『地球星人』読了

村田沙耶香さんの『地球星人』を読み終わりました。
村田沙耶香さんの著作は『コンビニ人間』と『消滅世界』を読んだことがあるのですが、今作も前二作同様ショッシングでした。
どちらも社会や働くということ、性などについて真正面から向き合った作品と言えばいいのか、本当にそこまで真っ直ぐ向き合えるのかというほどに鋭く向き合った作品だったと思います。

今作の『地球星人』もまた、社会や夫婦、性について痛烈な切り込み方をしていると思います。
『コンビニ人間』を超える衝撃と帯にありますが、まんざら大袈裟でないと思います。
どんな頭してたらこんな作品が書けるのかと。
村田沙耶香さんこそ、じつは私たち「地球星人」じゃない宇宙人の目を持ってるんじゃないかと思わせられます。

とにかく常識とか固定観念というものを疑わせにかかってくるというか、作品全体に漂う静謐な気味の悪さというか、こんなに鋭敏な感覚を持ってる人がどうやって今まで生きてきたのかと思う。

家族の中で自分だけ違うとか、社会の中で自分は異物なんじゃないかと感じるなど、大なり小なり皆少しは感じたことがある感覚だと思います。
主人公と私のそれは比較にならない重さですが、「地球星人」になれず、人間を出荷する「工場」の一員としてうまく洗脳してもらえなかった主人公の姿にはうっすらとした共感を覚えます。
主人公をさらに孤独へ追い込んでいく、洗脳された「地球星人」である主人公の周囲の人々。

というか読んでて思うのが、主人公の周りにろくな人間がいない!
親も親だし姉も姉。塾講師は論外のカス野郎だし、友達ももうちょっとこう……人の気持ちに寄り添うとか他人の価値観を認めるとかさあ……。

そういう社会に追い詰められていく訳ですが、どんな時も淡々とした語り口調で進んでいくのが独特の静かな狂気を感じさせます。

読んでスカッとするような読後感からは程遠いですが、面白いし読みやすいことは間違いないです。もし興味があれば読んでみるといいのではないでしょうか。

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