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『はやげん! はやよみ源氏物語』(花園あずき)

忙しい先生のための作品紹介。第37弾は……

花園あずき『はやげん! はやよみ源氏物語』(新書館 2012年)

対応する教材    『源氏物語』
ページ数      200ページ
原作・史実の忠実度 ★☆☆☆
読みやすさ     ★★★★☆
図・絵の多さ    ★★★★★
レベル       ★☆☆☆☆

作品内容

 『源氏物語』54帖を1冊のマンガにした作品です。1帖が大体見開き1ページ程度でまとめられています。作品を忠実にマンガ化したというよりは、コミカルに『源氏物語』の大まかな流れを描いています。「こんな人にオススメ!」として、
・「源氏物語」全話を読んだつもりになりたい人
・興味はあるけど長くて難しいのでくじけそうな人
・“古典”という文字を見るだけで寝てしまいそうな人
が挙げられています。『源氏物語』初心者に限らず、古典初心者でも楽しんで読めるマンガです。

おすすめポイント  『源氏物語』はハードルが高い?そんなイメージはもういらない!

 何といってもかわいいイラストで描かれた登場人物たちです。髪型や装飾品、瞳の描き分け等により各登場人物たちの個性を描き出しています。本当の平安時代ならありえない容姿ですが、このキャラクターたちのかわいさが『源氏物語』に対する壁を取り払ってくれ  ます。「玉蔓」にて光源氏が六条院の女性たちに着物を配る場面は、本編の中で唯一カラーで描かれています。古典に出てくる色は名前が難しくて想像できないという抵抗をなくし、視覚的に入ってくるため光源氏が六条院の女性に対してどのようなイメージを持っているのかということもわかりやすいです。

 また、このマンガはギャグ要素がかなり多めです。須磨へ行ってしまう光源氏を悲しみのあまりメリケンサックで殴ってしまう紫の上など、どの登場人物もとても誇張して描かれています。このように面白おかしく描かれているので、古典作品は堅苦しそうで嫌だという人でも、笑いながら作品の世界に入り込んでいけるのではないかと思います。

授業で使うとしたら

 上述したように、かなり原作を噛み砕いているため、古典を初めて学ぶ学習者や 古典の授業に苦手意識があり、まず興味を持つところから始めたいという学習者に紹介して、古典作品への親しみを持たせる一助になる作品だと思います。

 例えば、授業で『源氏物語』を扱う際の導入として用いると、学習者の抵抗感を少し軽減して読解に入ることができるのではないでしょうか。おそらく学習者も、有名な長編古典作品を扱うことへの不安があるでしょうし、古典が苦手な学習者ならその不安に加えて消極性もあることでしょう。そんな学習者たちが少しでも興味を持って授業を受けることができるよう、冒頭で紹介してみても良いと思います。また、授業で『源氏物語』全編を扱うことはないと思うので、総括として本作品を紹介して、物語全体への興味を喚起するという手法も考えられます。古典が得意であったとしても、なかなか『源氏物語』全てを読むことは大変です。54帖を1冊のマンガで読めるというお手軽さが『はやげん!』の大きな魅力だと思います。


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