マンバ読書会『ガンガンのマンガ』イベントレポート【2019年8月】①
8月3日(土)に、東京・豊島区にある『Comic Cafe & Bar しょかん』にて開催されたマンバ読書会「ガンガンのマンガ」。
スペシャルゲストとしてご参加いただいた、マンガソムリエの兎来栄寿さんによるイベントレポートをお楽しみください!
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『天気の子』の影響か晴れの日が極端に少なかった7月から一転、一気に真夏日が増え日本列島が酷暑に見舞われる8月となっておりますが皆さまいかがお過ごしでしょうか。マンガソムリエの兎来栄寿です。
折しも、『ドラゴンクエスト ユアストーリーズ』の映画が公開された翌日。
各地の花火大会へ赴くためか浴衣姿の人も目立った8月3日(土)、「ガンガンを語る」テーマでのマンバ読書会がComic Cafe & Bar しょかんさんにて開催されました。
私自身、かなりのガンガンっ子でありドラゴンクエストを含めてエニックスによって育てられた部分は大きいのでいつも以上に内心楽しみにしていた会でした。
しょかんさんにも、ガンガン系マンガ蔵書は豊富に存在します。面陳してあるタイトルが『群青』、『鈴木さん』、『シノハユ』、『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』という並びなのも味があります。
実はしょかんさんの小野Dさんも生粋のガンガンっ子だとか!
「中の人はスパイラルやハレグゥ、東京アンダーグラウンド、グルグル、スターオーシャンセカンドストーリー、そしてもちろんロトの紋章!お話しできるのを楽しみにしております!!!」というお店公式アカウントのツイートもあり、ガンガンのマンガを語る会へのモチベーションも最高潮でした。
そんな小野Dさんが一番ガンガンで好きな作品を訊ねたところ、一番を決めるのは難しいと悩みに悩んでおりました。そして考え抜いた末に挙げられたのが『清村くんと杉小路くんと』でした。「どれだけ笑わせられたかわからない」とのこと。
『清村くん』作者の土塚理弘さんは『マテリアル・パズル』や『バンブーブレード』など、今でも続編やスピンオフを出している名作がいくつもあり、ガンガン系を代表する作家の一人ですね。
さらに小野Dさんは、「人生で初めて出たオフ会が『スターオーシャン3』のマリア・トレイターのオフ会だった」とも話されており、筆者と同じくエニックスに様々なものを受け取って育った方だと解って魂で握手しました。
始まる前から既にヒートアップしていた会場ですが、参加者の方々の来場と共に集められていくガンガン系作品の数々。柴田亜美さんの「カバーはずすな!!」のカバー下表紙が目を引きますが、文字カバーを外すとお遊びやおまけマンガ、設定資料などが載っているのもガンガン系作品の大きな特色ですね。
この日はテーマがニッチなためか参加人数こそいつもより少なめではあったものの、その分、少数精鋭による極めて濃密なトークがプロローグから大いなる盛り上がりを見せました。
そして、始まった直後に登場した月刊少年ガンガン創刊号には一堂大興奮!
『ロトの紋章』、『ハーメルンのバイオリン弾き』、『突撃!パッパラ隊』『南国少年パプワくん』、すずや那智さん・栗本和博さん・石田和明さん・柴田亜美さんによる『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場 ガンガン編』といったガンガンを代表する名作は勿論のこと、『輝竜戦鬼ナーガス』などについても懐かしさを以って語られました。
後に「鈍器」と呼ばれるまでに厚くなっていき、「日本一元気な少年マンガ誌」というキャッチコピーをもじって「日本一アツい少年マンガ誌」と言われるようになるガンガンですが、創刊号はまだ500ページ台で、隔週刊だった頃の厚みに近い良心的な(?)サイズでした。
(↑参加者から持ち寄られた「ガンガンのマンガ」)
恒例の筆者によるマンガトークコーナーでは、「ガンガンの歴史」、「ガンガン系作品の発行部数ベスト10」、「ガンガン系作品の持つ特徴」などについて語らせて頂きました。
「ガンガン系で一番売れた作品は『鋼の錬金術師』ですが、その次に売れた作品は何でしょう? 」とクイズを出題したところ、
などの回答が出ましたが、正解は『黒執事』。
すると参加者から、「『黒執事』は、ここに来てずっと以前に張られた伏線を回収する熱い展開になっているのでぜひ読んで欲しい」と、宣伝が入りました。
ちなみに、上位4作品を挙げると
