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【くつざわさんと令和のキャリアを考える】〜ロールモデル不在の状況を、どう切り開いていくか〜マンガボックス編集長・安江亮太のスランプさんいらっしゃい

株式会社ディー・エヌ・エーが運営するマンガ雑誌アプリ「マンガボックス」。
有名作家の人気作から新進気鋭の話題作まで、枠にとらわれない幅広いラインナップを擁し、オリジナル作品の『ホリデイラブ』はTVドラマ化、『恋と嘘』はアニメ・映画化するなど数々のヒットコンテンツを生み出してきました。
そんなマンガボックスの編集長を務めるのは安江亮太さん。今回は女子大生のモノマネ動画で令和初バズと言われ、以降もたびたびSNSで話題を呼んでいるくつざわさんをお呼びし、「炎上を経験した心境」や「炎上から学んだこと」などを話していきます。

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安江亮太
やすえ・りょうた
DeNA IPプラットフォーム事業部長 / マンガボックス編集長
2011年DeNAに新卒入社。入社1年目の冬に韓国でのマーケティング組織の立ち上げを手がける。2年目に米国でのマーケティング業務。その後全社戦略の立案などの仕事を経て、現在はおもにマンガボックス、エブリスタの二事業を管掌する。DeNA次世代経営層ネクストボード第一期の1人。
Twitter: https://twitter.com/raytrb

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くつざわ
1999年生まれ。千葉県出身。多分こういう人はこんなことやるんだろうなぁという想像モノマネをTwitterに投稿したところRT3万5000回以上。3日間で5万人フォロワーを増やしたが、その後たびたび炎上してしまう。現在はプランナー・マーケターとして、企業のコンテンツを支える“裏方”としても活動している。Twitterアカウント:@kutsuzawa_desu

フォロワーの数だけ求められる像が出てくると、そこから外れたときに批判の対象に

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(都内某所)

安江:フゥ、フゥ、フゥ。

くつざわ:あの〜、すいません。高山社長から今日ここに来ればなんかいいことあるって言われたんですけど、合ってますかね……?

安江:あ、くつざわさん、こんにちは。マンガボックス編集長の安江と申します。はい、合ってます。あと5回ベンチプレスするので、お待ちください。

くつざわ:え、あ、はい……。

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▲5回ベンチプレスをする安江さん

安江:フゥ……。お待たせしました。今日はよろしくお願いします!

くつざわ:あ、よろしくお願いします。

安江:僕は普段DeNAの「マンガボックス」というマンガアプリの編集長をしながら、コーチングという手法を使って、社内メンバーや新卒面接の場面で、自己分析の手助けをしています。壁打ち相手になって、「俺やりたいことってこれだったんだ」とか「私が生きている意味ってこういうことかも」と気づいてもらうのが目的なんですが、今日はくつざわさんといろいろお話させていただいて、何か役立つものがあればいいなと思っています。

くつざわ:あ、はい。この半年間いろいろあったので、嬉しいです。でもなんでジムなんですか?

安江:僕フィジークの大会に出ようと思って体を鍛えているのですが、体を動かすと思考が整理されていいんですよ。くつざわもやってみてください。

くつざわ:ええ、まじですか〜〜。

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▲まずラットプルダウンで広背筋・上腕二頭筋などを鍛えます

安江:それで、僕のいるDeNAでは新卒採用面接でよく聞くことがあるんですが、今人生楽しいですか?

くつざわ:人生ですか? うーん、難しいです。半々ぐらいですかね。楽しくやりたいのに、楽しくない要因が生まれてしまうことが多くて。

安江:やっぱり炎上とかアンチですかね?

