【シンセサイザー/DAW(DTM)/作編曲】ストリングスアレンジをする上で、絶対に身につけておくべきことは?【荒木陽太郎先生#5】
こちらから音声でもお楽しみいただけます🎧
今回は、キーボード・シンセサイザー奏者、DAW・プログラマー、作・編曲家と多くの顔を持つ、荒木陽太郎先生と、サックスプレイヤーでプロデューサーの沢井原兒先生の対談5回目(最終回)の様子をお送りします。
🔽前回の対談記事はこちら!
ぜひ最後までお楽しみください。
(以下、敬称略)
【対談者プロフィール】
\さらに詳しい情報はこちら📖/
沢井:今回が対談最終回ということで、たくさんお聞きしたいことはあるんですが、まずは我々が運営する音楽スクールMOP MUSIC labo.の方で荒木先生の新しい講座が始まりましたので、それに関連するお話をしたいと思います。
今はアレンジャーに限らずですが、結構個人でなんでも作れる時代になってきているじゃないですか。
荒木:はい、そうですね。
沢井:でもその中でも感覚だけではやれないというのが、ストリングスだと思うんです。
荒木:そうですね、確かに。
沢井:ですので、ストリングスはどういうふうに勉強して、どういうふうに上達を目指せば良いのかということをお聞きしたいです。
荒木:そうですね。
ストリングスは、「どう教えていくか」ということが意外と難しいところなんですよ。
講座について言えば、「こういうやり方はどうかな」とアプローチを大きく3種類に分けて作りました。
(1)和音アプローチ
(2)リズム・アプローチ
(3)ライン・アプローチ
です。
今日は、和音アプローチと、ライン・アプローチのことを中心にお話して、リズム・アプローチについても少し触れようと思います。
「和音のバッキングができてこそストリングスだろう」というのがあって、それを美しく響かせることができるかということが大切なんですが、やっぱりそこには経験とコツが必要なわけですよね。
シンセサイザーという楽器は、基本的には高低音域と同時発音数にほとんど制限のない状態で鳴らす事でできてしまいますよね。
ただし実際の弦の場合は、「これ以上、下の音は出ない」「これ以上、上の音は弾くのが難しい。」という音域の制限があります。弦の本数や演奏者の人数などによって物理的な発音数にも制限があるわけです。
その中で、最初の講座では、「実際のストリングスは、どのようにハモらせたら美しく響くのか?」というところから始めています。
生楽器の音色や音域の理解が、自由自在に和音を作れるようになる第一歩ではないかなと思うんですよ。
和音アレンジをする場合については、四声体を構成する4つのパートの音は、なるべく同時に同じ音が入らないように配慮することが望ましいです。
なので、4つのパートがそれぞれ違う音を弾いているように作ります。
4つのパートの中に同じ音を弾いている部分があると、その部分の「和音のバランス」や響きがおかしくなるので、注意が必要です。
どうしても同じ音が出てきてしまう場合は、全体バランスが崩れないように注意します。
沢井:なるほど。
荒木:次のメロディーを扱うライン・アプローチに内容については、もちろん、美しいストリングスのラインを作る事が目的ですが、作曲と同じ意味でのライン作りの方法を講座で扱うのはこの講座の範囲を超えてしまいますから、ストリングスならではの定番ライン作りを目標に、どのようなラインが効果的なのか、どのような装飾がストリングスらしいかなどを解説しています。
主旋律になる場合と、ボーカル曲のバックでの副旋律になる場合での扱い方の違いなども解説しています。
そして、3番目として、和音アプローチとラインアプローチをコンビネーションとして扱う方法にも少し触れています。
例えば、一番上の第一バイオリンがメロディを弾いていて下の3つのパートが伴奏している場合、また、上の3パートが和音を弾いている時に、一番下のチェロが動くラインを弾いている場合、上の2パートと下の2パートが違い違いに動くように組み合わせる場合、などなど、色々なコンビネーションが考えられるわけです。
アレンジ全体を見て、和音(コード)アレンジを施した場合と、旋律(ライン)アレンジを施した場合、あるいはそのコンビネーションを狙った場合など、セクションによって色々な選択をしながら、うまく構成のバランスをとっていくことが大切です。
少し先のお話ですが、今回開講した講座(荒木陽太郎が教える DAWストリングス基礎マニュアル 知識編)に続いて開講を予定している講座では、コンビネーションについてより深く解説します。
アレンジを俯瞰し、「ある部分では和音主体に」、「ある部分ではライン主体に」、「あるいはコンビネーション」という具合に、曲の部分部分で色々なアプローチを用いながら、曲全体としてうまくバランスがとれているようなアレンジの作り方のヒントを学んでもらえればと思っています。
沢井:感覚的なものだけでやるわけにはいかない、ということですよね。
荒木:そうなんですよ。
だから1番上手くいかないパターンとしては、例えばピアノが弾ける人の場合、キーボードの延長線上で和音を弾いてしまうとダメなんですよね。
そうではなくて、「あくまで単旋律を弾く4人が合奏している状態が和音になる」という感覚がつかめればいいと思います。
つまり4本の指ではなく、1本の線を弾く人が4人いるということです。
沢井:ということは、キーボードができる人=ストリングスができるということではないということですね。
荒木:そうですね。例えば、「単旋律の楽器の人が4人アンサンブルする。」
という状態を作れるかということですよね。
和音が出ない楽器4人で。
これはストリングスに限った話ではなくて、ホルンやサックスで応用したって音域さえ注意すれば全く同じ手法でできるようになりますね。
合唱も同じです。
この4つのパートの組み合わせでアレンジするという考え方は、とても基本的な考え方で、クラシックでもポップスでも同じです。