『鋼の錬金術師』
『黒執事』
『ロトの紋章』
『ソウルイーター』
となっているのですが、この4作品に共通するのはファンタジー。それもただのファンタジーではなく、どこか暗かったりブラックな要素を含んでいるファンタジーであり、これが正にガンガン系の特徴であろうという話をしました。
ちなみに5位に来るのが『ドラゴンクエスト4コママンガ劇場』なのですが、ガンガンとは切っても切り離せないドラゴンクエスト自体も、作中では割と暗かったり辛かったりするエピソードも頻出する物語です。
四大週刊少年誌のメインストリームとははっきりと違った特色を持ち、それがしっかりと一部の少年少女たちに突き刺さり、育まれていった土壌がガンガンと言えるでしょう。
そこで話題になったのが、「ガンガンっぽい」という概念。何となく、作画や作風だけで感じる「ガンガンっぽさ」ってあるよね、というお話です。たとえば、多くの人が共感したのが「『D.Gray-man』はガンガンっぽい!」というお話。解る人には解って頂ける感覚だと思いますが、『終わりのセラフ』や『テガミバチ』などにも同様の感覚があります。
それを突き詰めていった結果、
・「『東京アンダーグラウンド』のスーツのベタ+トーン、ガンガンっぽい」
・「全体的な画面の黒さ、ガンガンっぽい」
・「まだCG全盛じゃない頃のこのコピック塗り、ガンガンっぽい」
・「大体がストレート・ツンツンヘアー。パーマの主人公はまずいない」
といった濃い話へ。
「えっ、スクウェアとエニックスって別々だったんですか!?」というアラサーたちへの痛恨の一撃も飛び出しつつ、「私もこれから若く思われるためにそれ言おう」と前向き精神が炸裂しつつ、スクウェア・エニックスが一つになる前を知らなかった若い方でも「ガンガンっぽい」という感覚にはコンセンサスが取れたので興味深かったです。
その他にも…
・『ハーメルンのバイオリン弾き』『まもって守護月天!』『新撰組異聞 PEACE MAKER』『ながされて藍蘭島』などの現在
・ガンガン作品のアニメのOP・EDはとても良かった
・『ソウルイーター』のOP最高!
・『スパイラル』が細田守監督だということを意外と誰も言わない、今観ると最高に細田監督感がある
・『一週間フレンズ』の奏もいいぞ
・実世界には大野さんはおらずハイスコアボーイしかいなかった
・ガンガンはとにかく時代を先取りし過ぎていた
・少年も読めるように志向した少女マンガ誌「ステンシル」というものも存在した
・半ズボン猫耳白衣生意気天才少年は15年早かった
・コミックバウンドの『マッスルストロベリー』は『ダンベル何キロ持てる?』の先駆けでは
などなど、多彩な話題に花が咲き続けました。
そして、合間にはしょかんさんの美味しいお料理も。
『咲-Saki-』の愛宕姉妹も大好物の山盛り唐揚げ。
『魔法陣グルグル』のアッチ村の異様にうまい店のイモ料理でしょうか。
茹でただけのパスタに見えるかもしれませんが、シチリア風レモンパスタというオシャンティな一品です。シチリアと言えば『EIGHTH』ですね。
『WORKING!!』のワグナリアでも出されていそうなピラフ。
お腹もパッションも満たされる、非常に楽しい時間となっていました。
その後も話は汲めども尽きず、新旧のガンガン推し作品として『鳥籠ノ番』、『ゆずべんとう』、『エルフと狩猟士のアイテム工房』、『私の神様』『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』など、多くのタイトルについて語り明かされました。
会の最後には、布教用の『シノハユ』が渡されるシーンも。
自分の推したいタイトルを布教して気持ち良く受け取って下さる方がいるところも、マンバ読書会の良いところです。
誇張ではなく体感時間が5分ほどに感じられた実に濃密な数時間でした。閉会後も23時まで営業している店内で語り続けておりました。
次回は8月24日(土)に開催予定です。
初めての方でも共通の話題で楽しくお話できる和気藹藹とした会ですので、ぜひ遊びに来てみてはいかがでしょうか。
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次回の読書会テーマは『いい夏のマンガ』!
・夏をテーマにしたマンガ(ぼくらのよあけ、盆の国)
・このマンガの夏のシーンが良い(アイシールド21、だがしかし)
などなど!あなたが思う「いい夏が登場するマンガ」について読んで語りましょう〜!!
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