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コーチが目の前で4回もスライディングしてくれた日

誰よりも親身に教えてくれるコーチが、
なぜか多くネタにされたり、
そのコーチといる状況が究極に笑いを誘う人だというご経験は少なからずあるだろう。

僕にとってFコーチはそういう方であり、
そのコーチが高揚しスライディングをし、先輩のグローブが削られた話
でもFコーチは素晴らしい人だったという話

よくあることだが、Aチームの監督コーチよりもBチームのコーチの方が熱く親身に叱ってくれたり、教えてくれたりするもので、僕たちのコーチもそうだった。

BチームのFコーチ
Fコーチは僕たちの野球部卒ということもあり、本当に熱心だった。
昼間は介護の仕事をしながら、夕方になると僕たちのために練習にきて、
ノックを打ってくれたりとしていた。(ちなみにノックはめちゃくちゃ上手い)大人になって分かるこの有り難みである。

ただ、ハゲということと、声が高いこと、また、野球部を卒業してFコーチが大学生になった時の野球部の後輩のマネージャーと付き合い、結婚しているという点で、どこか、やはり、選手からはネタにされてしまう。

娘さんもいて、まだ小さく、本当に可愛い。
たまに学校に来てくれて、お父さん(Fコーチ)と共にグラウンドを歩いたりしていた。ただ、Fコーチがマっっジで真剣な話をしている、
「ここは絶対に、絶対に、何があっても笑ってはいけない緊張」状況下


「パパおしっこー!」



とか、Fコーチのグローブの匂いを嗅いで


「くちゃい」



と軽く爆弾を投下してくる。

それに対するFコーチの「後でな」という返事も連鎖的に発動するように仕組まれている笑いを脳に押し込んでくるウイルスである。


Fコーチのスライディング
練習試合を神奈川から群馬へ泊まりで遠征に行った日だった。

2日目の最終試合は群馬の強豪校との対戦。

AチームとBチームに別れての試合会場、僕はBチームにいた。
FコーチはBチームを担当して下さり、僕は出番なく二試合が終了した。
Bチームは実力の差をまざまざと見せつけれて敗戦、
これからの向上意識の改善が求められていたことは目に見えていた。


試合後荷物をまとめる前に半円形で立ち、コーチの話を聞く。

Fコーチ「お前ら、あいつら(相手高)のスライディングみたか?)
「あいつらのヘッドスライディングは、お前らのスライディングより早い!」

かなり高い声でこれを言われたらもうすでに面白い。

説明します。
通常のヘッドスライディングは普通のスライディングより遅い。
相手高のヘッドスライディングは僕たちのスライディングより早かったらしい。要するに彼らの普通のスライディングは、我々のスライディングより早いのだ。

A<Bが成り立ち、C<Dがある。
D<Aの場合、
D<Bなのだ。

もっと分かりやすく言います。

日本では松本潤は松本人志よりもイケメン。同時にB'zの松本は僕の友達の松元君よりもイケメン。
もし、松本人志がB'zの松本よりもイケメンの場合は、松本潤はB'zの松本よりもイケメンなのだ。

もう一個良い例が、「もうええわ!」

Fコーチ

「あいつらのスライディングみたか?」

「ここがベースだとしたらなぁあ?」足でベースを描き、

「お前らはこう」僕たちのスライディングを見せる

「あいつらはこう!」相手高のスライディングを見せる

これを2セットした

今になって気づくが、人のスライディングを目の前で見ることってない。
試合に出ていても至近距離で見ることはないし、もし見たとしてもそれに集中して見ることはない。無論、街中でスライディングをしている人が居たら教えて欲しい。すぐに駆けつけます。

そしてFコーチがスライディングのために距離を取らないため、スライディング自体が中途半端な速度なのだ。そうなるとスライディングは、ものすごくダサい。人が間違えて転んだのか、故意的にスライディングしてるのかわからないレベル。差で言うと、SNSのブロックとミュートぐらいの違いである。事実上やりたいことの違いはない。

まとめます。
自分より年上の30代の大人が親身になって小さい空間で全力でスライディングをしている姿を計4回もそれも中途半端な速度で、一回一回、「お前らはこう!」と「あいつらはこう!」と繰り返す動作を目の前で見る。

更にダメ押しは、

その一回一回スライディングの位置が若干移動して行き、最後の試みでは、S先輩(部室で僕に”指導”してくれた人だ、詳しくは「こんな暗い部屋あるのってぐらい暗い部屋」を読んで欲しい)のグローブがスライディングと共に蹴られて飛んで行った。

そしてFコーチがキツそうな息使いで、最後にその座った状態から、
立っている我々に、

「分かったか?!」

いや「わかんねーよ!!」


あ、おしっこいこ。

Fコーチ、ありがとうございました。こんな僕でも今はその熱さに感激します。僕も熱い大人になりたい。ただ、グローブの犠牲は避けたい。


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