5番目のパートとしてベースを追加する場合もありますが、基本は4パートです。
今回の講座で、この4パートでのアレンジ方法を学んだら、次は木管アンサンブル、金管アンサンブルも同じ考え方でアレンジできるようになり、最終的にはオーケストラのアレンジにも通じています。
ジャズのビックバンドのブラスセクションにも応用ができると思います。
今までにはなかったような色々なドアが開くと思います。
キーボードだけでやっていた時とは違う世界が見えると思いますね。
沢井:四声体で音を作っていくということを考えた時に、ある程度ルールみたいなものがあるわけですよね。
そのルールさえわかれば、あとは感覚でできるということなんですか。
荒木:そうですね、あとは感覚でいいんですよ。
でも今度は、「その感覚をあなたは持っているのか?」というところが問われるんですよね。
和声学というクラシックの勉強に『禁則』という「これはやっちゃいけないよ」という内容出てくるわけですが、その心は、その「やってはいけないこと」を守れば、「音楽的にうまくいくよ」ということなんだと思います。
ただし、音楽的には、「やるな」と言われたら「やっちゃう」という(笑)という反骨精神もとても大切だと思っています。
最終的に「かっこよく、ちゃんとしてる」仕上がりになるならチャレンジする価値はあります。逆に、ルールを守れば基礎に基づいたしっかりした仕上がりになるのも事実です。
チャレンジャーでいることも大切、ルールを守ってしっかり仕上げるもの大切、という話ですね。
ところで、ポップスの場合、比較的4つの構成音の和音を使う事が多いですよね。
例えば、メジャーセブンとかマイナーセブンとか、 もともと、構成音が4つなので、ポップスのストリングスの和音アレンジは比較的簡単に作る事ができます。
4つの音を4つのパートに振り分ければ良いので。
逆に4番目の音のない、よりピュアな3和音の場合、4つのパートに振り分けようとすると、必ず誰かと誰かが同じ音か、オクターブ違いの同じ音を担当することになるので、その扱いの方が、少し難しかったりします。
そこに、さっきの「禁則」とかが絡んでくるので注意することになるのですが、それが4つの構成音の和音を扱う方が簡単な理由です。
そういったところを気にしなくて良いように、まずは「ダイアトニックから始めましょう」というところで、その内容を今回の講座でも取り上げています。
沢井:なるほど。
例えば弦カル(※)であればその形というものがあると思うのですが、それは大きなオーケストラになっても、基本的にはあまり変わらないということですか。
荒木:変わらないです。
ただ、音色の特徴は出るので、カルテットはカルテットの書き方とか響かせ方があって、大人数だったらそういうふうには書かないというようなことはありますけどね。
でも基本的にはいつもその形です。
「バイオリン(1、2)、ヴィオラ、チェロ」という形がベーシックとして必ずあります。
だから、イレギュラーな編成の場合は、逆に気を使います。
沢井:じゃあある程度の基本がわかれば、あとは自分の感覚でいかに表現するかということが大事になってくるわけですね。
荒木:そうです。
感覚を養うということで言えば、例えば、弦をアレンジしたいという人がアニソンが好きだったとします。
その場合、この間も言いましたけど、今のアニソンはすごい弦が凝った打ち込みの曲があったり、本物だったりというパターンがあるんですよね。
そういうようなものを聴いた時に、「これを真似したい」と思って勉強すれば、その仕組みがわかるようになってくると思います。
沢井:なるほど。
弦って、今のゲームやアニメの音楽とかにも出てきますよね。
荒木:いっぱい出てきますね!
弦の“おいしさ”を知っている作家さんとかアレンジャーさんとかは、「これは非常に良い材料だ」ということをご存知ですからね。
弦のアレンジは、ブラスアレンジより、比較的応用が効くので使い出があるのではないかなと思います。
ブラスアレンジは、むしろ「ここぞ!」という所に取っておいたりして。。。
沢井:自分で音楽をクリエイトする人は絶対スキルとして持っているべきですよね。
荒木:だと思いますね。
“おいしさ”がたくさんあるパーツだと思います。
沢井:最後に、これを聴いている方に一言お願いします。
荒木:アレンジはとっても面白い作業で、DAWと両立するという意味ではプラグインの使い方を研究するのも楽しいですし、やりがいもあることだと思いますのでぜひチャレンジしてほしいなと思います。
あと、アレンジをやっていると、選択に迷ことも多く、必ずしも、完成したあと「大満足!」とはかぎりません。
場合によっては「もっと良い選択があったかな」と思うこともあるんです(笑 )
まぁ、それはそれ、そんなものです、と割り切って次に進むということも必要です(笑)
失敗も含め、その選択こそが一期一会です。
ひとつの正解を探しているとう事ではなく、無限の可能性のひとつから、そのひとつを選んで掴んでいるんだ、考えると気が楽になるのではないでしょうか。
「今回はこれ!」「次はこれをやってみよう!」というような進め方でやっていくと楽しいと思います。
沢井:ありがとうございました。
まだまだお聞きしたいことがあるんですが、それはまた次の機会に。
今回はありがとうございました。
荒木:ありがとうございました。
私たちMOP MUSIC LABOは、アーティスト向けの音楽セミナーをオンラインで不定期開催しています。
ご興味のある方はぜひご参加ください!
🔽イベント情報はこちらから!
アカウントフォローで、今後開催予定のイベント情報が配信されます。
🔽各SNS、ポッドキャスト、YouTubeでも音楽情報を発信しています!
🔽MOP MUSIC LABO (MML)公式サイト
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?