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自分の好きだった作品を振り返る(その11)~育児漫画のなかで印象深い作品を(中)WEB連載とイラストレーター

続きです。

前回はブログを中心に書きましたので、今回はWEB連載から。

WEBサイトでの連載

今だと、育児漫画記事と言えば「コノビー」や「ゼクシィBabyみんなの体験記」「ウーマンexite」等々、育児情報メディアで、ブロガーを中心としたSNS発の作家さんが連載するのが中心ですが、2014年頃までは出版社運営のサイトで、プロ漫画家・イラストレーターが描くことが多かった。

単行本発売に合わせて、試し読み用の特設サイトが作られることもあったし、出版社のサイトでコミックエッセイ(育児漫画)を連載していることもあった。

特に印象深いのが「カラフル」というサイトでの連載でした。『ごんたイズム』と『ユンタのゆっくり成長記』という2作が長期連載されていました。

『ごんたイズム』

イラストレーター・カツヤマケイコさんが描いた育児漫画です。あまり話題に上りませんが、隠れた名作だと思っています。私が1番よく読んだ育児漫画はこれです。読み返した回数が1番多いんですよ。

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当初は、WEBで連載を全て読んでいたこともあり、単行本まで買ってなかったんですが、3巻が出た時、電子書籍版がセールで半額になったので、1巻から揃えました。育児漫画と電子書籍の相性の良さを痛感した作品でもあります。

特に2人目を妊娠、出産してからは何度も読み返しました。このマンガの良いところは「育児のゴチャゴチャ感が描かれているところ」です。1巻は1人目の子供だけですが、2巻で2人に、3巻には3人に増えます。子供が増えるにつれて、ゴチャゴチャ感は増します。

「素敵なお母さん」ではなく、イライラしたり、悩んだり、子どもをかわいがったりする、ある意味でふつーの、ワンオペしてるお母さんの姿がとても良かった。

『ユンタのゆっくり成長記』

漫画家・たちばなかおるさんが、ダウン症の長男・ユンタくんの様子を描いた漫画です。漫画のテンポがよく面白い。良い意味で「ダウン症児」の特別感がない、ふつーの育児漫画です。

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この漫画を読んで、「ダウン症の子を描いた漫画を、ダウン症の子を持たない親が読んでも良いじゃないか」と思うようになりました。「あ、壁を作ってるのは私の方か」と気付いたといいますか…。

「ユンタのゆっくり成長記」は2冊発行後、婦人向け漫画誌で本当に「3兄弟の様子を描く育児漫画」として連載され、単行本が出ました。漫画自体の出来がよく、面白いんですが、名実ともに”ふつーの育児漫画”となったことに驚かされました。

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「育児漫画目録」では2016年頃から「発達障害特集」と題して、発達障害の子供を描いた漫画を紹介しまくったんですが、それが出来たのは『ユンタのゆっくり成長記』を読んでいたからだと思っています。

「カラフル」みたいな、誰でも読める場所に『ユンタのゆっくり成長記』を連載していたのは、意義深かったなあと思います。

職業イラストレーターが描く育児漫画

育児漫画って、ギャグ漫画家と職業イラストレーターの方が描くことが多いのです。上で紹介した『ごんたイズム』のカツヤマケイコさん、昨日の記事で紹介した『王子と赤ちゃん』のカワハラユキコ(ハラユキ)さんの他に、フクチマミさん、やまもとりえさん、水谷さるころさん、などがいます。

そして、職業イラストレーターさんが描く育児漫画は、ちょっと変わった進化を見せています。SNS発の作家さんとは違い、職業意識が高くて差別化を図っているとも言える。

育児のお悩み解決BOOK

自身の育児の体験をもとに、たくさんのお母さんにインタビューして書いたノウハウ本。『妊娠・出産の予習BOOK』と合わせて、書店で見ることも多い本です。

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この漫画には「リアルな出産後」が描かれており、内容も多岐にわたっていて非常にお役立ちなのです。売れてるのにも納得だし、育児漫画で最も芸能人に紹介されているような気がします…。

新しい夫婦の形を模索する本

水谷さるころさんは元々、イラストレーターとして活躍していて、離婚歴があり、現在は事実婚。不妊治療の体験を経て妊娠・出産している方です。「マイル日記」という息子さん育児漫画は趣味でブログ連載、単行本は夫婦関係をテーマにした描きおろしが多い。

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さるころさんのエッセイ本は、面白いんですが、容赦や遠慮がないんです。単純に漫画として面白いだけでなく、隠さず、作らず、リアルな夫婦の諍いまで描いちゃうのがすごい。でも、作者である、さるころさん怒りの感情が伝わって来ないんですよ。漫画的表現では怒っているけれど、彼女の中ではちゃんと消化し終わった出来事なので、ドライでフラットな描かれ方なのです。そこがすごい。

『本当の頑張らない育児』

やまもとりえさんとコノビー編集部が作った、現実を下に敷いた創作漫画です。産後に起こる様々な「モヤっとした不満」を可視化した作品だと思います。特に、共働きのご夫婦が読むと納得感が高いような気がします。

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漫画ではあるけれど、ある種のシミュレーターのような作品だと思います。出産前に予習として読んだら、トラブルが減るのかな?減ってくれるといいなあ…と思う作品です。

『ほしいのは「疲れない家族』

今年中には単行本が出る筈、な連載です。ハラユキさんは東京に住んでいたけれど、夫の異動で現在はスペイン。地の利を生かし、ヨーロッパ中に取材して回って、様々な夫婦にインタビューして、読者にとっての「つかれない家族」を模索するような漫画。

この漫画はコメント欄が熱いな~と思っていて、私は毎回、読むんですが、最近潮目が変わったといいますか、コメント欄のリテラシーが高くなって来て驚いています。読者が選別された結果かも知れないけれど、コメント欄に成長を感じる。

ハラユキさんのWEB連載は異国の事情が描かれることがあり、面白いです。彼女はしっかりリサーチする方なので、 ↓ の記事には感心させられました。

2014年から生じた変化

上で紹介した「イラストレーターが描く育児漫画の変化」は2014年頃から起き始め、2018年頃にはハッキリとした流れとして可視化された感じがしています。

育児漫画のブームは過去に3回生じています。

1回目は「育児エッセイブーム」にのる形で、1990年代初頭、育児雑誌を中心に起きた。『ママはぽよぽよザウルスがお好き』や『私たちは繁殖している』などがヒットしました。

2回目は「ブログブーム」にのる形で、2005年~2010年頃起きた。『うちの3姉妹』や『ママはテンパリスト』などがヒット。

3回目は2014~2016年頃で、SNSを中心に起きた。有名漫画家が連載を始めたり、TwitterやInstagramで発表したりするようになった。出版不況もあり、この単行本が売れた!て作品は特にないかな…。

3回目のブームでは、育児漫画を描く人がものすごく増えて、ふつーの育児漫画は無料でいくらでも読めるようになったように思います。

結果、色々な広がりを見せたように思います。

まとめ

完全に偶然ではあるのですが、面白い時期に育児漫画について調べていたな~と思います。

他にも育児漫画については書きたいことがある…。あと2回くらいは書くのではなかろうか。

長い文章を読んで下さりありがとうございます。続きはまた。




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