幸せな仕事

今日も仕事をしている。
なぜ仕事をしているのかに対する答えは持っていないし、それを求めてはいない。
トートロジー的だが仕事があるから仕事をしている。その思考停止は私の選択かもしれないし、社会からの強制かもしれないが、この件に関しては思考停止していても少なくとも日常生活において支障をきたしていないのでそのままにしている。

先日、興味深い論文を見つけた(日本労働研究雑誌 558;4-19:2007 https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2007/01/pdf/004-018.pdf)。幸福度の決定要因として労働変数についての解析を行い日米間の比較を行ったこの論文では、明確な因子については決定されていないが、最適労働時間と現実の労働時間の乖離に限定して、幸福度の決定因子を勤続年数、企業規模、産業などの属性を詳細にコントロールした場合、日本においては大企業の社員であることや管理職であることが幸福感を高め、その効果は男性のみに見られるなどと興味深い記述がある(非正規雇用についても興味深い記述があるが20年近く前の論文なので時代背景の差を考えて割愛する)。
この論文の中で業種間での幸福度の比較が行われている。区分としては農業/商工・サービス/事務/労務/管理/無職となっている。労働研究については全くの素人なのでこの区分が一般的なものなのか判断できないが、事務、管理、無職で幸福が高いなど、業種間での幸福度が異なる可能性は十分に示唆さていると考えられる。

さて、全体論として幸福度の高い業種はあるのだろうか。

幸福度の高い業種というものを考えることは、まず幸福度と業種の相関の有無を検定して、相関が有るのであれば幸福度とその構成因子の交絡を考えることとなるだろう。
幸福度とを業種に相関があると想定すると、構成因子として考えられるのは賃金、雇用形態、就労時間(契約時間と残業時間に分けることが望ましい)、雇用流動性(私は雇用者の雇用先の選択権の強さであると私は解釈しているがどうなのだろう)、(スケール化した)やりがい、年齢、性別、経験年数、勤続年数などがあるか。
雇用流動性とやりがいについては統計に現れにくい気がするが、常用雇用者の離職率については厚生労働省の「令和3年上半期雇用動向調査結果の概況 」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/22-1/dl/gaikyou.pdf)という統計が見つかった。離職率が高い業種は宿泊業・飲食サービス業、教育・学習支援業、生活関連サービス業・娯楽業となっており、入職率から離職率を引いたものの差は宿泊業・飲食サービス業が-3.6ポイント、製造業で-0.1ポイントて離職率が入職率を超過しており、生活関連サービス業は+11.3ポイント、情報通信業は+3.5ポイント、学術研究・専門・技術サービス業は+2.7ポイントと入職率が離職率を超過している。こちらの統計でも業種として二次産業が含まれているが、一次産業は含まれていない(その他を含めて16業種に分類)。この統計のみからは雇用者の雇用先の選択権の強さというものは見えない。

やりがいと幸福度については、幸福度をワークライフバランスとしたこちらの論文(法政大学キャリアデザイン学部紀要 7;243-267:2010 doi/10.15002/00007371)におけるやりがいとワークライフバランスの分類が参考になるが、この論文では業種間でのやりがいとワークライフバランスの分類は比較されていない。
個人的には仕事におけるやりがいは、仕事における原則に対して以下にトートロジー的な肯定をできるかという、ある意味仕事の教義化であると考えているので、業種間(特に教育や医療など「やりがいがある」と一般的に自称しがちな業種と、それ以外の業種で)で比較したいという好奇心がある。

何れにせよ、教義を持つことで思考停止できるというのは、幸せなことなのかもしれない。

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