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読書会『海』(小川洋子著) 開催レポート

初めてのカフェ開催でした。
参加者は主催を含めて4名。初参加の方も1名いました。

※このレポートは小川洋子著『海』のネタバレを含みます。

はじめに自己紹介をかねて、短編集『海』の大まかな感想を伺いました。

「小川洋子さんは初めて読んだが、短編なので読みやすかった。」「小川洋子さんの本が好きで参加した。社会的な優劣では測れない人の生き方を描いていて、読むと自分の軸を取り戻せる。」などの意見が上がりました。

その後、収録作の「海」と「ガイド」について話しました。

『海」について
・小川洋子さんの小説にはよく「弟」(多くの場合、障害を抱えていたり、弱い立場にあったりする)が登場する。作者に実際に弟がいる(いた)のかもしれない。
・作品のなかで「小さな弟」という表現がある。20歳前後であるが、10歳程度に見える。
・「小さな弟」は仕事をしているわけではなく、社会的にも居場所はなさそうだが、音楽という、彼だけの聖域のようなものがある。また、人間関係よりも、物や動物、自然に救われて生きている。人以外の存在の貴さを描いてると感じた。
・鳴鱗琴は実際にないと思う。引き出しの中にある木箱も空。でも、主人公の「僕」はそれを信じたのだと思う。


「ガイド」について
・いつの時点から語られている物語なのか気になった。大人になった「僕」が過去の思い出を語っているとも読めるし、子どもの「僕」が現在進行形で語っているとも読める。
・題名屋が「思い出を持たない人間はいない」というタイトルをつけたのは、何でもない日常が大切だということを「僕」に暗に示したかったからではないか。
・主人公の「僕」は子どもと大人の部分を両方持っている。自分の甥っ子を思い出した。
・「シャツ屋」のシャツといい、「僕」の母の旗といい、物をお守りにしている人が出てくると感じた。『海』と同じようにここでも人間関係以外の価値を描いている。

「海」「ガイド」を読み、共通して思ったのは、人は意外と人間関係以外のものに支えられて日常を過ごしているということです。考えてみれば私自身も本や映画に支えられて生きています。

読書会後はランチ会に行きました。
読書好きの方が集まったので、おすすめの本や書店、よく行く読書会の話などで盛り上がりました。

参加者の皆さん、本当にありがとうございました。
 
今日の読書会に題名をつけるとしたら「人は“もの”に支えられて生きている」でしょうか。

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