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アンケートとその結果の誤差を知る。

タイの日系企業へアンケートを実施しました。

先日タイで日本人なら一度は手にしたことがあるビジネス雑誌「ArayZ」さんと共同で調査を実施しました。

日系企業のタイ進出後の頻出トラブルに関する調査」

と題しタイの日系企業に対して「トラブル」に関するアンケートを送付してこの度、その結果を公表することができました。ご協力いただきました皆さん本当にありがとうございました。とても有意義なデータとなり多くの企業の今後のトラブルの備えのきっかけになればありがたいです。

WEBサイトに掲載した直後からArayZさんのページでは、トップ閲覧数にあがっており、多くの方に読んでいただけたことで少しほっとしております。その記事のリンクは以下に貼り付けていますので、是非お読みいただければ嬉しいです。結構多くの会社さんが様々なトラブルを経験しているのだなというのがわかるかと思います。

noteの目的

そんな中、今回はこのテーマから少し離れていつもの数字をテーマにお話しをしてみます。本調査記事の冒頭から78%の企業がトラブルを経験とセンセーショナルな表現を用いていますが、本当にそんなにたくさんの会社が経験しているのかな?と思われる方はいませんか? この結果は実際に回答をいただいた企業担当者からの集計数なので疑いようはありません。しかしながら「実際それって回答した企業だけでしょ」と思われている方もいるかと思います。そんな疑問に少し統計的な方法を加えて、これがどの程度「実態」を表しているのか?について便利な計算方法があるので本noteではそれを使って疑問をもたれた方への回答を考えてみます。

アンケート結果データの信頼性について

本調査は、ArayZさんがお持ちのハウスリストを使って調査を行いました。(調査方法は下の引用参照)

本調査は回答数60名(≒社)から行った結果

いくらこの調査で実態を表したいといっても実際のところ、アンケートを行った結果が、調査対象である母集団(今回の場合だと、タイに進出する日本の全企業)の考えと完全に一致することは、恐らくありません。しかし、統計の手法である許容誤差を計算すれば、どれくらいこの母集団に近い結果なのかを知ることができちゃいます。しかもこの許容誤差を計算してくれる便利なツールは、インターネット上にありますのでそれを活用しない手はありませんよね。このツールを活用してアンケートを行うことで次のような便利なことができます。

  • アンケートを行うときに信頼を得られそうな回答数は何件くらいか?

  • データ結果はどの程度の振れ幅で信頼できるのか

どうですか?この二つが定まれば出てきた結果にもそれなりに自信をもてそうですよね。

統計用語の事前整理

まずは言葉の前提を先に整理しておきます。

  • 母集団: 調査しようとしている集団の総数。今回の母集団はタイに進出する日系企業およそ5800社です。

  • 許容誤差: アンケート結果が母集団全体の見解をどれだけ反映しているかを示す割合。許容誤差が小さければ小さいほど、該当する信頼レベルの回答を得られている可能性が高まります。今回10%程度は許容しようとしました。※一般的には5%水準を使うことが多いです。

  • 標本の信頼水準: 母集団がある一定の範囲の回答を選択すると確信できる割合。たとえば、信頼水準が95%であれば、結果が許容誤差の範囲にあることを95%確信できます。今回は90%に設定しておきました。

  • サンプルサイズ(sample size)=アンケートで手元に戻ってくる回答数データの個数・標本の大きさ ※今回の60件の回答がここにあたります。

今回の調査にあたり、数字の厳密性がもつ影響よりも多少の振れ幅があったとしても、早く調査結果を皆さんにお伝えしたいこと。また調査結果の集計値の厳密性よりも実際に起こった出来事そのものを分析して網羅的に伝えることの方が大事だと考えたからです。つまりこれが本調査で大切にしたい設定された”目的”でした。

この目的を達するために、ツールを用いてどの程度の調査数であればこの目的が達成できるかを計算しておきました。(実際の計算キャプチャーも載せておきます。)

許容誤差とサンプル数を計算するサイトの紹介

①許容誤差と標本サイズを計算する簡単なサイト「SurveyMonkey」

SurveyMonkeyのサイトで許容誤差を計算した結果

②エクセルをダウンロードしてデータテーブル等のシミュレーションをしたい方(Excelリンクあり)

必要なサンプル数のシミュレーションを行える


他にもいくつかあるようですが計算式はそんなに難しくないので慣れればエクセルでもすぐに作れるようになるとおもいます。


結局のところ今回の調査をどう考えているか?

今回調査は、事前整理で書いた通り、調査結果についての誤差を10%程度は許容しようとしています。それは「トラブル」の調査ですから依頼しても高い回答率は見込めないかもしれないことを想定していました。ターゲットとして90%程度の信頼水準なので100回調査で90回はこの許容した誤差の範囲におさまる程度で良いという感じです。別の言い方をすると、回答者の78%がトラブルありということを選んだことに着目すると、この許容誤差10%が意味するのは、90%の可能性で日系のタイ進出企業全体の68%~88%(結果の数値±10%)がトラブルを経験したといえるだろうということです。やはりトラブルってあるんだなって思うには十分だとおもいませんか。

今回の調査目的は、日系企業は海外でいろいろトラブルの経験をしているということを皆さんと共有することを狙っていたので、この程度の誤差は許容しても大丈夫だろうと判断しての調査だったということです。繰り返しになりますが、ポイントはトラブル事象をなるべく具体的に伝えることでしたから。読み手の皆さんも、これくらいの範囲ならOKと思ってもらえるのではないでしょうか。

調査は目的にこだわり、必要な誤差を許容した数字をとる

さらに、この調査対象数にこだわりすぎない方が良いということもあります。例えば顧客アンケートは人数にこだわるよりも一つ一つの顧客の声をしっかり分析をした方が効果的なことがあり、SaaS企業では解約顧客から理由をしっかり聞いた方がサービス向上につながることも言われていますよね。

また社員アンケートでは、制度や福利厚生のような広く全体に影響するものは統計的に有意な信頼水準で比較的小さい許容誤差で判断を行うことが望ましいかもしれませんが、一方で優秀な社員をいかにリテンション(引き留め)できるかを考える場合においては全体への意見聴取はあまり効果的な結果を導けないかもしれません。

共通しているのは、この調査は何のために行うのか?という目的意識をしっかりもって調査と分析を行うことで調査の有効性が発揮できるようになるのだと考えた方が良いですね。つまり、まずは目的から始めよ!ですね。

今回はアンケートの調査数に着目してnoteを書いてみました。最後までお読みいただきありがとうございました。


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