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『基礎からわかる 漢詩の読み方・楽しみ方 読解のルールと味わうコツ45』(鷲野正明)

忙しい先生のための作品紹介。第30弾は…

鷲野正明『基礎からわかる 漢詩の読み方・楽しみ方 読解のルールと味わうコツ45』(メイツ出版 2019年)
対応教材      漢詩
ページ数      144ページ
原作・史実の忠実度 ★★★★★
読みやすさ     ★★★☆☆
図・絵の多さ    ★★☆☆☆
レベル       ★★★☆☆

作品内容

 有名な漢詩についての意味やポイントを解説した参考書です。第1章で漢詩の歴史や、詩形・韻などのルールについて説明があり、第2章、第3章では、35首の漢詩について、鑑賞テーマ・白文・書き下し文、語釈と現代語訳、鑑賞のポイントと豆知識が各1ページずつ、合計3ページで構成されています。

入門書として位置づけられていますが、第1章では平仄や文学史など、踏み込んだ内容まで解説されているので、漢詩を学んだ後に読んでも理解が深まるでしょう。

おすすめポイント  漢詩鑑賞の足がかりとなる一冊

 本書のポイントは、それぞれの詩を鑑賞するポイントが簡単にまとめられている点です。例えば李白「静夜思」では、まず「遙か彼方の故郷のことを思い、しみじみと感慨にふける心情を詠った詩を鑑賞する」とテーマが書かれています。その上で、前半二句の風景、後半二句の感情、目線の動き、の3点について鑑賞のポイントが紹介されます。漢詩は、和歌で言う詞書にあたる箇所もなく、何が言いたいのかがわかりにくいものです。しかし、本書ではこの鑑賞のポイントや鑑賞テーマなど、さまざまな工夫により、漢詩が身近に感じやすくなっています。それでいて余白も多く、全体的に読みやすいのも特長です。

 また、各詩に関連する豆知識がコラムで紹介されており、「「月」と漢詩」、「閨怨詩」など、漢詩を読む際に必要な知識も併せて知ることができます。

授業で使うとしたら

授業では本文や現代語訳は必要ないでしょうから、鑑賞ポイントと豆知識が書かれたページだけを利用するとよいでしょう。また、冒頭の鑑賞テーマは漢詩を鑑賞する足がかりになります。さらに、豆知識のコラムは漢詩の世界についての教養を増やすのに用いることができそうです。

ちなみに、本文には白文と書き下し文が載っていますが、白文は旧字体、書き下し文は新字体・現代仮名遣いで書かれているため、本文を使う際、生徒に薦める際には注意が必要です。

【教科書掲載作品】(○印は主な教科書掲載作品)
〇贈汪倫(李白)
〇秋浦歌(李白)
〇春望(杜甫)
・曲江(杜甫)
・汾上驚秋(蘇廷)
○登鸛鵲楼(王之渙)
○鹿柴(王維)
・辛夷塢(王維)
○絶句(杜甫)
○春暁(孟浩然)
○春夜(蘇軾)
・鄂州南楼書事(黄庭堅)
○山行(杜牧)
〇望廬山瀑布(李白)
・峨眉山月歌(李白)
・望天門山(李白)
〇江南春(杜牧)
・秋思(劉禹錫)
・暮立(白居易)
・客中初夏(司馬光)
・初夏即時(王安石)
・独坐敬亭山(李白)
・子夜歌(子夜)
〇静夜思(李白)
・玉階怨(李白)
・中秋月(蘇軾)
・送別(魚玄機)
・除夜作(高適)
・春夜洛城聞笛(李白)
・蘇台覧古(李白)
・春行寄興(李華)
・塞下曲(常建)
・偶成(朱熹)
〇早發白帝城(李白)
〇黄鶴楼送孟浩然之広陵(李白)
・臨洞庭(孟浩然)
・春日憶李白(杜甫)
〇八月十五日夜禁中独直対月憶元九(白居易)
・酌酒興裴迪(王維)

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