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君が泣きたくなる夜に

いつの話だったか、思い出したくもないが。私がめそめそ泣きながら夜中に君に電話をして、困らせたことがあった。

電話を好まない私の事であったから、随分困惑したのであろう、連絡をいれるとすぐに反応が返ってきた。

内容は「自分が不甲斐ない、このままじゃ駄目なのに…」というような、今思えばしょうもねぇ弱音吐きだったが、当時の私にはどうしようもなく逃げたい気持ちだったから、電話に出てくれて本当に助かった。高確率で夜中に起きている君とはいえど、夜中にそんな電話に出たくはないだろう。

それでも君は耳を傾けた。日本語の文法をフル無視している私の言葉を、ちゃんと全部拾い上げて受け止めてくれた。それがなんだか嬉しかった。さぞ解読が難しかっただろうに。

多分私はその時、初めて私をさらけ出した。

いつからか、否定されるのが怖くなった。自分が傷つかないように、相手の表情を見て、言葉を読んで、合わせる。そうしているうちに顔面に愛想笑いが染み付き、自己がわからなくなって、はじめましての人に自分を説明する方法が分からなくなってしまった。

そんな時に隣にいたのが君で、私を引き出してくれたのも君だった。君がいなければ高校時代の私は居ないし、大学に通えていたかも分からない。

正直、大学で上手くやっていると自信を持って言えないし、愛想笑いは相変わらずだ。それでも頑張ろうと思える私がいるのは、君が私を支えてくれていたからだし、君も近くで頑張っているからだ。

君と私は正反対に位置している。君は明るくて素直で楽しい人であるけど、私はいつも感情を抑えてしまう。恋愛の好きなタイプも驚くほど反対で、君が好きになるタイプは大抵私の苦手なタイプだ。

正反対であるからこそ、上手くやっていけているのだと思う。自分と似ている人と話すよりも、君と話す方がしっくりくる。私はこの感覚を感じるたびに、パズルのピースをイメージする。

君にだから私は感情を出すことができるよ。素直に話すことができているよ。君は知らない間に、私を私らしくさせている。なんでもないような顔をして、私を救っている。

だからこそ、君が泣きたくなる夜には私がそばに居たい。私にどれくらいの傾聴力があるかは分からないけど、今の私ならどんなことを言われても受け止められる自信はあるよ。

私にとって泣ける相手が君であるように、
君にとって私が泣ける相手でありたい。
お互いにケアしながら、
でも確実に。大人になっていけたらいいな。

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