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(34) 通勤時間が爆長くなったので毎日本を一冊ずつ読むことにした

 通勤時間を利用した読書記録です。読んではいるのだがあまり書けないターンが来ていて、久しぶりの投稿になってしまった。ホットクックを買ったり自転車を買ったりユニクロユーのSS商品を買ったりして過ごしていた。

191. 小児期トラウマと闘うツール――進化・浸透するACE対策

 ずっと読みたいと思っていた本がkindleで安くなっていた(2200円→499円ってやばくない!?)ので購入。小児期に子どもが抱えるトラウマがどれだけ心身に大きな影響を及ぼすか、またその子どもが大人になった時に虐待のスパイラルを止めるにはどうしたらよいか というテーマの本。事実だけを述べている論文という向きではなく、著者が自分の医院を立ち上げる経緯や、世間の反応によって辛い思いをしたことなども書いてあるので、「医者の書いた読み物」という分類にしたほうが正しいと思う。だけど素人には十分理解できるレベルで知識もインプットできる本。
 ざっくり、要はACEスコア(小児期逆境体験のスコア)が高ければ高いほど疾患を抱える可能性が高くなるという話なんだけど、わたしは巻末のACEスコアの計算表を試してみたらスコア4だった。スコア4以上になると、0の人に比べて、喫煙者の割合2倍、虚血性心臓病になった割合2倍、肺気腫・慢性気管支炎の割合4倍、アルコール依存症の割合7倍、薬物依存の割合10倍、自殺を試みた割合12倍、平均寿命が20年短いらしい。そんな生まれながらにして爆弾を抱えて生きてるみたいなこと、あるんだね〜(絶望)。でも、一つ救いだなと思ったのは、ストレスを緩和するためにこの著者がクライエントに推奨している6つの項目であるところの「睡眠、運動、栄養、マインドフルネス、心の健康、健全な関係」は全部いまちゃんと気をつけられているということ。あと、とにかく、そういう環境で育った人たちにはストレスを溜めないようにするように促しているというようなことも分かって、わたしはこれからも自分を(自分ではちょっと「やりすぎかも」と思うくらい)大事にし続けようと思った。

192. 私家版 差別語辞典

 『被差別の食卓』『被差別のグルメ』から引き続き、同著者の本。この人の本を読んだ後に桃鉄をやったら、堺の「かすうどん屋」の意味が分かって感動した。アブラカスの入ったうどんのことかー!! つくづく桃鉄はいいゲームだなと思った。(そこ?)
 辞典とはあるが、後半はほぼ著者のエッセイ。ホームレスの人の実家に行って家族と話してくるとか、すごいエピソードがいっぱい出てきて面白い。こういうたくさん移動してたくさんご飯を食べてたくさん人と話す人が羨ましいが、わたしは「そっち」ではないんだよな〜と読めば読むほど思わされる。パソコンが苦手だから語句登録ができないというところにはクスッときた。登録してあげたい。

193. 教師の心が折れるとき 教員のメンタルヘルス 実態と予防・対処法

 図書館で借りた。対教師を専門にしている臨床心理士が書いた、教員に対するメンタルヘルスケアの実態と予防・対処法を示した本。薄い本だし、文字も大きいので、いますでに心が折れている人もなんとか読めるんじゃないかと思う。
 「『24時間教師』でいなきゃいけない人が多くて過重労働になりがち」というような指摘があって、本当にそうだよねと思った。あと行きすぎた要求をする保護者対応について事細かく解説されていて、教員の方々マジでお疲れ様です……と思った。あと「対応困難な方々の特徴」というところは納得しきり。事実が事実でなくなっちゃう人ね。わたしの同級生や友人の中にも教職に就いて辞めている人が何人かいるけど、あんな大変な仕事わたしにはできないだろうなって思う。どうかみんな健やかに過ごしてほしい。
 違う話になるけど、この本の中で「消費が一気に増えたあとで鬱の症状を訴える人が多い」というようなことがあって、いまホットクックやら自転車やらユニクロユーのSS商品を買ったりしているわたしは恐怖に慄いた。

194. 少女売買: インドに売られたネパールの少女たち

 図書館で借りた。ネパールの女性がインドに人身売買され、HIV/AIDSになってしまう現状がある。その女性たちを助ける活動をしているフリーライターの方が書いたドキュメンタリー。発売日が2014年とあるけど、それより書かれたのはかなり前のことで、元になったものは2008年新潮ドキュメント賞受賞作品のよう。今の街の様子はどうなのかな、と読み始めてまず思った。
 そして環境が整備されていないということは辛すぎると思った。この人たちに『FACTFULNESS』とか読ませてもマジで何も響かないだろうな。そもそもあれは恵まれた環境に置かれた人たちのために書かれた本だけど。(どうでもいいことだけど、あの本が日本でヒットしてるのは、「俺たち、まだ『先進国』だよね?」って震えてる人たちの心を癒してくれるからだと思う。これもいい本だと思うけどね。)
 ルポやドキュメンタリーあるあるの「描かれる人の容姿や振る舞いをことさら印象的に描くことで性的消費をする」のが一切なくて、読んでいて気持ちよかった。ひどいことを経験した女性たちに著者は懸命に寄り添っているんだけど、どこか一歩冷静に引いて見ているというか、過剰に気持ちを乗せてこないというか。ただ女性の書いた性的な事柄のドキュメンタリーあるある「著者の経験や生い立ちがいきなり語られる」はやっぱりこれにもあった。なんなんだろうな、これ。風俗で働く女のルポを書く男の本には絶対ない筋なんだよね。別にいいんだけどさ。
 先述の通り、古い本だったので、今も活動されているのかしらと思ってネット検索したら、いまもwebサイトは更新されていて、わたしもわたしのやるべきことを継続してやっていこうと思った。

195. 推し、燃ゆ

 芥川賞受賞おめでとうございます! この著者の本は初めて読んだんだけど、天才すぎて眩暈がした。世の中にこんな面白いものを書く人がいて、読める環境にあるなんて幸せだ。
 これ、すごく平たく言えば「アイドルの推しが炎上した話」なんだけど、それ以上の深みがいろんなところにあって、読んでいると身体と心のいろんなところがねじれそうになる。発達障害とかそういう感じなのかな、主人公は医師に何か病名を宣告されていて、人がスムーズにできるようなことが全然できない若い女性。できないながらも頑張っていたバイトもシフトを出すのを忘れたり無断欠勤が続いたりして辞めさせられてしまうし、高校も中退しちゃう。でもパソコンの予測変換を使えば情緒豊かなブログも書けて、推し仲間もできる。でも地下ドルと繋がりたい友人とは違って、自分はあくまで遠くの推しを解釈して生きていく存在。でも推しが「燃えて」、それは解釈できない主人公……。自分の解釈の限界にぶつかるオタク、辛すぎる……。
 SNSの描写もとてもリアルで、ていうかわたしの世界じゃん?と思って、文体が移りそうになるくらい興奮した。いやーーこれが読めるなんてわたしは本当に幸せだ!! ありがとうございます!! Twitterの澱となったみんな、読んでくれ。

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