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自由とは何か―法律学における自由論の系譜 (現代憲法理論叢書) (著者 遠藤比呂通)

https://goo.gl/f9PzLh

著者は、東京大学法学部助手として故芦部信義教授に師事した憲法学の研究者、弁護士。

社会科学の研究者の仕事は2つある。

1.問題を定式化し、論点を整理、それぞれの論点について立場の違いを説明し、考えるための見通しを提示すること。

2.異見を提示すること。

この著作は後者の仕事だ。

後者の場合、異見と同じくらい重要なのが、どう問いを立てるかだと思う。

この本で著者の立てる問題は大きく本質的だ。
それは、
「人権を侵害された人は憲法の規定を根拠に裁判所に救済を求めることができるか?
もし、できるとして、裁判所は救済のため必要な場合には立法的判断にまで踏みこむことはできるか?」だ。

(ただし、著者は以下の定義を考えている)

「一般的自由」:国家権力から強制されることができるだけ少ない状態

「人権」:「一般的自由」のうち憲法典によって特別に保護されているもの

第一部で、自由が侵害されている場合として、3つのケースを示した後、
著者は、この問いに答えるため、以下の問いを立てる。

1「一般的自由」はなぜ保護されるべきなのか

2「一般的自由」を現実の社会で実現・保障するためにどのような条件が必要か

3 2の条件を満たすためには、憲法41条(立法権)と違憲立法審査制はどう解釈されるべきか

そして付随する問題として、裁判官の有権的解釈とは何か、判例の先例拘束性とは何かについて考察する。

この本は法律学の知識を前提としていないが、決して読みやすい本ではない。

それは、以下の理由によると思う。

法律学の文体の特徴だと思うが、事実と意見、意見である場合に分析・説明なのか価値判断なのかが必ずしも明瞭な形で区別して述べられない。

この本が著者の膨大な先行研究との対話の結果書かれたものだから。

それにも関わらず、私は人権に関心のある人、法律に関わる人に読んでほしいと思う。

著者と問題を共有し、対話してほしい。

そして、あなたはどのような法制度のあり方を選ぶのか、考えてほしいと思う。

最後にこの本のあとがきから一節を引用する。
「人間の意思が作り出した目に見えるもの以外にそのようなものを支えている人間の尊厳とか
個人のかけがえのなさを本当に自分のものにできる人の数はそう多くはない。
しかしさらにもっと少ないのは、このような理念の空中楼閣にとどまることなく、
日々の暮らしの中でそれを実現する手段を現実に根ざして考えていく人々・・・であると思うからである。」

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