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【今だからこそ、発達障害グレーゾーンをちゃんと理解しよう②】~同じ行動を繰り返す人々~

ことばが広がってきた今だからこそ知りたい

「発達障害グレーゾーン」という言葉が広がって、いろんな人が「グレー」という言葉を使うようになってきた。
そんな今だからこそ知りたい。発達障害って何?グレーゾーンって何?

 今回はパート2ということで、発達障害の特性の一つ 同じ行動を繰り返すことについて整理したい。「こだわり」とよく言われるやつやね。
 そして、外からは見えにくくても苦しんでいる人がいる。みんなが生きやすい世界・社会ってどんなんやろうっていうことを考えるきっかけにしたい。

この記事で何がわかるか?

◎こだわりの4+1つのパターンってなに?どう対処すればいいの?
◎問題になるこだわりは?
◎こだわりと関係する障害ってあるの?


はじめに こだわり・同じ行動を繰り返す人は何の障害のグレーゾーンなの?

◎自閉スペクトラム症(ASD)のグレーゾーン

自閉スペクトラム症(ASD)は、
 社会的コミュニケーション障害+2つ以上のこだわり症状 で診断される。
だから、強いこだわりで困っていても、友達とそれなりに会話や付き合いができている場合はグレーゾーンと判定される。

でも、診断名よりも大切なことがある。それは、この「こだわり」という特性を理解して、有効な対処につなげること。だから、今回はこの「こだわり」という特性を深掘りしていきたい。

◎ASD(自閉スペクトラム症)でよくいわれる「こだわり」って何?

邪魔をされたり、想定外が起きると強いストレスを感じ、「そのこと」をしないと落ち着かない。具体的には4つある。

①同じ行動や単純な所作をくり返す。
 例:とびはねる、くるくる回る、同じさけび声をあげる、指の皮をむしる、頭をぶつける、などをくりかえすこと。

②特定の行動・思考パターンにこだわる。
 ①よりも複雑な一連の行動を繰り返す。
 柔軟性のない考えや視点、融通が利かない思考。

③特定の対象への強い執着
 ①②のような繰り返しではなく、細部へのこだわりとそれ以外への無関心

④感覚過敏または鈍感さ
 五感(視覚👀、聴覚👂、味覚👅、嗅覚👃、触覚👆)が過敏または鈍感。
 例:大きな音が苦手、決まったものしか食べられない、特定のにおいが非常に好き/嫌い、触られるのが苦手など。
 ※感覚過敏はよく見られる症状だが、これだけではASD(自閉スペクトラム症)にもほかの発達障害にも診断されない。

◎これら①~④に共通する特徴
自分が気にしていることへの強いこだわりとそれ以外に対する無関心。

これらのこだわりを理解するために、次から①~③をくわしく見ていこ!!

①同じ行動や単純な所作を繰り返す。

◎例えばどんな行動?

ぴょんぴょんとびはねる、くるくる回りつづける、決まった通りにものを並べる、回転させる、同じ叫び声をあげる、ものを打ち鳴らす、指の皮をむしる、唇をかむ、頭をぶつけるなどを繰り返す。

軽症の人だと…
部屋をぐるぐる歩き回る、繰り返し指を鳴らす、ペン回しを繰り返す、椅子を揺らす(マイクロソフト創業者のビルゲイツの子どものころからの癖。思考に熱中するとより激しく椅子を揺らしていた)。

※いやなことなどをまぎらわす「まぎらわし行動」として気持ちの安定に役立つことも多い。
 ⇒だから、これだけでは問題視されない。

◎じゃあ、問題になるのはどんなとき?

●生活への支障が強いとき
 ⇒その場合は、常同運動障害と診断される。
●自傷的な行為
 ⇒頭をぶつける、とか。
●幼児(特に女児)の手もみ
 ⇒レット症候群かもしれないから、注意!

◎理由:なぜ「同じ行動や単純な所作を繰り返す」の?

まだまだ原因は特定されていないけど・・・いくつか出てきてる。
●神経伝達物質の働きが弱いから。
(特に興奮を抑えるGABAという神経伝達物質)
●ビタミンDが不足しているから。
 ⇒ビタミンD3の補充療法で対策できる。
●ストレスや孤立による悪化。
 ⇒環境を改善することで対策できる。
※日々研究が進み、どんどん新しい治療法が出てきてるから、要チェック!

②特定の行動・思考パターンにこだわる。

例えば・・・
 決まった席に座って毎回同じメニューを注文する。
 細かい点まで、決まった習慣を毎日繰り返す。
 形式的な挨拶を丁寧すぎるほどに繰り返す
 1つの主義主張に頑なにとらわれる。

◎これらのこだわりの良いところ
  自分のスタイルを大事にすると、高い創造性や生産性につながる。

◎じゃあ、どんなときに問題になるの?

