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『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいのマンガで読む。』(ドリヤス工場)

忙しい先生のための作品紹介。第24弾は……

ドリヤス工場『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいのマンガで読む。』(リイド社 2015)

対応する教材    文学史/『山月記』『檸檬』『舞姫』『注文の多い料理店』『羅生門』『ごん狐』
ページ数      266ページ
原作・史実の忠実度 ★★★★☆
読みやすさ     ★★★☆☆
図・絵の多さ    ★★★★★
レベル       ★★☆☆☆

作品内容

 日本と海外の有名な文学作品を、10ページ程度の漫画にした一冊。『山月記』や『舞姫』などの教科書にも載っているものを多数含んだ、全25作品が漫画化されています。それぞれの漫画のあとには作者のプロフィールが、似顔絵とともに書かれています。絵は、少女漫画というよりも、水木しげるさんの絵を彷彿させるような不気味な雰囲気があります。収録作品はどちらかというと悲劇や暗い内容のものが多いため、絵のテイストが内容に合っています。

おすすめポイント 忙しい人のための、文学3分リーディング

 本書は、原作のあらすじに大幅な改変を加えずに漫画化しており、文学作品の内容を短時間で知ることができます。25の作品はどれも、読んだことはなくても一度は名前を聞いたことがあるような有名作品ばかりです。授業などでタイトルだけ聞いたことがある作品の内容を知りたい方、以前読んだ作品を思い出したい方にオススメです。
 また、文字で読んで想像していた登場人物たちの姿を、絵で見られる面白さがあります。個人的に最も印象的だったのは、カフカの『変身』です。原作を読んだ時には、ある日突然毒虫に変身してしまった不遇な息子に対して、自分たちを苦しめる毒虫はいなくなってほしいと思う彼の家族はなんて冷酷なのだろうと思っていました。しかし、この漫画の毒虫を見た第一印象は、「うわ、気持ち悪いな」。原作で主人公に共感したはずなのに、客観的に見たら今度は家族側に共感してしまいました。小説とは違った視点で物語を見られるという点は、文学作品を漫画で読む面白さだと言えるのではないしょうか。

授業で使うとしたら

 本書の漫画はどれもページ数が少なく、ストーリーも原作に忠実であることから、あらすじを掴むのに適した一冊だと言えます。
太宰治の『人間失格』や夏目漱石の『三四郎』など、著名な作家の作品ばかりが揃っているので、例えば文学史の授業で作品を紹介する際には、漫画を提示しながらあらすじを説明することも可能です。また、教科書掲載作品については、読解で扱った箇所の情景を漫画にしたものとして紹介することもできます。

【教科書掲載作品(収録順・カッコ内は教科書の年次と科目※)】※2021年現在
中島敦『山月記』(高2・現代文)
梶井基次郎『檸檬』(高3・現代文)
森鴎外『舞姫』(高3・現代文)
宮沢賢治『注文の多い料理店』(小5・国語)
芥川龍之介『羅生門』(高1・国語総合)
新美南吉『ごん狐』(小4・国語)

【その他収録作品(収録順)】
太宰治『人間失格』
坂口安吾『桜の森の満開の下』
フランツ・カフカ『変身』
永井荷風『濹東綺譚』
泉鏡花『高野聖』
夏目漱石『三四郎』
アンデルセン『雪の女王』
田山花袋『蒲団』
幸田露伴『五重塔』
樋口一葉『たけくらべ』
魯迅『阿Q正伝』
伊藤左千夫『野菊の墓』
トルストイ『イワンのばか』
エドガー・アラン・ポー『モルグ街の殺人』
菊池寛『恩讐の彼方に』
二葉亭四迷『浮雲』
グリム兄弟『ラプンツェル』
夢野久作『ドグラ・マグラ』
堀辰雄『風立ちぬ』

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