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子どもたちの“好きな風景”が、よりよい未来をつくると信じて

「環境問題と子育ては、相性が悪い」と思った。

子どもを産んでみると、環境について考えるのが一気に難しくなった。毎日大量に捨てる紙おむつも、プラスチックのおもちゃも、疲れた夜の冷凍食品も。息を吐くように自然とゴミが出る。そんな環境で、子どもたちに「環境問題を考えよう」なんて言えるのか、と自問する。

同時に、子どもの寝顔は私に「よりよい未来」を切望させた。これからを生きるこの子たちに、どうすれば持続可能な社会を残してあげられる?どうすれば、環境問題を身近に捉えてくれるように育てられる?小さな我が子への「教育」というプレッシャーに、途方に暮れていた。

あるとき、受けた講座で教育学の先生が言った。

「子どもをたくさん自然に触れさせてあげましょう。“大切にしたい”を思えるような楽しい思い出を作ってください」

ハッとさせられる。「海を守りなさい」「森を大切に」「ゴミを出すな」と教えれば、きっと子どもたちは“しぶしぶ”環境問題に取り組むだろう。もしかしたら、恐怖や危機感から動き出すかもしれない。でも、それは心からの「私たちの地球を守ろう」だろうか。

ベッドタウン生まれの私は豊かな自然とは遠かった。けれど、父の実家がある長野でキャンプをした夏を思い出す。近所の土手でバーベキューをしながら、手で掬った川の水の冷たさを思い出す。手の中で転がるダンゴムシの軽さ、水たまりに張った氷の不思議、雲が流れていく青い空。そのときはなんてことないと思っていた風景が、今は「失いたくない景色」となって私のなかに確かにある。

だから私は、子どもたちを海へ、山へと連れて行く。毎日の暮らしのなかで四季を伝え、虫を見てしゃがみこむ。豊かな自然はこんなにも美しく、それを受け取ることはこんなにも楽しいのだと、子どもたちを通して私自身が再認識しながら、地球を想う。

環境問題は途方もない。考えれば無力感に苛まれ、悩みは尽きない。進んでいく森林破壊や地球温暖化に、本当は目を瞑りたくなるほど心が痛む。この気持ちと向き合うのはつらいけれど、持っていてよかったとも思うようになった。そうか、私はこの根っこの部分を今、育もうとしている。

よりよい未来のために何ができる?

子どもたちの「好きな風景」を増やしてあげること。この星に生まれてきた自分たちの幸運を伝えること。親として、これからの未来を一緒に生きる者として、やるべきことがわかったような気がした。

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