この「こだわり」のある人が、家族や周りの人に注意や指導をしてしまうことで、周りの人の行動を縛ってしまうとき。
(こうあるべきという一つの行動規範へのこだわりが強いから、周りが少しでも違ったことをすると指摘したり、怒ったりしてしまうんよね)

◎家族(子どもやパートナー)が苦しむ。
  本人が知らず知らずのうちに虐待や支配につながってしまう。
◎周囲が苦しむ。
  本人は(言うと面倒になる)とわかりつつも、言わずにはおれない。
※「~すべきだ」という責任感や義務感が強く、それを柔軟に変更したり、ゆるめたりできない。・・・これで日常に支障が出るようになると、強迫性パーソナリティ障害と診断される。

◎対策:じゃあどうすればいいの?

自分のこだわりを客観視して、失敗パターンを避けるようにすることが大事

具体的には、
  自分のこだわりを振り返るために記録をつける。
  出来事の受け止め方や対処の仕方を変える
  (これはカウンセリングとか認知行動療法で目指されているもの。
   興味のある人はカウンセリング、認知行動療法をチェック!)

③特定の対象への強い執着

特定の分野への深い情熱と激しい好奇心としてあらわれる。
◎特定の対象への強い執着の良いところ
 科学や学問の進歩に貢献してきた。科学者の伝記などを見ても、これらのこだわりが見られることが多い。
例えば:科学実験、電気回路、天体観測、アマチュア無線、昆虫や岩石採集、切手などのコレクター

◎じゃあ、問題にあるのはどんなとき?

日常生活に支障が出て、健康を脅かすことがある。
例:電車マニアの青年の話👦
 電車のコレクションで部屋を埋め尽くす。別の部屋を借りる。膨大な時間と費用をつぎこむ。
 家族は我慢している。コレクションを整理したら激高して大声をあげられた。それ以来、家族は何も言えていない。

◎理由と対策(なぜこんなこだわりが出るの?どうすればいいの?

このこだわりが出る人の特徴のひとつとして、
言語理解の力が高く、その一方で全体の状況が見えていないことも多い。
だから、
ことば(言語)で考えずに、イメージや身体感覚を活性化して楽しむことで改善されることもある。

※ただし、このこだわりが科学や学問の進歩に貢献してきた面もあるし、人それぞれ、大なり小なりこんなこだわりを持っていると思うから、問題が起きないようにうまく付き合っていくことが大切よね。

さいごに:発達障害じゃなくても起こる「こだわり」

 発達障害は生まれつきの障害だから、育っていく中で出てくる「こだわり」は発達障害からきたものとは少し違うよ!という話。

◎トラウマや幼いときに満たされなかった欲求や不充足感によって起こる「こだわり」
⇒これは、安心した中で語りや表現を積み重ね、人生の出来事を捉えなおすことが効果的。
(愛着障害のところで詳しく説明してるよ!)

◎思春期・青年期以降に強まるこだわり:強迫性障害
 ●
自分でも必要がないとわかっている行動(強迫行動)を繰り返す。
  例:不潔恐怖(手を洗い続ける。決まった順番でしないと落ち着かない。家に帰るとすべての服を着替える、など)
 ●自分でもあり得ないと思っている考えや心配(強迫観念)にとらわれる。
  例:過失や他害への恐怖(今、車で人を引いたかもしれない・・・。大事な書類を捨てたかもしれない・・・、など)

参考書籍

①岡田尊司著『発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法』SBクリエイティブ株式会社刊(2022年)。

今回の感想

 どんな人でも大なり小なりこだわりってあるよね。でもそれが、良い感じで出る場合(本人が困ってなかったり、良い結果を出せる場合)と悪い感じで出る場合(本人がめっちゃ困ってたり、問題として出てしまう場合)があるのはなんでかなっていう疑問がわいた。同じような特性を持っててもこんな違いが出るってことは、未来へのなにかヒントが隠されてる気もする・・・。そこはやっぱり家庭環境とか学校なんかなぁ。
 どんなこだわりがあっても、ひとりひとりが力を最大限に発揮できたり、幸せに暮らせる。安心できる場所と挑戦できる課題。そんなことがあれば、毎日楽しくなるし、今ここにいる自分も愛おしく感じられと思うんやけどなぁ。

みなさんはどう思うでしょうか?みなさんの感想もぜひコメント欄で知りたいです!!よろしくお願いします。


次回は「空気が読めない」について詳しく解説!


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