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「普通じゃない図書館」で "まちの未来" をつくる、若き館長の想い。

静岡にある、ちょっと素敵な場所や気になる人を訪ね、そこにあるストーリーをのぞいてみる ”子どもだけじゃない、大人だって学ぶ”。略して、”おとまな”
タイトルには「自分が知らなかった世界や、モノコトについて知るって、学びじゃないか」という意味が込められています。

「みんなの図書館 さんかく」って知ってる?

静岡県の中でも特に港が多く、マグロやカツオなどの水産物が豊富なことで知られる焼津市。
そんな焼津の駅前商店街に、全国でも珍しい、ちょっと変わった図書館があります。

私設の図書館、「みんなの図書館さんかく」です。

「私設図書館」とは、民間団体、あるいは個人が管理する、私立図書館のことを言います。

これまで「私設図書館」にまったく縁がなく、「私設図書館って実際どんなもの?」「どうして焼津の商店街に?」など、多くの疑問を抱いていた私。

ということで、今回のおとまなは「みんなの図書館さんかく」にお邪魔することにしました。
館長さんにアポイントを頂き、さっそくお店へ向かいます!

焼津駅を降りて、駅前商店街を5分程歩くと、ありました、「図書館さんかく」です。

ガラス張りの外観から店内をのぞくと、おおおお〜、本が天井に届くほど並んでいるのが見えますね。

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この図書館は、「一箱本棚オーナー制度」という仕組みで、本棚を有料で貸し出すことで運営されている図書館だそう。

現在、本棚を借りているオーナーは48人。
館内にはオーナーたちがセレクトした多様な本が、ずらりと並んでいます。
(※オーナー数は取材時時点の人数です)

note_おとまな_さんかく (1)

それぞれの本棚を眺めていると、その持ち主の人柄や考え方が伺い知れるような、まるで頭の中を覗いているような気分になり、なんだかちょっぴりワクワクします。

さて、そんな本の世界が広がる「みんなの図書館さんかく」ですが、この図書館は昨年3月3日に、地元焼津出身の土肥潤也(どひじゅんや)さんによって開業されました。

土肥さんは、どうして私設図書館をつくろうと思ったのでしょうか?お話を伺ってみました。

「みんなの図書館さんかく」のはじまり

もともと本を読むのが好きで、自宅の本棚が溢れかえるほど、多くの本を持っていた土肥さん。

自身の考え方や生き方についても、本によって影響を受けた部分が大きく、本に助けられたり、養われていることが多くあるといいます。

それゆえ、他人から何か相談ごとを受けたりすると、「それだったらこの本を読んでみるといいよ」とアドバイスすることが多く、本を貸したりプレゼントしたりするやりとりを、日頃からよく行っていたんだそう。

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そんなやりとりを繰り返す中で、ふと、
「もっとこれを日常的にできる “場“ があったらいいな」と、思った土肥さん。

「自身が持つ本を置ける大きな本棚、そしてワークスペースも兼ねた、"図書館"のような場所をつくって、周りの人たちも気軽に利用できるようにしたらどうか?」というアイディアが浮かびます。
そしてそれが、実際に私設図書館を始めるきっかけになったそうです。
普段の暮らしの中から生まれた、閃きだったのですね!

ところで、この「みんなの図書館さんかく」という屋号にも、何か由来があるのでしょうか?
名前に込めた想いを、土肥さんに聞いてみました。

「さんかく」という名に込めた、3つの願いとは?

「そうですね、いちばん大きな意味は"参画"です。すでにある枠に参加するのではなく、企画や計画から参加して、みんなでつくっていきたい、という気持ちを込めています。

次に、昔からよく“3人寄れば文殊の知恵“と言いますが、ここでいろんな人がつながって知恵が生まれたり、話し合うことで新しい価値やプロジェクトが生まれたりするといいな、と思って。
だから図書館のロゴも、3つの顔をイメージして描きました。

あと最後に、これはちょっと後付けなんですが、この図書館の住所、焼津市栄町3-3−33なんです。だからやっぱり3が大切なキーワードだと感じて、3にこだわりました(笑)」

ーーなるほど、本当に3にゆかりがあるようです!

