Happy Days from the bathtub 浴槽から想ふ幸せな日々

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2020年はたくさんの大きな予期せぬ変動がありました。
収入が減る、一年の予定がガラリと変わる、周りと反して収入が増える、必死の処置をしても次々と重症患者が運び込まれてくる、それを嘲笑うかのようにコロナは終わったかのような顔をして遊びにいく様子の投稿が溢れるSNS...

世界のどこに行っても逃げ場がない。
誰のせいでも自分のせいでもないのに、言葉にならないもののはけ口がない。
気持ち悪い。
人間の適応能力すごい。
埋もれたい溺れたい。
転機だ革新だ。

様々な思いを、2020年は今までの固定概念を見事に人々の目の前でこれ見よがしに砕き、物質的なものではなく目に見えない何かが軸となるような世界を作り出している。

意味のあったものが新しい時代では意味を持たなくなる。
まさにこの世界が不条理性に染まっていく。

だからこそ、
2020年悩んで苦しんで思い詰まって絶好調で転機もあって息をし続けた人間たちにこそ、不条理演劇は響くと思うのです。

不条理演劇のルネサンス(再生)の時代がくるのです。
サミュエルベケットの作品が再び人々の目に触れて、
サミュエルベケットの世界観がこの大変動で疲労した心にとって味方になるような芸術になると思うんです。

浴槽版「しあわせな日々」はサミュエルベケットの原作をもじったものであり、沿ったものであり、色々な伏線も個人的に隠しました。

二日酔いで朝を迎えた女の話にも見えるし、コーヒー狂の浴槽を基地として世間から隠れて過ごす人間の話、ソーシャルディスタンス、独立毒立。

自由に気楽に真剣に分析もあり。作業中のBGMもあり。


一つだけ真剣に聞きたいことがあります。
コーヒー缶の中にコーヒーが入ってるってどうしてわかる?




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原作:サミュエルベケット「しあわせな日々」解説

不条理演劇を代表する劇作家、小説家、詩人。人間、現代の人間の不条理さや不毛性を描く演劇、創作活動。代表作「ゴドーを待ちながら」

不条理演劇の特徴としては;
-登場人物の行動とそれにより起こりうる出来事、またその存在そのものが、およそ関係なし、曖昧なものになる。
-登場人物のいる環境や状況は初めから行き詰まっており、閉塞感に包まれている。
-登場人物たちはそれに対して変化を望むが、もともと行動と結果の因果関係が切り離されているこの世界では変化を望むことへの合理的解決方法はなく、空間を埋めるだけの会話や不毛で無意味な行動の中に沈み、泳ぎ、埋まっていく。
-話はいわゆる起承転結を完全無視進行し、非論理的な展開や話の転換がある。そして世界に変化を起こそうという抵抗は意味もなく終わり、状況の閉塞感はより閉塞的なものになっていく。

言語、言葉がほぼなんの力も効用もないことも特徴の一つだ。
意味を持たない世界で意味を探すこと、意味のあるものを意味のない世界でどんなに一生懸命雄弁に口からこぼれ出しても圧倒的なその世界の存在に埋もれてしまうのだ.

この「しあわせな日々」という作品は一時間半ほどの二人芝居である。
(英語での上演→ https://youtu.be/I3y_5WfHkCY )

主に主人公ウィニー夫人が永遠にほぼ一人台詞を続ける。対して夫のウィリーは言葉をほぼ発さず、ほとんど隠れている。何よりも特徴的なのはウィリー夫人が砂漠の真ん中で胴まで埋まってしまっているところから始まり、芝居が進むにつれ、最終的には首まで埋まってしまい、手も使えず、動けなくなってしまうことであろう。

なぜ埋まってしまったのか、これからどうするのか、何食わぬ顔でこれからも日常生活、歯磨き、化粧、誰かが受け止めてくれると期待して数打てば当たるように言葉を発し続けるのか。

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