見出し画像

「はじめに――『徒然草』を手がかりとして」(鈴木健一『知ってる古文の知らない魅力』より)

忙しい先生のための作品紹介。第44弾は……

鈴木健一『知ってる古文の知らない魅力』「はじめに――『徒然草』を手がかりとして」(講談社現代新書 2006)
対応する教材    『徒然草』「つれづれなるままに」
ページ数      11ページ
原作・史実の忠実度 ★★★★☆
読みやすさ     ★★★☆☆
図・絵の多さ    ★☆☆☆☆
レベル       ★★★★☆
生徒へのおすすめ度 ★★★☆☆

作品内容


 古典の授業で登場する有名な話について、他の作品との関連や文学的特徴などについて深堀りした一冊。本書のテーマは「文学作品は過去の作品から影響を受け、未来の作品に影響を与える」というものです。

 序章である本章では、それを『徒然草』を例に説明しています。具体的には、『徒然草』冒頭の「つれづれなるままに~ものぐるほしけれ」の部分について、『和泉式部集』、『堤中納言物語』、『讃岐典侍日記』、『西鶴織留』に類似表現があることが紹介され、「つれづれなり」や「ものぐるほし」といった言葉が他の作品でもよく用いられた一般的な表現であったことが述べられています。

おすすめポイント  「つれづれなるままに」には元ネタがあった?

 『徒然草』の冒頭に類似表現があるとは、知らなかった人も多いのではないでしょうか。「思いつくままに、何でもないことを書き留める」という、どこにでもありそうな言葉でも、さまざまな作品の中で類似表現が繰り返されているという事実にはちょっぴり感動を覚えます。

 学校の授業では、生徒は古文の意味を理解することが至上命題になりがちです。しかし、本書のように他の作品との関係を考えるのは、文学研究においてもっとも基本的なことの一つです。本書を読むことで、現代語訳の先にある文学の世界を垣間見ることができます。

 また、前の時代の表現を継承、発展させて新たな表現を作る、ということは、言葉の営みそのものです。古典を作品単体ではなく、前後の作品と結びつけて考えるという視点は、私たちに大きな示唆を与えてくれます。

 序章ということもあり分量は短いですが、内容は筆者の意図を説明するには十分です。そのため、一冊読む時間がなくても、この箇所だけ読めば筆者の主張がわかる、というのもよいポイントではないでしょうか。国語の授業を考える上での視点も得られるかもしれません。

活用方法

 本書が目標としていることは大学レベルです。そのため、授業でそのまま使うというよりは、学習後に生徒に「気になったら読んでごらん」と勧めるような形が使いやすいでしょう。あるいは、授業での雑談のタネにはなるかもしれません。内容は難しいものの、かなり平易に説明されているので、レベルは4にしました。どちらかというと先生の勉強用、あるいは小ネタ集めに使いやすい一冊です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?