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続11/14

【リポストします!!】
本稿終盤で引用させていただいているCreepy Nutsの楽曲「Bad Orangez」について、本日(2022.2.15)MVが公開されたので、追加してリポストします。本当に素敵な曲なので、是非聴いてみてください🙏

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大好きなCreepy Nutsのワンマンツアーのファイナル公演から早いもので1ヶ月半が経ちました。

あのときの気持ちを絶対に忘れたくなくて書いたnote。
多くの方にお読みいただき、たくさんのスキやいいねを頂戴しました。
お立ち寄りくださり、心より感謝を申し上げます。

その後のことを少し書いておこうと思います。


《evil side》

ライブの配信は1週間のアーカイブ期間があった。期間内であれば何度でも見返すことができる。いつもなら電波が擦り切れるんじゃないかと思うほど(レコードでもカセットテープでもないから擦り切れない!)アーカイブを何度も何度も見返すのだが、今回はすぐ泣いてしまうから、ほとんど見られなかった。

セトリのネタバレをふみたくなくて、見ないで我慢してきたファンクラブ限定のBehind the Scenes(各ライブ会場での舞台裏を記録したドキュメンタリー動画)。ライブの配信アーカイブ期間が終わり、もういいだろうと思って、ツアー初日大阪の分から見始めた。9月スタートだったから、画面の向こうのみんなはまだ半袖だ…と思ったら、それだけでまた泣けてきて、すぐ動画を止めてしまった。

ちょうどその時期、Ginza Sony Park(現在は改装のため閉園中)で開催されていた展示があった。

こちらも何ヶ月も前から行くのを楽しみにしていたのに、悩んだ挙句行くのを我慢して断念した。その記憶までセットで思い出されてしまった。例の感染症が猛威をふるっていて、県境を跨いだ移動は控えるよう言われていたし、私にはまだワクチンの順番が回ってきていなかった。

このときも、娘に行かないでほしいと懇願されたのだ。

「もし感染症にかかって、病院や療養施設に行かなければいけなくなったら、食事が食べられなくなる。そしたらわたしの人生全てが終わる」

確かに娘は、外食が一切できない。小麦アレルギーなので、小麦を含むものは食べられない。病院や療養施設に除去食の準備はあるのだろうか。そもそも(というか、それ以前に)娘は今、私が作った以外の食事を食べることができない状況なのだ。

この世で一番大切なものは娘の命。そう思ったら、諦めるより他の選択肢はなかった。

だから、そのときの無念もあわせて、どうしてもライブに行きたかった。ワクチンだって自治体の申し込み開始日に、最速の日程で申し込んで、ライブに間に合うように打った。
ライブ当日は幸いなことに、感染症も落ち着いていた。
…行けたはずだったのだ。

我慢…我慢……我慢………私の人生、ずっと我慢ばっかり。

「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい!」
どこからか母の声が聞こえてきて、耳を塞ぐ。
…落ち着いて、私。母はもう死んだよ。

結局、思考は堂々巡り。こうしていつもふりだしに戻る。出口はどこにもない。


《flowers side》

私の中のevilが、出口も行き場もなく醜く渦巻き発酵し続けたせいだろうか。匂いに敏感な娘がある夜、こんなことを言い出した。

ママは最近ストレスを感じると、独特の匂いがする。今もその匂いがする。臭くて耐えられないから、とにかく今すぐお風呂に入ってきて!

日付が変わるくらいの時間帯だったが、急きょ入浴することになった。

外が暗くなってから娘を独りにすると不安で泣いてしまうので、私は夜風呂に入る習慣がない。まだギリギリ起きていた夫に娘の見守りを任せることにした。

湯船に浸かりながら、あのときのことを思い返す。
もしかして、ライブ直前に食事を出したときに娘が感じた臭い匂いも、食事の匂いではなく、私が発していたストレス由来の独特の匂いだったのではないか。
あのときは時間が迫っていて、急いで出かけなければと思い、とにかく焦っていた。

更年期といわれるお年頃、ホルモンバランス的な何かが変わったのかもしれない。あるいは発酵し続けた私の中の醜悪な何かが、どこかから漏れ出ているのかもしれない。どれだけ気をつけて念入りに蓋をしても、どこかから匂いが漏れ出てしまう発酵食品のように。

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私の入浴中、夫が娘にこんな話をしていた、と後から聞いた。

「ママはおばさんになって、これまではしなかったような匂いがするようになったのかもしれない。なるべくその匂いが出ないように、ママがストレスを感じずにいられるようにできるといいんだけどなぁ。
そのためにも、ママからライブを取り上げちゃいけない。今ママからそれを取り上げたら、ママは潰れちゃうよ。パパと二人で協力して、どうにかしてママが次のライブに行けるように、なるべくストレスを感じないで済むようにしてあげよう」

これまでも何度か思ったことがあったけれど、改めてこの人と結婚してよかったと思った。嬉しくてちょっと泣いた。この人と一緒ならきっと乗り越えられる。もろもろどうにかなる。全く根拠はないけれど、そんなふうに思えた。

「パパの言うことはよくわかったし、もう少し体調がよくなったらライブに行ってきていいよ。今はまだちょっと無理だけど…」

娘が言う。

…ありがとう。

来年、感染症が落ち着いていたら、アルバムがリリースされて、ワンマンツアーが開催されたら、そしてあなたが元気だったら、そのときは、今度こそ、遠慮なくワンマンライブに行くからね。

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染め整えられたよそゆきの鬣も、1ヶ月半が経って根元から本来の白毛が伸びてきた。鏡を覗き込んでも罪悪感を覚えなくなり、だいぶ気楽になった。

体重はそう簡単には増えない。今も着々と減り続けている。でも治療はどうやら新しい段階に入ったようだ。そして、発症からこれまでの2年半は実は長い長い助走で、ここからが本当のスタートなのかもしれないということも、なんとなくわかり始めてきた。

このことについてはまた別の機会に書きたいと思う。

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あれからずっと聴き続けているBONNIE PINKのアルバム「evil and flowers」。最後から2曲目に「Fallen Sun」という曲がある。

僕の名前は落ちた太陽さ
〈中略〉
これ以上落ちることはないよね
The sun is doomed to fall(太陽は落ちる運命にある)


勝手に自分と重ねて聴いていた。私は落ちた太陽。落ちる運命にあったのだから仕方ない。

でも、若林正恭さんの著書で最近文庫化された「ナナメの夕暮れ」の解説を読んでいて、目の覚める思いがした。

そういえば、夕暮れと朝焼けは似ているらしい。太陽のある方角がわからない限り、写真では判別できないほどそっくりだと聞く。

朝井リョウさんによるこの二文に、どれだけ救われただろう。

…そうなのか。夕暮れと朝焼けは似ているのか。

Creepy Nutsの最新アルバム「Case」に収録されている私の大好きな曲「Bad Orangez」の歌い出しが頭の中で鳴り始めた。

沈む夕陽の色に良く似たお前
昇る朝日の色にも見えるお前
夕陽の色に良く似たお前
朝日の色にも見えるお前

[追記: 2022.2.15 MV公開]


朝日も夕陽もよく似たみかん。だとしたら、どっちだっていいじゃない。そう思えた。沈んだ夕陽は翌朝、朝日として昇るはずだ。

私もいつかまた必ず昇ってみせる。今はまだ真っ暗闇の真夜中で、次の朝がいつ来るのか、本当に来るのかさえ見当もつかないけれど。


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