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何一つ当たり前でない結婚式の空に、強くかかった虹を私は忘れない。

2021年春。
式場を成約してから1年8ヵ月後の日、私たちはついに結婚式を挙げた。

終わってから1ヵ月以上が経った今日、やっと式場からひきあげてきた荷物を片付けたので、このタイミングで気持ちも整理しておこう。

一度の延期後、引き続き厳しい世の中の状況で臨んだ結婚式を終えた後の
率直な気持ちは、“ついに終わったんだ”という骨組みだけの実感だった。

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直前まで挙行できるか悩み続けていたせいか、当日の朝も、支度の最中も、“今、自分は結婚式をしているんだ”という実感が湧かなかった。

家族や友人の顔を見てほっとした気持ちになっても、感極まって泣くことがなかったのは、特別な状況下で迎えているこの日を無事に“やりきらねば”という思いが、無意識に働いていたのかもしれない。

“挙げられるだけでしあわせ”、“会いたい人に会えるだけでしあわせ”だから
それ以外に望んだのは、ゲストに楽しんで帰ってもらうことだけだった。



チャペルに入場するとき、会場上空の天気は大雨だったのでギリギリ濡れない位置にスタンバイした。
強い風に乱れるベールを何度もメイクさんが直してくれたがとても間に合わず、最終的に両脇に少し挟んだ状態で入場した。

ドレスの裾を何度も踏みながら歩いた。顔色だけは変えないように気をつけたが内心は焦りと「やってしまった…」という思いでいっぱいだった。

あっという間に式は進み、退場の時になった。
やっとゲストに笑顔で応える余裕が出たので、楽しみながらチャペルの外に出ると、入場時の大雨が嘘のように晴れ空が広がっていた。
(後から夫の友人に聞いた話だと、晴れ間が広がっていたのは私たちの正面だけで、式場の壁を一つ挟んだ向こう側は雨が降っていたそうだ。)

そして、未だに信じられないような話だが、虹が出ていたのだ。

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偶然、たまたま見事なタイミングでかかっただけの虹だけど、特別な意味に捉えられずにはいられなかった。不安だらけで迎えた“ハレの日”を、空がやさしく見守ってくれているような気がした。

その後の披露宴もスムーズにプログラムが進み、無事結婚式を終えることができた。

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2020年秋に予定していた式を延期してから当日を迎えるまで、
正直ポジティブではいられない日のほうが多かったと思う。

毎日変わる世の中の状況を見るたび、何が正解なのかわからなくなった。
何度も「コロナ禍で結婚式を挙げる意味」を考えた。

当初85名を予定していたゲストの数は、55名になった。
まん延防止等重点措置のため、2日前に種類の提供ができなくなった。
写真撮影時以外はマスクの着用。歓談時も歩き回ることはできない。

それでも、自分たちが結婚式に込めた思いやコンセプトは、ゲストの方々にしっかり伝わったようだ。正直、当日はゲスト一人ひとりの反応を見ることはできなかったが、次々とかけてもらった声や届いたメッセージから、ちゃんと感じ取ってくれたのだと確認することができた。


ずるい言い方になってしまうが、結婚式に正解はないと思う。最大限の対策をして挙行することも、様々な理由から中止・延期することも、どちらも間違いではない。

どのような選択をしても、誠実な気持ちで向き合っていれば、きっと伝わる。そう思わせてくれたあの日の虹を、私は忘れない。

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