足の匂いを嗅ぐ日々は、尊さともどかしさが入り混じる
息子が生まれて早数ヶ月。いったい何をして過ごしていたのか?と聞かれれば「足の匂いを嗅いでいました……」と白状せざるを得ない。
共感してくれる人がいるのかはわからないけれど、私は赤ん坊の足の匂いを嗅ぐのがすごく好きなのだ。
こればかりは1人目の時から止められず、2人目を産むにあたって、ひっそりと楽しみにしていたことでもある。(さすがに人の赤ちゃんではしづらいし……)
何が好きかと聞かれたら、その小ささや滑らかさはもちろんのこと、匂いがちゃんと足臭いところ。こんなに小さく、歩いたこともない足なのに、ちゃんとクサイ!もうしっかり人なんだ!と嬉しくなってしまうんだと思う。靴下を履いていた後なんかは特に最高。
息子の足の匂いを嗅ぐというのは、体勢の問題でもある。彼が基本的に私の膝の上におり、こちらに足を向けて寝転んでいるからだ。
降ろすと泣いてしまう息子を膝の上に乗せながらできることなんて、スマホをいじるか足の匂いを嗅ぐくらいしかない。
1日中、赤ん坊を膝の上に乗せて日が暮れていく。それがどんなに尊く、幸せなことかを噛み締めながら毎日を過ごしている。けれど。やっぱりそんな日々には、ある種の「もどかしさ」も付きまとう。
子育てで一番つらいのは「何も終わらないこと」だ。
料理でも掃除でも、仕事でも読書でも、なんでもいい。「あ、あれやっちゃいたいな」と思ったことを始められたとして、3分後には赤子を膝の上に乗せた同じポジションに舞い戻っている。
自分で自分の時間をコントロールできず、すべてが中途半端になることが、こんなにもストレスだとは子どもを生むまで知り得なかったことだなあと思う。
SNSを見ながら、私が赤子を膝に乗せていた1日で、みんながどれだけ先に進んでしまったかを想う。「焦るな、焦るな」と言い聞かせても、やっぱり落ち込む夜もある。
だから私は、息子の足の匂いを嗅ぐ。小さな指の間に溜まった埃すら、愛おしい。小さいのに力強い足先に鼻をつままれながら、尊さともどかしさと共にすうっと息を吸う。
大丈夫。きっと思ったよりも早く、息子の足の匂いなんか嗅げなくなるだろう。いつか、嫌でも前に進まなきゃいけない日もくるだろう。
気が付けば、ほら、もう息子の頭が私の膝から飛び出しそうになっている。いつまで乗せていられるかな。その頃には、この日々が、小さな足の匂いが、恋しくて恋しくてたまらなくなっているんだと思う。
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