有名大学でなぜ、このようなことが起こるのか!(日大、「抜本的な改善策を断行」 理事長辞任を正式発表 朝日新聞 12月3日)
日本大学は3日、脱税容疑で逮捕された田中英寿容疑者(74)の理事長辞任をホームページで正式に発表した。また、3日に開いた理事会で、田中容疑者について理事から解任したことも明らかにした。
発表によると、1日の臨時理事会では、田中容疑者からの理事長辞任の申し出を了承。加藤直人学長の理事長兼務も決まった。また、元理事らによる2件の背任事件について被害届を出す▽全理事が辞任する(新体制成立まで職務は継続)▽記者会見を開いて事態について説明する――ことなども決定。3日の理事会では、理事の業務執行を監査する法人監事からも辞任の申し出があり、辞任が決まった。
日大はホームページで「重要なことは本学の体制変革であると信じ、抜本的な改善施策を断行する。大学の名誉回復、学生、生徒、保護者、校友そして教職員全員が誇れる大学づくりを進める」などと説明している。末松信介文部科学相は、加藤学長らが1日の臨時理事会後に文科省を訪れ、田中容疑者の理事長辞任などを報告したことを3日の会見で明らかにした。(桑原紀彦)
日本大学のこの不祥事は、ある種、人間の性とか業とかをよく表しているように思う。ある閉鎖された世界のトップに立ち、権力を集中させた者は、自浄作用も自己言及的な態度も何もなくなり、自分に歯向かうものを全て自分の前から排除していく。それが、人間の性や業なのだ。大きな権力を持った人間は、第三者的な視点を忘れ、自分の見ている世界だけに固執するものだ。
事理長であった田中容疑者は、数年前のアメフトの試合で、日本大学が起こした事件に対して、全く説明責任を果たさなかったわけだが、その時も異常な対応だった。学内から、理事長に対する対応の批判が全くと言っていいほど出なかった。そして、その当時の理事長の態度は、我関せずというものだった。
高等教育機関である大学で、ルール無視の、それもスポーツではあってはいけない動機に基づいた行為を行った日本大学のトップが、何も人間的な発言をしていないのだ。
教育の一環としての部活動での出来事なのに、全く教育的な反省もなく、理事長は、押し通した。学内では、この理事長の態度を批判する声があったのかもしれないが、全く表には出なかった。理事長は何をやっても許されるということの象徴的な出来事だった。まさに、その世界での権力者として対応だったのだ。社会に開かれてはいないものだった。
今回の事件も、理事長の権力集中に起因したものだ。このような事態になぜなったのか。日本大学のガバナンスはどうだったのか。ぜひ、検証してほしい。改革を断行しても、また新しい権力機構を作ってしまわないようにすることだ。
理性も知性も十分にあるはずの高等教育機関なのだ。盲目的な大学運営を許すことのないようにしてほしい。受験生のためにも。
【教育記事から教育を考える】
2021年12月10日(金) VOL.717
作者:中土井鉄信(教育コンサルタント・合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ代表)
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