん、ただ「金をくれ」というほど図々しくはなく、自分としては若さと時間という魅力的な商品を提供するつもりだった。一度や二度なら高額な"お小遣い"や服、宝飾類をねだることも可能だろうが、継続的に会い続けて、留学期間を乗り切りたかった。生活費や学費など、アルバイトだけではカバーしきれない出費はいくらでもあった。

***一昨日***

 武田はリュウから自室で撮ったと思われる画像が3枚をライン経由で受取っていた。

(1枚目)
 ピンクの総レースのテディと揃いのショーツを着けただけの姿だった。カメラかケイタイの角度を調整して巧妙に顔が画面に入らないようにしていたが、レース越しに乳首が透けて見えていたし、腕を挙げていたので腋毛も写っていた。

劉少藩は腋毛を剃らないらしい


 下半身はピンクのレース越しに陰毛も陰唇も確認できるもので、まずは肉体関係を結んで武田が断れない状況に持ち込みたい意図が感じられた。
 元々肉体関係を前提とした支援を申し出ていた以上、自分の体はこんな感じだと示して、武田に引き続き興味を持ってほしいのだろう。
 武田が胸の大きな女性が好みというのは前回の食事で感じ取っていたので、寄せて上げても限界がある分、スケスケのランジェリーと共にきれいなピンクの乳首を見せようと考えた結果の画像だった。

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 リュウは武田と話した印象から、彼は大きな胸が好きなのは確かだと感じていた。ワンピースの胸元を広げてみても、明らかに自分のCカップの胸への興味は薄かった。
 "大人の関係"を了承したのだから、当然自分とのセックスに興味があるはずだが、それに関する会話をした覚えがない。
 ボーイフレンドがいたことは、別れたとの発言から理解してくれたと思うが、自分はそれほど乱れた生活をしていたわけではないことも武田に伝えたかったのだろう。武田くらいの年齢層の日本人男性に根強くある"処女崇拝"などについて聞いていたから、いかに自分が経験の少ない女性だと示したかったみたいだ。
 胸は小ぶりだがお椀型のキレイな形をしていたし、乳首もレースと同じくらいのピンクだった。リュウの賢そうな顔つきと自信のある目付きと相まって、男性だったら征服欲を掻き立てられるだろうと武田も思った。
 ついでにいうと背後の姿見に映った背中側は開いていて、紐で結ぶようになっていたため、きれいで真っ白な背中も写真に写り込んでいた。

(2枚目)
 黒の総レースのテディを着けていて、こちらも顔が写らないようにしていたが、ポニーテールにまとめた髪の生え際にあるホクロが本人だと分かる印だった。
 黒のレースの間から見えるリュウのピンクの乳首が逆に目立っていた。
 下半身は水着だと思われるものを着けていて、透けてもなく、恥丘の膨らみは確認できるものの、特段興味を引くものではなかった。

下着の下に水着?
劉少藩はこんな写真を武田に送ってきた

 それよりも武田はリュウの背後に写っている部屋の中の様子、特に本棚に並んでいるテキストや参考書類に注目した。雑然としているものの、学科や取り組んでいるテーマに沿った書籍が並んでいて、きちんと勉強していると感じられたから、好感を持った。

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