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ずっと使い続けられる「基礎力」を~RISU小学生オンラインスクール 佐藤校長インタビュー


新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。
5月6日までの緊急事態宣言はさらに期間が延長され、全国の学校でもオンライン機能を用いた授業が一部実施され始めました。

私が代表を務めるRISU Japan株式会社はオンライン学習サービスを提供しているということもあり、その知見を活かす形で4月27日から「RISU小学生オンラインスクール」という無償サービスを始めました。これはYouTube 上で小学校1・2年生向けのオンライン授業を提供するサービスで、ありがたいことに開始直後から多くの方にご利用いただいています。現在は算数と国語の主要2教科の授業を提供していますが、今後は英語など幅広い授業を展開していく予定です。

今回の「学びのベーション」では、この「RISU小学生 オンラインスクール」で校長先生を勤める佐藤雅巳さんにお話を伺います。ダジャレを交えた国語授業が人気の佐藤さん。
今ではすっかり我が社になじんでいますが、実は我が社の事業に関わり始めたのは最近のこと。
佐藤さんのこれまでのご経歴や、RISUオンラインスクールへの思い、今後の目標などさまざまな角度から佐藤さんにお話を伺いました。

東大理Ⅰから理Ⅲへ

今木:今日はよろしくお願いします。

佐藤:よろしくお願いします。佐藤です。

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▲佐藤雅巳氏

今木:まず佐藤さんのご経歴からお伺いしてもいいでしょうか。大学受験予備校の講師をやられていたとか。

佐藤:今もやっています。予備校に関わるようになったのは大学生のときです。 東大理Ⅲに進学したかったんですが結局合格できず、浪人して泣く泣く当時後期日程での募集があった東大理Ⅰに進みました。その頃からアルバイトで大学受験指導などに携わるようになりまして。

今木:在学中から予備校講師をやっているというと、もう何年ぐらいに?

佐藤: もう20年目になります。その間に理学部を卒業して、最終的には念願の理Ⅲに入りました。

今木:え、結局理Ⅲに入ったんですか!そこまで理Ⅲにこだわられるのにはなにか理由があったんですか?例えば医学の道に進みたかったとか。

佐藤:国内大学受験の最難関だからという単純な理由です(笑)。だから東大医学部で勉強した後も医学の道には入らず教育の道に進むことに決めました。

今木:ご家族からは進路に関してなにも言われなかったんですか?

佐藤:初めて東大を卒業して以降は経済的に自立していたので、なにも言われなかったですね。

今木:それぐらい塾講師として旺盛に働かれていたと。

佐藤:そうです。その中で、第一志望合格を目指そうとか偉そうなことを言いつつも、肝心の自分が結局第一志望に受かってないじゃないか、と思い始めたことも、理Ⅲの再受験を後押ししました。

今木:たしかに言葉の重みは変わりますよね。それにしても学び続けるその姿勢は素晴らしいですね。

アルファベットが正しく書けない東大理Ⅲ生

佐藤:さらに、東大理Ⅲへの受験を続けた理由には、バイト先の同僚の理Ⅲ生の存在があります。彼ら・彼女らは現役で東大理Ⅲに受かっていて、とても優秀に見えます。ですが実際のところは入って数ヶ月で大学入試問題も解けない、あるいは正しくアルファベットが書けない人さえいました。それを見て、私に理Ⅲが受からないはずないだろう、と思いまして。

今木:(笑)。 理Ⅲでも!

佐藤:そうなんですよ。彼らは小さい頃から優等生で、たとえば汚く字を書いても周りの人が読んでくれて、テストで満点を取れば何も言われなかったんでしょう。小さい頃からいわゆる「お勉強」はちゃんとやったけど、字を綺麗に書くだとか、そういうもっと基礎的なことを親は言わなかったんだろうなと。

今木:たしかに字が汚くても正解さえ出せれば試験には受かりますもんね。だからそれ以前の基礎的な力が身に付いていなくても極端な話、理Ⅲには行けてしまうと。

佐藤:でも、私が心配しているのは、そういう人たちの今後です。果たして大学を卒業できるのか、あるいは例えば理Ⅲから医者になってちゃんと勤務できるのか。
 医者が書くカルテの汚さが他の医療スタッフを困惑させるのは有名な話ですけれど、その字一つで生死に関わってくる場面もありますし。

今木:字をちゃんと書くとかって、小学生低学年でしか、授業では扱いません。しかしそういうもっとも基礎的な部分が今後の人生に関わってくる可能性も否めないですよね。

基礎力育成としての低学年教育へ

佐藤:私はそういう日常に本当に必要な、基礎となる学力こそ重要だと思っているんですよ。その「基礎力」を色んな人に提供できるようにしたいな、という思いが予備校講師の経験を通じて徐々に芽生えてきました。

今木:佐藤さんがどうして大学受験教育からRISUが提供している「低学年教育」に進まれたのかは、ずっとお聞きしたかったんですよ。佐藤さんは基礎力を育成する幼児教育や低学年教育に興味があって我が社の取り組みにご参加いただいたんですか?

