《続・金平糖、ころころ.》
恥ずかしい想いというのは、誰もがとおる道なのかもしれない。そんなことを教えてくれたのは可愛らしい「金平糖」でした。
まさに秋という雲が綺麗な日。これを映す水面のある庭園広がるお茶室で開かれた、お茶会に足を運ぶこととなりました。
実は、一週間前。人生初めてのお茶会で、お抹茶といただくお菓子として出された金平糖を、ころころと床にばらまく恥ずかしさを味わったばかり。今回はお菓子を落とさないよう気をつけなくちゃと気が引き締まります。平べったかったり、四角かったりして、万が一すべらせても転がりにくいものだといいなと願いながら。
ところが現れたのは、また金平糖でした。今回はお懐紙で折られた小さな小舟にのった三粒が。前回の透明な容器と比べ、すべりずらそうではあるものの、小さいので掴むのが難しそう。そんなひとり言を心の中でつぶやいていると、
「金平糖、脱走するから気をつけてくださいね。」
と声が聞こえてきたのです。遅れてお席につかれた方に、そのお隣の方が声をかけられていたのでした。
...金平糖、脱走!なにやらほっとした気持ちがいたしました。なんだ、金平糖を転がしたことがあるのは、わたしだけではなかったんだと、恥ずかしさがいやに堂々としたものに変わりました。それにしても、これを脱走と表現されたお客さまの粋なこと。その表現にもずいぶんと救われた気がいたします。
初めてのお茶会で、味わった恥ずかしさ。これは踏み入れた世界の中では多くの人が体験済みのことだったようです。未熟なわたしがしてしまった粗相が、わたしだけのものでなかったと知ってからは、洗礼を受けたにすぎないと捉えられるようになって。
そして、今回無事に口へ運ぶことのできた金平糖がとても美味しかったことも、ここへ記しておきたいと想います。よく目にするそれよりも二回りくらい大きく、黒糖色をしていて、その口どけがたまらないものでした。
さぁ、お茶会の増えるこの季節。次は、どのような洗礼を受けることになるのか愉しみです。皆がとおる道と想い直してからは、すっかり気を楽にしているわたくしです。
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↓一度目の粗相のお話はこちらに。ぜひ合わせてご覧ください。
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