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こうして、土肥さんが名付けた「みんなの図書館さんかく」も、この商店街にお店を構えてから、1年半を迎えました。

土肥さんがこの場所に図書館に構えたのも、商店街とのつながりがあったからだといいます。

商店街、そして、さんかくとなる場所との出会い

土肥さんが商店街と関わりを持ったのは、今から4年以上前のこと。
自身で設立したNPO法人で、中高生の社会参加を支援・サポートしていた土肥さんは、とある大学内に「放課後の居場所室」というコミュニティスペースを設けて活動をしていました。

その大学のキャンパスが駅前商店街の中にあったことがきっかけで、商店街と接点を持つようになったそうです。

そして、商店街とのつながりをさらに深めたのが、土肥さんがメインとなって主催したイベント「みんなでつくるみんなのアソビバ」。
商店街の一部を歩行者天国にし、そのスペースを使って子供に遊び場を提供するプロジェクトでした。

現代社会において、人々にとって消費的な場所となりつつある 商店街、そして、まち。
しかし人口が減っている今、昔の暮らしのように、子どもを含む全ての市民がまちに参画し、まちのつくり手になっていく必要がある、と感じていた土肥さん。

「あそび」を通して、そのきっかけをつくりたい!

そんな想いでプロジェクトを考え、準備の段階から地域の人を巻き込み、みんなでつくる・参画するイベントを実施。当日は多くのお客様で賑わいました。

そして、イベントの際に主催者の拠点(事務局)として使用していたのが、当時空き店舗だったこの場(現:みんなの図書館さんかく)だったそう。

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土肥さん自身にとっても、とても思い入れのあるこの場所。
「自分の図書館をはじめるなら、この場所で始めたい。」
そんな想いで、大家さんに「この場所を貸して欲しい」と伝えた土肥さん。しかし、大家さんは当時、この場所を誰かに貸すことを考えていなかったため、すぐに返事をもらえなかったそう。

「ここを借りるのは難しいかもしれない・・・」
そうも感じた土肥さんでしたが、日頃から土肥さんの地域活動を見ていた自治会長さんや商店会長さんが、「若い人の挑戦を応援してあげたらどうか?」と大家さんを後押ししてくれたため、念願叶ってこの場所を借りることができたそうです。

こうして土肥さんがつくった「図書館さんかく」は、オープン以来、まちに参画するきっかけとなるコミュニティの場、であり続けています。

また、「図書館さんかく」をつくっているのは土肥さんだけではありません。本棚を借りて、本を貸し出している本棚オーナーたちもその一人です。
土肥さんが、彼らと日々どのようにつながり関わっているのか、教えてくださいました。

人と人をつなぐ、それが「さんかく」の役割

「オーナーの方々とは、特にコミュニケーションを大切にしています。
最初は、面白い取り組みだねと興味を持って本棚を借りてくれたりしますが、3、4ヶ月ぐらい時間が経つと、オーナーにとって “図書館でのコミュニティ“ がある程度育っていたり、ここにお金を払い続けたいと思えないと、どんどんやめていってしまうと思うんです。

わざわざ、お金を払って本棚を借りているわけなので、ここに何かを期待したり、何か目的意識があったりすると思いますし。

例えば、とある本棚オーナーの女性は、日本の性教育に疑問を持ち、自ら性教育の普及活動をしていて、そういった書籍が公共図書館だとあまり目立つところに置いてなかったりするので、ここで本棚を借りて、自ら本を紹介・発信しているんですよ。」

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「その本を、偶然この図書館に立ち寄った若いママが読んで、本の感想をメッセージカードで伝えたりすることがあったりします。僕としては、こういうコミュニケーションがもっと生まれて欲しいんですよね。

だから僕たちは、図書館に来た利用者や、オーナーさん同士もそうですけど、こういったコミュニケーションや繋がりが起こるように声をかけたり、接着剤のような役割となることを心がけています。

あと、ここにいると地域の色々な情報や相談ごと、困りごとなどが集まってきたりするんです。HP制作をしてくれる人はいないか?とか、チラシ作成をお願いできる人はいないか?とか。
そういった時に、オーナーさんを紹介させてもらったりもしていて、僕自身もすごく、オーナーさんたちに助けらています。

ーー普段、ファシリテーターとしても活動している土肥さんだからこそ、図書館という場の中で、人と人が話しやすい雰囲気をつくったり、人と人がつながるコミュニティを、つくり出すことができるのかもしれません。

「さんかく」のこれから

今後のさんかくについて、「さんかく大学」という名の市民大学をつくり、ニッチなテーマで濃い内容の市民講座みたいなものを開催したい、と話す土肥さん。

また、将来的には、さんかくのような図書館を333館まで増やし、「さんかく出版」として、全国でつながったオーナーさんたちと本を出版したりもしたい!という未来像も語ってくださいました。

出版された本を読める日が、待ち遠しいです!

おわりに

「みんなの図書館さんかく」を訪ねると、

まちに変化を起こすため、空き店舗を利用して図書館をつくり、
図書館というコミュニティの場で人と人をつなぎ、
まちに参画する、まちのつくり手を増やしていく

そんな活動に励む、若き館長に出会うことができました。

ーー土肥さん、ありがとうございました。


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