佐藤:そうです。実際、大学受験生を見ていても算数レベルの計算でつっかえる人や、簡単な漢字が書けない人も多いです。やはり低学年の頃から計算や漢字の書き取り、そうした基礎力を徹底させることが必要だなと強く感じまして。

今木:なるほど。たしかにRISU算数は、苦手の原因を4つの単元に収斂させる考えのもと、タブレットの設計を行っています。今の佐藤さんの話で言えば、その4つの単元が「基礎力」だといえるのかもしれません。そうした意味で、RISU算数は佐藤さんの志向と合致した教材であると。

集団授業に疑問を持つべきだ

佐藤:そうですね。それに、タブレット教材の可能性をもっとも模索しているのがRISU Japanだと思っています。

今木:それは嬉しいですね(笑)

佐藤:他のタブレット教材ってタブレットを興味半分で使っていたりしていて、その特性が活かされていない気がするんですよ。

今木:RISUのタブレットは集団教育のスタイルに疑問を持ったところからスタートしています。一人一人の才能を伸ばすために、集団授業というスタイルだけにこだわる必要はあるのか、と。

佐藤:まさにそうで、私も集団授業というのに疑問を持たなくてはいけないと思ってます。集団授業だと、一人一人何ができていないかとか、そういうことが正確には把握しにくい。ちょっと極論かもしれませんが、授業をやらずとも、ある程度のボリュームの宿題を出してしっかりチェックするだけでも公教育は変化するんじゃないかと思います。その点、RISUのタブレット教材はそうした「個」が真の意味で成長するために必要な教育が受けられるようになっている。

人間にできることは「動機付け」

今木: 佐藤さんは、今の教育の多くがタブレットでカバーできると考えられていると。そうすると、私が気になるのは人間にしかできない教育ってなんだろうということなんですよ。
 RISUは今回、オンラインスクールを始めました。そこでは佐藤さんが YouTube  の動画で授業をやられています。そのときに機械ではない、人間だけができる教育にはどういう可能性があると思われてますか?

佐藤:やはり学習の動機付け、でしょうか。

今木:それはどのレベルでの動機付けですか?例えば佐藤さんだったら「大学合格」のような直接的な理由を学習のモチベーションにすることもできますよね?

佐藤:もう少し広い視野で考えています。単純に学問をすることの面白さを知って欲しい、というようなことですね。そういう根本的な、なぜ勉強するのかということを教えることは、AIには厳しいんじゃないかなと思っています。そういう部分で後押しできればいいな、と。

今木:大学合格のような近視眼的な目標ではなく、もっと将来の可能性を広く担保するための動機付けってことですよね。なんで勉強するんだろう、といった本質的な部分はやはり人間しかできないですよね。先ほどアルファベットが正しく書けない東大生の話が出てきましたが、そういった人たちはある意味で近視眼的な目標でしか学習をしてこなかったのかもしれません。そこにその歪みの原因があるのかも。

ずっと使い続けられる基礎力を

今木:今のお話を聞いてて思ったのは、佐藤さんは教育について、非常に広い視野で考えられているな、ということです。低学年教育だろうが、大学受験教育だろうが、佐藤さんが重要視されているのはその基底にある「基礎力」ですよね。そしてそれは人生を通して重要になると強く感じられている。

佐藤:そうですね。日本でも古くから「読み書き算盤」という言葉がありますが、やはり計算と文章の読解力などが備わっていれば、そこから発展的に様々な勉強に応用することができると思うんですよ。もちろん外国語の勉強にも繋がってきますし、最近話題のプログラミング教育にもつながるかもしれません。そうした分野でも、「基礎力」は見え方を変えてきているだけであって、決して誰も知らないことをやっているわけではない。だからこそ、基礎の部分をしっかりやらなきゃな、とは思っています。

今木:なるほど。それは大人の学びでも同じですね。佐藤さんがずっと学び続けられている話もさきほどありました。

佐藤:そうです。極端に言えば、低学年用のタブレット教材を大人が使うのもいいことだとさえ思ってます(笑)

今木:なるほど。それは面白い!

佐藤:昨今のコロナウイルスの影響を受けて社会が大きく変容しつつありますが、やはりどんな時代になっても生き残れるような人材を育成できればなと思います。そしてそれに必要なのが今日何度もいった「基礎力」なのだと思っています。

今木:本当にそうですね。今日は長い時間、ありがとうございました!

佐藤 雅巳(さとう まさみ)
東京大学医学部卒業。教育者を志して在学中から大学受験予備校に勤務。集団での一斉学習を好まず幼稚園を拒否し、高校にも進学すべきか悩んだ経験から、一人でも合理的に学習を進められるような教育を心掛けている。一方、高校での出会いを通じて最終的に東大理Ⅲを目指した経験を踏まえ、特に若いうちは様々な背景を持つ人々と積極的に交流する事の重要性も認識。多様性の中に身をおくことの大切さを説きながら教壇に立ち続けている。

今木 智隆(いまき ともたか)

「学びのベーション」編集長。RISU Japan株式会社 代表取締役。
京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、デジタルマーケティング専門コンサルティングファームのビービット入社。金融・消費財・小売流通領域のサービスに従事し、2012年から同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した幼児から小学生向け算数教材で、のべ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーでもハイレベル層から、算数やAIの基礎知識を学びたいとオファーが殺到している。




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