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『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』(森晶麿)

忙しい先生のための作品紹介。第33弾は……

森晶麿『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』(スマッシュ文庫 2011 年) 
対応する教材    『おくのほそ道』 
ページ数      272 ページ 
原作・史実の忠実度 ★☆☆☆☆ 
読みやすさ     ★★★☆☆ 
図・絵の多さ    ★★☆☆☆ 
レベル       ★☆☆☆☆ 

作品内容 

 『奥の細道』の作者をモデルにした主人公・松尾芭蕉と付き人・曾良が、僕(ゾンビ)討伐の旅路を行くファンタジー。各章の最後には松尾芭蕉の実際の俳句があり、物語上の設定に合わせた架空の解釈が書かれています。芭蕉が生きた元禄時代が舞台であり、井原西鶴や近松門左衛門、生類憐れみの令を出した徳川綱吉など、同時代の人物も登場します。

おすすめポイント ライトノベルで読む 芭蕉の都市伝説


 物語では、芭蕉は伊賀忍者であり、江戸幕府からの指令で町中に大量発生したゾンビの偵察・討伐を命じられ、その道中で出会った事柄を俳句に読みながらミッションを遂行します。
 この設定は、実際に松尾芭蕉が伊賀生まれだったことに由来しています。史実は定かではなく憶測の域を出ませんが、実は伊賀忍者として江戸幕府の指令で各地方の偵察を命じられていたのではないか、という説があるのです。俳諧師という肩書はカモフラージュだったのではないか、と言われています。その点をふまえて読むと、都市伝説がストーリーに昇華されている点をおもしろいと感じられるかもしれません。

授業で使うとしたら 


 本書はファンタジーであり、やや不健全な描写もあるため、授業で用いることはあまりおすすめできません。また、ストーリーの流れの中で俳句が出てくるため、該当箇所のみを抜き出して読むことも難しいでしょう。
 それでも、実際の俳句が多く載っていること、教科書でよく用いられる冒頭や「平泉」の章段もあるのは注目です。本文の流れと俳句の意味が両方ともわかっていれば、それぞれの句がきちんと各場面に適合していることがわかるでしょう。ライトノベルが好きな生徒には、「気になった句の意味も調べてみてごらん」などとおすすめしてみてもよいかもしれません。

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