多くの組織において、中間管理職が直面する課題の一つとして「優先付け」がある。
ビジネス環境や会社の方向性、そして売上へのインパクトを踏まえて、どのプロジェクトを優先するのか、どのプロジェクトを捨てるのかを判断する必要がある。チームメンバーおよび自らの限りあるリソースをどのように投資するのかは、マネージャーの複雑な意思決定と言えるだろう。
ここでは仮に以下の条件で、どのようなプロセスでChatGPTと対話を重ねて、この「優先付け」の意思決定をしていくべきなのかを試していこうと思う。また、インプットの細かさによってChatGPTのアウトプットがどの程度変わってくるのかも考察していきたい。
シミュレーションの条件
想定する状況を以下のものとする。
オンライングループウェア販売企業のマーケティング部門の中間管理職として、今年の下半期に実行するプロジェクトを決める。
営業部門は、エンタープライズ営業部門、リセラー営業部門、SMB販売部門の3つに分かれている。
下半期6ヶ月における、マーケティング部署の予算は200,000米ドル。
マーケティング部署は自分を含めて5名で構成されている。
チームメンバーA(自身):マーケティング部門のマネージャー。プレゼンテーション資料作成の経験が豊富。
B:ホームページデザインスキルを有する。バナー広告やソーシャルメディア投稿など、クリエイティブ制作も得意。
C:市場調査経験、データ分析スキルを有する。戦略立案ができる。
D:マーケティングライター。コピーライティングやメール作成が得意。外注先とのやり取りが得意。
E:営業経験がある。展示会出展やウェビナーなどを主催できる。
各部門から来ているリクエストは以下の通り。
エンタープライズ営業部門
大企業向けにカスタマイズされたプレゼンテーション資料の作成
「お客様成功事例」の作成。プレゼンテーション資料上やエンタープライズ向けウェブサイトでの展開
リードジェネレーションのための、テクノロジー業界の展示会やウェビナーへの出展
エンタープライズ企業向けニュースレターの頻度を月1回から週1回に
リセラー営業部門
A4 8ページの製品説明パンフレットの作成
革新的なリセラーを表彰するアワードイベントの実施
SMB営業部門
製品ラインナップおよび価格体系の見直し
「お客様の声」動画の制作
インフルエンサーキャンペーンの実施
ホームページのリニューアル
また、各部門のビジネス状況は次のとおりと仮定する。
・エンタープライズ営業部門
最も新しい営業部署。現在の売上は最も小さいが、昨年は150%の成長率を記録した。今年は年率120%の成長率が求められている。製品販売単価は最も大きいが、契約のために営業リソースを必要とする。
・リセラー営業部門
長期的な売上へのインパクトが期待できる。既存で販売契約しているリセラーの数は10。今年はこれらの代理店の売上を20%伸ばすこととが求められている。また、新規でのリセラーを2社獲得することが目標。
・SMB営業部門
継続して売上が見込める、いわゆるCash Cow。現在の売上は最も大きいが、今年の成長率は一桁台にとどまる見込み。大きな営業リソースは必要ではなく、営業部門の人数も最も小さい。
何も条件を入れずに、優先順位をしてもらうとどうなるか
まずはじめに、細かい条件を何も入れず、リクエストが来たものをそのままChatGPTに転送し、どのようなアウトプットが来るかを実験してみる。
ChatGPTの返答は以下のようなものだった。
中途採用面接などで与えられた課題ならば合格点を取れるレベルではないだろうか。一般的な考え方ではあるが、どのような影響が直接的あるいは中長期的あるのかと言う視点や、戦略的重要度といった視点を入れて、暫定的な答えを出しているのがわかる。
背景、具体化、デモの提供によって何が変わるのか
ChatGPTのアウトプットは、「具体化」「背景」「例の提示」といった要素によって、自分が望むものに近づけることができる。これら要素を入れることによって、アウトプットがどう変わるかを見ていきたいと思う。
まず、最小限のインプット、背景を一つ加えるとどのように変わるかを実験してみる。
アウトプットは長くなるので全ては割愛するが、リセラー営業部門のアウトプットに変更が見られた。さらに、「高コストが見込まれるが」という一文が追加されていることがわかる。
次に具体化である。チームリソースの状況を踏まえて再度アウトプットを吟味してみる。
エンタープライズ営業部門について、各チームメンバーのスキルを活かすことで変更が提案されている。プレゼンテーション資料の作成が最も高い優先度となっている。
さらに、ビジネス状況についてのインプットを加えるとどのようなアウトプットが出てくるかを見てみよう。
ChatGPTのアウトプットを自分が望むフォーマットに整形する
ここまで、条件を加え続けることでアウトプットを最適化してきたが、優先付けが各部署ごとにまとまってしまっているのを課題と感じている人もいるのではないだろうか。このようなケースでは、デモンストレーションを一つ提示することが有効である。
この後のプロセスとしては、社内の関係営業部署に優先付けを説明すること、チームメンバーといっしょに現実的なフィージビリティを確認すること、といったところだろうか。この先はAIではなく、人間が判断する領域に入ってくると思う。
少なくともいまのところは。