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【愛着障害②】こんな子どもとどう接する?  注目されたいアピール行動、どこまでしたら怒られるかを試す(愛情試し行動)、自分は被害者(自己防衛)、自己否定、お金や物をあげる(自己高揚)

それって愛着障害かも?

注目されたいアピール行動
どこまでしたら怒られるかを試す(愛情試し行動)
自分は被害者(自己防衛)
自己否定(どうせ自分なんてできない)
お金や物をあげる(自己高揚)

こんな行動をしてしまう子どもたちは「愛着障害」かもしれない。
今回は、愛着障害の子どもの特徴と接し方~家で、クラスで、地域で~
について話したい。


愛着障害をなぜ学ぶのか?

愛着障害は、親との死別・離別、虐待だけでなく、
大人と子どもの”相性のミスマッチ”にによっておこるため、
どんな家庭でも起こりうる。

しかも、愛着障害の特徴やかかわり方、支援の仕方を知っておくと障害が改善できる。だから、親、教師、支援者などが学ぶ必要がある。

この記事で何がわかるか?

愛着障害の子どもの特徴と接し方。
厳しくて優しい先生の学級経営がなぜうまくいくのか、ということ。

話す内容の一覧

はじめに 愛着障害の子どもの3つの特徴

①愛情欲求行動 ⅰ.注目されたいアピール行動

・痛くないケガでも痛そうにふるまって手当をしてほしがる。
・いたずらをする。
・自作自演(自分でものを隠して自分で見つける。自分で事件を起こして被害者ぶる)
・おもらし
・静かなところ、状況でものをたたく、大声を出す、騒ぐ。

まわりから注目されるような行動をする。
※愛情欲求行動はエスカレートしていく傾向がある。

①愛情欲求行動 ⅱ.愛情試し行動

わざと相手の反応を引き出すような振る舞い(不適切な行動)をして、
 ・これをしても許されるか?しかられるか? しかると怖いのかを試す。
 ・試した後は人によって行動を変える。
  →家だけ良い子で外では暴れる。外では良い子で家で暴れる。など
※「2度目の試し行動」
 関わり初めに多く見られるが、関係ができた後も試すことがある。
※愛情欲求行動はエスカレートしていく傾向がある。

②自己防衛

・不適切な行動を指摘されても絶対に認めない(証拠があっても)。
・けんかなどのトラブルでも、自分が被害者で相手が悪い、と主張する。

誰も守ってくれないから自分で自分を守るためにうそをついたり、攻撃的になったりする。自分を正当化する。

③自己評価の低さ ⅰ.自己否定

失敗した経験ばかりを積み重ね、「どうせできない」とやらない。
※周りから見るとできていても、本人が失敗したと思っているときもある。
→「何をやってもムリ」「自分なんて生まれてこなければよかった」

※自己評価が低いと感情や気分のムラが大きい。
→その日の活動へに感情や気分が大きく左右される傾向がある。

③自己評価の低さ ⅱ.自己高揚

自己評価が低いことを認められず、無理矢理、瞬間的にでも自分を高めようと行動する。
 ・自分ができていないのに、他人のできていないことを指摘する。
  (自分はだらっと座ってるのに、隣の人に「ちゃんと座れ!」という)
 ・いじめる。(他人の欠点や弱点を言いはやす)

※自己評価が低いと感情や気分のムラが大きい。
→その日の活動へに感情や気分が大きく左右される傾向がある。

ADHDやASDがベースにあると…

ADHD(注意欠如多動症障害)やASD(自閉スペクトラム症)がベースにある場合には、支援や対応がよりむつかしくなる。

愛着障害の子どもにあらわれやすい6つの行動

愛着障害の子どもにあらわれやすい行動がある。
ただし、これらの行動の原因はさまざまだから
2~3個以上あてはまると愛着障害を疑ってもいい。

①モノとの関係:さわる必要のないものをさわる。

・机の上の鉛筆や消しゴム
・顔や髪の毛
・服やズボン
・ポケットに手を入れる
・壁や机をさわりながら歩く
・ベッドの周りにぬいぐるみなどを置きたがる。

②口の問題:さわっていたものを口に入れる。

・鉛筆、消しゴム
・机をなめる
・ハンカチや服をかむ
・舌なめずり
・指すい

③床への接触:床と接触したがる。

・ハダシになりがたる。
・床に座り込む、寝転ぶ、はい回る、転がりまわる

④人との距離感:距離感が近すぎる

・誰にでも警戒せずに関わりたがる。
・何歳になっても、だっこ、おんぶ、ひざのりなどをしたがる。
※脱抑制対人交流障害(DSED)、脱抑制型、不安型の愛着障害と言われる

