渋川市。藤原拓海が住んでいた町だよね?

車に紙カップを設置しなかったのは正解だった。どれだけ慎重に走ってもその中身を零さずに済むはずもない。藤原拓海はすごいわ。

そう思いながら実存しない藤原拓海という現実と彼が毎日この道を走り込んでいたと思い込んでしてまっている錯覚のギャップに気付き、ふっと笑ってしまう。

聖地巡礼というのはこういうことだろう。頭の中でフィクションだと分かっていても、現地に行ってみるとキャラクターを実際の人間として扱うものだ。

誰かの想像から生まれたフィクションの人物にこれほどワクワクドキドキするなんて恥ずかしいながらワクワクが止まらないのも現実。

頭文字Dに初めて魅了されて久しい。滅多に読み返さないわたしだが、あれだけは何回読んでも飽きることはない。読めば読むほど主人公の地元である群馬県の渋川市に行きたくなった。

年末年始はやっと長年の望みが叶った。実は、聖地巡り目的で群馬に行ったわけではない。元日に行われるニューイヤー駅伝を見たく行ったのだ。でも、群馬に行くなら「あそこ」に行かないわけにはいかない、ということで、渋川市に宿泊した。ついた瞬間から興奮状態。落ち着く様子もなく。

冒頭に書いたように渋川市は勝手に漫画に持ち込まれただけで、実際に藤原拓海という青年が毎朝春名山(秋名山)を豆腐を配達するために走っていたわけではない。が、伊香保を過ぎて山の本格的なところに入ったら、そんなことが頭からぶっ飛んでいった。今走っている道はあの藤原拓海が走っていた同じ道だ!その思いしか頭をよぎらなくなった。現実とフィクションの境線がなくなり、頂上まで登りきるまでの間の10分だけは、普段入れない世界に足を踏み入れた幸せな時間だった。一つだけ麻痺していない現実の感覚が、「運転が藤原拓海ほどうまくないからコーナーは攻めるな!」ということだった。


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