くつざわ:そうですね。SNSの性というか、自分をみてくれる人が多い分、その人にとっての「くつざわはこういう人間」という像がフォロワーの数だけあるわけじゃないですか。そこから少しでも外れるとマイナスイメージの対象になってしまって。それをぶつけられることが多いので、正直しんどいですね。

安江:なるほど。くつざわさんのnoteを拝見していると、すごくツラそうですよね。それでも進んでいくという姿勢があって、いい文章だなと思っているのですが。

くつざわ:ありがとうございます。単純にいろんなことを吸収して、面白いことやっていきたいなと思っているんですけど、それをよく思わない画面の向こうの人たちの反応を気にしてしまって、漠然とした不安を感じています。私も私で、「自分にしかできないことをやっていきたい」となんとなくビジョンはあるのですが、まだ形にするほどしっかりしたものではなくて、結局どうなるのかが捉えられてないんですよ。

傷つけまいとして怒っているのに、また別の誰かが傷ついてしまう

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▲バーベルスクワットで大腿四頭筋を広く刺激していきましょう

安江:そうですよね。というか、20歳で自分のビジョンが見えている人ってなかなかいないですよ。さっき言っていた、もう半分の楽しい部分でいうと、今どういうことが楽しいですか?

くつざわ:大人に近づけた実感があるときですかね。少しずつお仕事をもらえるようになったり、Twitterをしていなかったら出会えなかった人と出会えるときだったり、この半年で確実に成長できている感覚があって、それが楽しいですね。辛いことも楽しいことも、やっぱりSNSをやっているからなんです。

安江:表裏一体ですね。大人になりたいという成長欲求があって、それが満たされたというときに楽しいと思うわけじゃないですか。でも炎上やアンチがいる中、そこまでして大人になりたいのはなぜでしょうか?

くつざわ:多分それは家族の影響だと思います。私、家族だけじゃなく、親戚含めて、一番下なんですよ。親戚で集まると、「あなたは何もできないから」という前提で、20歳になった今でもみんな子ども扱いをするんですよね。だから母親に「今度イベントで登壇するんだ」と仕事の成果を話していて、しかもそれを喜んでくれるんです。家族に対して「私、子どもじゃないよ。大人の一員としてこんなことしているんだよ」と言いたいから、成長したいんだと思います。

安江:基本軸が家族なのは、僕と近いかもしれません。僕も末っ子で、岐阜県の人口1000人いないような田舎の村で育ったんです。みんな優しくて、褒められることも多かったんですが、「もっと大きな世界を見たい」「田舎だけで人生を終わらせたくない」という気持ちで、東京に出てきました。だから、自分の活動をしていく上で、常に家族が頭の中にあります。

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▲数ある胸のトレーニングの中でも、より大胸筋に刺激を与えることができるケーブルクロスオーバー

くつざわ:よくわかります! なので、今感じているのが、自分は結構保身的な人間なんだなということ。家族を喜ばせたいので、なるべく炎上せずに安全地帯にいたいというか。

安江:あれだけ炎上したのに、ですか?

くつざわ:あれだけ炎上したから、です。炎上から気づけたことがたくさんあるんですよね。よく「議論があっての話題性」と考える人もいると思うんですが、私はあくまでプラス志向のままでいたいんですよ。プラスだったらマイナスのものが寄ってこないのかなと思っていて、ひたすらプラスなものを、まるで幸せかのように発信していきたいんですよ。もう、戦うのがしんどいです。

安江:戦わなくていいのに(笑)。

くつざわ:わかってるんですけど、思考に体が追いつかないというか。

安江:特にどういうときに戦ってしまうんですか?

くつざわ:以前とあるYouTuberの件で炎上したとき、「いや、くつざわがここまで燃えるのおかしくない?」と、私のことを擁護してくれる人がいたんです。一緒に動画を作ったりする仲のいい方だったのですが、そしたらその人まで誹謗中傷されてしまって。私のせいで巻き込まれたのが、本当にツラかった。みんな誰かを傷つけまい怒っているのはわかるんですが、また別の誰かが傷ついてしまうのが悲しくて。私はそこに無自覚な人とまた戦ってしまって、余計火がついちゃって……。

バズったときより、炎上したあとの方が忙しくなった

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安江:なるほど……。もしかしたら、くつざわさんは自分という定義が広いのかもしれませんね。僕も近い感覚で、例えば、家族がある意味自分なんです。だから、家族が否定されたらかなり凹むし、自分の家族が誰かに誹謗中傷されたら、そのときは相手に向けてファイティングポーズをとると思います。それが無意識のうちに延長していて、今では事業もある種の家族であり、自分の一部なんです。だからこそ絶対に事業を成功させたい。