④人との距離感:距離が遠すぎる

・誰に対しても警戒する。人に近づかない。
・前から人が近づくのを嫌がる、怖がる。
※反応性愛着障害(RAD)、抑制型、回避型の愛着障害と言われる。

⑤姿勢、しぐさ

・良い姿勢を維持できない。
・服装の乱れ(だらしない、季節に合わない)。
・おしっこやうんちをもらす。

⑥危険な行動

・ものを投げる、振り回す。
・自分の体や服、ほかの人にかみつく。
・高いところへのぼる。
・他人への暴力や暴言がある。



①愛着障害の子どもにしてはいけない対応

上のような特徴を知ったうえで、接し方について学んでいこう
愛着障害の子どもが不適切な行動をしたときに、
   してはいけない対応、
   しないほうがいい対応、
   効果がない対応     がある。

1⃣本人に理由や気持ちをきくこと

「どうしてこんなことしたの?」「どんな気持ちでしたの?」と
本人に気持ちや理由を聞く対応はすべきではない。

なぜきいたらダメなの?
 愛着障害の子どもは、身近な人と気持ちや感情をうまく通い合わせることができなかった。

だから情緒(喜び、悲しみ、怒り、恐怖、不安など)や感情面がうまく育っていない。だから・・・、

理由や気持ちを聞かれても「わからない」となって、よけいに混乱する。

2⃣無視する・取り上げない対応

不適切な行動をしたときに無視する。放っておく。

 ※計画的無視(わざと無視をして不適切行動を減らす支援)は、
  ADHD(注意欠如多動症障害)には有効な時がある。

なぜ無視したらだめなの?
 愛情欲求行動(注目されたいアピール行動・愛情試し行動)がエスカレートしてしまうから。
 注目を浴びるために行動がより過激なものにエスカレートしてしまう。

3⃣腫れ物に触るような対応

・なにをしても叱らない。
・子どもの要求や命令、支配に従うだけ。

 ※子どもが暴れたりする場合、
     親、教師、指導員がこんな対応になってしまうことが多い。

なぜ腫れ物に触るような対応はだめなの?
 愛情欲求行動(注目されたいアピール行動・愛情試し行動)がエスカレートしてしまうから。
 怒るまで試し続けて、行動がより過激なものにエスカレートしてしまう。

4⃣受容・傾聴・向き合う

受容:子どもの要求を無条件に受け入れる対応。
  →愛情欲求行動(注目されたいアピール行動・愛情試し行動)が
   エスカレートしてしまう。
傾聴:ひたすら話を聞いてあげる。
  →自分の気持ちや感情がわからないから、聞けば聞くほど混乱する。
向き合う:子どもの真正面にたつ。
    →人との距離の取り方が苦手。正面は苦手。

5⃣ほめる、甘えさせるだけの対応

なぜだめなの?
 愛情欲求行動(注目されたいアピール行動・愛情試し行動)がエスカレートしてしまうから。

※下のほうの②叱るコツで、ほめ方のコツも解説

6⃣叱る、追い詰める

 ※下のほうの②叱るコツで詳しく解説!

7⃣関わる人の無連携

 ※愛着はまず「1対1」で結ぶ。
  下のほうの「③愛着はまずは1対1で結ぶ」で詳しく解説。


②子どもを叱るコツ

叱るだけ、追い詰めるだけの対応がなぜダメなのか?
 
愛着障害は感情発達の障害だから。
→叱ることが有効なのは、
 子どもが自分でその時の気持ちや理由をふりかえることができるとき。
だから、情緒面や感情面がうまく育っていない愛着障害の子どもは叱られたりしても混乱してしまう。

だからコツがある。 

厳しくて優しい先生はこうしてる。

普通学級の例やけど、特別支援のクラスでも、親としても参考になる。

筋の通った指導で子どもに主導権を渡さない。

具体的にどうする?
 ⅰ.あらかじめクラスのルールを子どもに示しておく。
    なにをしたら叱られるのか?なにをしたらほめられるのか?
 ⅱ.基準から逸脱する行動には、「ダメなものはダメ」と譲らない。
   毅然と対応する。
    ※叱ることで「この子をかえよう!」ではなく、
     子どもが「この行動はダメなんだ」と伝わればいい。
     だから、本気でしかるけど、短くていい。
     長いと子どもが混乱してしまう。

