人生の袋小路にいる人へ(田中慎弥『孤独論 逃げよ、生きよ』を読んで)
僕が田中慎弥氏のことをはじめて知ったのは、テレビで放映された芥川賞授賞式の映像でだった。
ふだんテレビに映し出される映像は、ほぼ例外なく予定調和的なものだが、この人の佇まいは、「そういうこととは全く関係なくそこにいる」という感じだった。なんとなくテレビをつけて流し見していた僕は、「あ、人間がいる」と思って、しばらく映像に釘付けになった。
そこで彼はなにやら挑発的なコメントをしていたような気がするが、その言葉の内容とは裏腹に、「人のよさ」というとちょっと違うけど、実に人間的