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私が私であれるように

ショートヘアが好きでした。
短く切られて、コテの必要がないくらいのショートヘアが好きでした。ショートヘアの女の子を見ると目で追ってしまうし、自分も少し前まではショートヘアでした。似合っていないのは分かっていたけど、それでも月に1回美容院に通いました。だって、ショートヘアが好きだから。それに、髪の毛が短いだけでかなり楽なのです。

不健康な生活が好きでした。
夜更かしをして、お腹がすいたら菓子パンを食べて、しょっぱいものが欲しくなって夕飯の残りをつまむ。夜中なのに全然眠たくなくて、急に降りてくる写真の構図やシチュエーションをスケッチブックにひたすら描いていました。そうして、自分の好きが紙1面に溢れるとなんだか安心して、だんだん眠気が襲ってくるのです。

今までは、そんな自由な私だったのです。

でも今は、違います。
髪は伸ばすし、健康的なのです。
アイデアスケッチをしようとしても、時間だけが過ぎていくばかりで、紙はずっと白いままです。

恋をしてしまったのです。
女になろうと髪をのばし、肌を綺麗にするために健康的になり、なんだかいつも上の空な私になりました。

ずっと、好きな人が欲しかった。恋をしたかった。恋をしている女の子って、どうしようもなく魅力的ですから、私もそうなってみたいなぁなんて、思っていたんです。

実際に恋に落ちてみると、想像しているより素敵では無かったです。
こんなに女の子な私は、私じゃない。長くなった髪と、つやつやのお肌。これに費やす時間は、一体なにに捧げているのでしょう。
それは彼のため、なはずだった。ただ1人に振り向いて欲しくて、私は変わってしまったのです。
でも、彼はこっちを見てくれません。

恋をしている女の子が魅力的なのは、誰かを想って変化しているから。
私が好きな自分は、自分の"好き"を大事にする女の子らしくない自分。
じゃあ、"好き"だと思った人の為に、自分の"好き"に費やす時間を減らす私は、すき?きらい?

正直、好きな人が居ない時の方が充実はしていました。必要なことをしっかりこなすことが出来たし、上の空なんてことは無かった。自分を大事にできていました。
でも今は、好きな人が居ます。好きな人が居ない時の自分が恋しいし、忘れたくは無いです。それでも私は彼のことが好きで、当分髪を切ろうとは思わないのです。

これでいいのか分からないし、自分がどうしたいのかも分からない。ただどうしようもなく、彼が好きです。

ゆらゆらと変化してしまうけれど、それでも私が私であれるように、心の奥底に自分の"好き"を散りばめておきたい。ただ願うのは、貴方から見る私が、恋をしている魅力的な女の子でありますように。そしてその裏側には、自由で楽しい私が変わらずに居座りますように。

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