くつざわ:そう! そうなんです。すごくわかります。

安江:ただ、あれだけ拡散されてしまうと、問題に対して議論したい人やYouTuberに怒っている人は、まだいいのですが、とりあえず怒りたい人が出てきてしまうじゃないですか。そこはもう目をつむるしかないと思うんですよ。

くつざわ:そうですね……。何か炎上したときに、本当にその事象に対して怒っている人は少ないのかもしれませんね。だからアンチに対して最初は「なにこの!」と瞬発的に怒っていたんですけど、最近は粘着している人には、本当にかわいそうだなと思うようになりました。もう社会がツラいのがいけないのかなと。炎上する中で私のマインドも変化してきて、最近はエゴサーチするのをやめました。

安江:いいと思います。でも、多くの人はその瞬間の感情がなぜ生まれたのかわからないものなのに、そこまで自己分析できてるのすごいですよ。ちゃんと家族のことまで振り返って説明できる。もはや僕が何かアドバイスすることはないです(笑)。

くつざわ:いやいや!(笑) なんか、ありがとうございます。

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安江:今後のことも整理していきましょうか。まだ形にするほどしっかりしたものではないけど、なんとなくのビジョンがあるんですよね。どんなビジョンなんでしょうか?

くつざわ:そうですね、SNSでは“くつざわ”としての動画やテキストも見せつつも、裏方に回って、何か課題を救うようなアイディアを形にしたいと思っているんですね。やっぱり自分を起点にアイディアや戦略を考えるのが楽しいなと。常にそういう楽しいことを常にして、遊ぶように仕事をしたいと思っています。

安江:ワークアズライフといわれる考え方ですよね。今はどのような仕事をしているんですか?

くつざわ:企業でプランナーとして働きつつ、単発で個人にコンサルの依頼が来るので、プロモーションや戦略を考えています。アウトプットはテキストもでもいいですし、動画の撮影や編集もできます。今マーケティングを学んでいるので、出口も考えていきたい。ただ、表と裏を行き来しながら、マルチに働いていくというロールモデルがなかなかいなくて。

安江:いやーすごいですね。なんでもできるじゃないですか! そうですね、多分まだ誰も作っていないキャリアだし、むしろくつざわさんみたいになりたいという人がいて、そのキャリアを作っていく人だと思うんですよね。だから今後も悩むことが多いと思いますが、手を足を使って、もがいていくしかないと思います。

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くつざわ:早めに落ち着きたいんですけどね。そもそもこの方向でいいのかもわからないですし(笑)。

安江:「私また方向性変わってきてる」というのもいいじゃないですか(笑)。僕もキャリア開始当初はマンガの編集長をやるなんて思ってなかったですもん。入社当初は韓国やアメリカを回っていて、グローバルに働くサラリーマンになるんだと思っていたら、いつのまにかマーケターじゃなくてプロモーションになって、今ではなぜかマンガに赤入れをやってるので、いろいろやれればいいと思うんですよね。5年単位でやるのも意外と、人生飽きずにやる方法かなと。

くつざわ:確かに。私もたったの6ヶ月間なのに、ガラッと環境が変わって、バズも炎上も経験して。しかも仕事の形も変わっていて、バズった最初はテレビとかの仕事で忙しかったのが、もういつのまにか裏の仕事をしていて、バズったときより、炎上したあとの方が忙しいんです。何があるか本当にわからないですね(笑)。

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安江:バズったときより、忙しいんですか。コアな方がついてきたということなのかもしれませんね。

くつざわ:安江さん、今日はありがとうございました。ところで、なんでずっとジムで話しているんですか?

安江:いろいろ嫌なことはあるかもしれないけど、体が強くなれば喧嘩には負けないし、精神も健全になります。だから筋トレしましょう。マッチョは誰よりも強いからこそ、みんなに優しいものです。さ、次はベンチプレスです。

くつざわ:ええーーーまだやるんですか……。

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撮影協力:BEZEL東京渋谷青山通り店
https://www.kaatsu-studio.net/studio/studio-tokyo-shibuya/


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ライター・撮影:高山諒
企画:おくりバント

取材日時:2019年11月28日

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