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『ガリーボーイ』試写

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アスミックエース試写室にて『ガリーボーイ』を鑑賞。

 インドのスラム街で生まれ育った青年がラップで人生を変えていくという話。ラップ監修はいとうせいこうさんということだが、試写の時点ではまだ出ていなかったので日本語の字幕でのラップでの自分は直訳というかライム感のあまりないものだった。宣伝のせいこうさん監修の字幕を見た方が全然違う感じになっていると言われていたので、公開されて観にいくと大丈夫そう。


カースト制度という格差社会の底辺にいる主人公・ムラドがラップに目覚めることで次第にその不自由さから抜け出そうとするものである。インドではSIMフリーのスマホが出回っていてWi-fiも充分みたいらしい。だから、YouTubeにラップなどを上げることで人気者になっていく。CDもデジタルデータも買えないとしたら名を売る方法はそれしかない。

同時にこの映画では富裕層の暮らしも出てくる。スマホに格差社会となれば、インドが舞台でも日本と差異をあまり感じない。ヒンドゥー教だったりなど宗教上の理由などは今作ではさほど大きくないためか、より違和感は少ない。今、世界中ではそれまでの文化や宗教上の違いがあったが、スマホとネットによって限りなく近いものになっていると思える。実際のところそうなのだろう。


上映時間は二時間半ほどあり、気持ち長い。ラップの仲間と出会ってレコーディングして、自分たちでMV作って、ラップバトルに出てという流れなのだがもっと端折った方がいい、そうじゃないならNetflixで公開されている『アトランタ』みたいな連ドラにしたほうが見やすい。

ムラドの彼女役の医学生のサフィナはすごく美人だが気が強い、途中までかなりなサイコ野郎、メンヘラつよと思っていたが一番人間味はある。彼女は裕福な家だが、インド社会の世界で生きづらさを感じている。わがままだけど、自分が信じるとすぐに行動するタイプ。もうひとり出てくる女性キャラのスカイもいいキャラで、彼女もかなり裕福な家柄だ。彼女はアーティストとしてムラドと接するために格差や生まれは関係ないと言い切れる。それは彼女が上の身分にいるからであり、底辺にいるムラドはそう言われることに安心もするが、そのせいでよりそれを感じているように見えた。


インド映画でヒップホップを取り扱っているとなると日本だと客層が見えづらいという部分はあるだろう。ハードコアだったりヒップホップがすごく好きという人にはどこか緩く感じられる部分もあるだろうし、一般的な層に届けるにはニッチだ。どういう宣伝を取るかはかなり大事だろうけど、日本はこのままどんどん格差が広がっていくから5年とか10年ぐらいしたほうがリアリティは増す可能性があると思う。

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