ポイントは先手を取ること

子どもの要求・行動→大人の対応   ではなく、

大人の要求(クラスのルール) → 子どもの要求・行動 → 大人の対応で主導権をとる。

子どもに主導権があるとこうなる・・・。

子どもの主張・意見 VS 大人の主張・意見
          ↓
子どもがぐずる、暴れる、パニックになる
          ↓
子どもの主張・意見が通ってしまう。

大人に主導権があるとこうなる・・・。

子どもの主張・意見 VS 大人の主張・意見
          ↓
子どもがぐずる、暴れる、パニックになる
          ↓
子どもの主張・意見は通らない。

子どもの主張・意見 VS 大人の主張・意見
          ↓
     大人のいわれたことをする。
          ↓
     子どもの主張・意見が通る。

ほめるときのコツ:ほめる順番を意識する。

大人:お手伝いや仕事をお願いする。
 ↓
子ども:できた!
 ↓
大人:ほめる。

※してほしいことを伝えてほめるの繰り返し。
子どもが勝手にしてることをほめても「主導権」をとることはできない。

逸らしの支援

不適切な行動を別のことに逸らして、
 不適切行動をやめさせる+逸らした後の行動をほめる。

廊下を走っている子ども

「走ったらダメ」ではなく「歩こう」
 そして、歩き出したらほめる。

教室を飛び出した子ども

「飛び出したらダメ」ではなく、
            「○○するために教室に行こう」「○○手伝って」
 ○○したことをほめる。「手伝ってくれてありがとう」「助かった」


③愛着はまずは1対1で結ぶ

全体指導は厳しく、個別の言葉かけはあたたかい。

1対1で一緒の活動をすること。
・1日1回以上
・できれば2人きり
・勝ち負けのない活動がいい。
◎一緒に活動をして、感情を共有する。
  でも、感情を聞いてはダメ(混乱するから)。
  大人から感情を教えるようなイメージを持つ。
  「今の気持ちは”楽しい”ってことだよね」「うれしいね!」

でも、クラスにいるとほかの子どもたちはえこひいきを嫌がる

おススメは、入口と出口の支援。入口と出口は1対1をつくりやすい。

例えば、
入口:登校時→朝のあいさつで一人一人声をかける。
出口:放課後→1対1で1日を振り返る。
    ※このときも子どもに振りかえさせるのではなく、大人が振り返る
     「○○して楽しかったね」「うれしかったね」「よかったね」等


愛着障害が治ったかはどう判断するの?

探索行動が出てくることが一つのゴール

学校などで見ている場合には、探索行動を一つのゴールにして取り組んでいくのが良い。
探索行動が出始めると、さまざまなことにチャレンジできるようになる。

探索行動とは?

安全な場所や安心できる人から離れて、いろんな場所へ行って新しい出会いを経験したり、知識や情報を手に入れること。

参考書籍

 ①米澤好史著『愛着障害は何歳からでも必ず修復できる』合同出版株式会社刊(2022年)。
②米澤好史・松久眞実・竹田契一著『特別支援教育 通常の学級で行う「愛着障害」サポート 発達や愛着の問題を抱えたこどもたちへの理解と支援』明治図書出版刊(2022年)。

今回の感想

 教師やったら、”こんな子ども”(愛着障害の特徴のある子ども)は何人か思い浮かぶと思うんよね。こんな子どもを単なる性格と片付けるんではなくて、今困っている、もしくは将来的により苦しみが増えるかもしれないと考えて、どう支援していこうか、どうかかわっていこうかというのが改めて大事やと思った。
 子どもとの愛着関係、親が結ぶのもむつかしいのに、いち担任が結べるんか?と思うかもせんけど、学校って実は過ごす時間がめっちゃ長いし、多くの子どもたちがおるからこそ、やりやすい部分もあると思うんよね。
 あと、これまで漠然と、「厳しくて優しい先生」がいいなぁ、というのは実感としてあったんやけど、「厳しくて優しい先生」がどんな先生なんかをひとつの言葉で表現できたんは、自分の理解にもつながったなぁ。
 そして、愛着障害って病院で診断が出にくいからこそ、教師が学ぶべきなんやと感じた。”愛着障害”を知ることで、みんなが少し優しくなれたり、少し頑張れたり、助け合ったり、励まし合ったりできれば、少し良い世界になるんじゃないかなと本気で思う。


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