『たゆたえども沈まず』読了

原田マハさんの小説『たゆたえども沈まず』を読了しました。
日本人の画商・林忠正と加納重吉、テオとフィンセントのファン・ゴッホ兄弟を描いたフィクションでした。
この加納重吉、完全にオリジナルのキャラクターらしいですが、読んでると本当にモデルとなった人物がいるみたいに思えてきます。あとがきで創作と聞いてびっくりしました。
歴史上で関わりのない人物をここまで深く結びつけることができるとは。

物語の中心人物であるテオは、兄同様繊細で落ち込みやすい人物として描かれています。
正直な話、ゴッホの弟、ゴッホを献身的に支えた人物として付属品的なイメージしかない人物です。考えてみたら失礼な話ですが、そのテオが1人の人物として苦悩し、兄への想いを捨てきれないさまが生き生きと描かれていました。
現実のテオも実際にこんな風に苦悩していたのかも、と思わされる。そのテオと浮世絵を通して友情を育んだ重吉と忠正や、テオとフィンセントの浮世絵と日本への憧憬も本当にあったことかのようにおもえます。

あと、なによりも文章が美しいです。
情景の描写がさすがプロ、どうしたらこんな表現が出てくるのか……と思いました。
短いですが、面白い小説でした。もっと上手く表現出来ないことが悔やまれます。


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