《立夏、ようかん、遊.》

 早い。暦の上で、まもなく「夏」を迎えることに驚かされる。まだ始まったばかり、と思っていた今年なのに。

 5月5日のこどもの日。ちょうどその日は「立夏(りっか)」にあたる。夏の幕開けとなる日だ。

 それに先駆け、夏日となった先日。いつになく輝く新緑の中を、カラフルな鯉のぼりが泳いでいた。オレンジ、赤、白、黄色、青の鯉が列をなし旗めく都内の公園。満開のツツジや菖蒲がさらにそこへ色を加える。

 園内には、透明のきらきらした噴水も並ぶ。そこで夢中になり、水遊びに興じているのは子どもたち。おむつ一丁になっていたり、洋服をずぶ濡れにさせていたりするどの子も愉しそうで。お父さんに抱かれ、水浴びをする男の子の上げる幸せな笑い声はとくによく響いていた。日陰のベンチでゆらめく鯉のぼりごしのその光景に浸っていたこちらの口元もゆるむ。

 帰り道。いつもの和菓子屋さんに立ち寄った。ふと目に留まる「水ようかん」の文字。ピンクのカーネーションが一輪描かれた母の日限定のパッケージのものを3つ買う。

 家路につき、家族でそれを口にしながら「早くないのかもしれない。」と想った。暦通り、水遊びが愉しく、水ようかんが美味しい、まばゆい季節は確実に始まろうとしていた。


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