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月と六文銭・第十四章(15)

 田口たぐち静香しずかの話は続いていた。厚労省での新薬承認を巡る不思議な事件の話に武田は引き込まれ、その先の展開に興味を示していた。
 パイザーの交渉役2人は東京の夜の生活を満喫していたが、スペシャリスト・ウェインスタインは女性との関係には慎重だったようだ。
 厚労省の服部はっとり昌子まさこ事務官はウェインスタインから触れられてもいないのに、体が反応したことを看護師・高島たかしまみやこに相談していた。

~ファラデーの揺り籠~(15)

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 高島が服部から渡されたショーツを確かめると、確かに前戯の際に「濡れてきた」と言われる時の分泌物がクロッチの内側についていた。それも外側まで分かるほど多く、女性ならば十分恥ずかしいと思う量だった。
「一応、確認ですが、出したコーヒーから目は離していないですよね?」
「はい、絶対、何か入れることは不可能です」
「目も合わせなかったのですよね?」
「はい、顔も見ず、肩とか腹とか、視線をなるべく下にしたままか、オイダンさんを見ていました」
「ウェインスタインは何をしていましたか、その時?」
「左手の指をこすり合わせていました」
 ウェインスタインが何かする時の行動の一つが、左手の指をこすり合わせることだった。それで何らかのエネルギーをターゲットに送り込んでいると考えられたが、薬でもないし、針でもない。本当に考えただけで女性をイかせることなど可能なのだろうか?
 その日、服部は血液検査と、念の為CTスキャンを受けた。その日のうちに出た速報では「異常なし」だった。薬物ではないことは確かだった。
 そうなると、ウェインスタインが自分に意識を集中しただけでイかせたのかと思うと、もう防ぎようがなく、服部にしてみたら気持ちが悪いとしか言いようがなかった。
「ちょっと気になるので、次回は私が会ってみましょうか?紹介してもらう必要はありません。ちょっと様子を見るだけです」
「部外者に会議予定を教えてはいけないことはご存知だと思いますが?」
「もちろん、偶然通りがかったようにして、顔を見るだけです。場合によっては、ロビーでカバンに何か入れたり出したりしていないか見てみます」
「分かりました。くれぐれも内緒でお願いします」
「はい。私が通りがかっても誰も怪しまないと思いますよ」

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