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《柿、絆.》

 ひんやりとした空気。それが、からっともしていて。すっかり秋だなと感じるのです。

 わが家(転がり込んでいる祖母の家)には、柿の木があります。樹齢50年近くなので、わたしよりもすこしお姉さんで。

 この夏。たわわに青い実をつけ始めた時には、たいそう嬉しくなりました。昨年は初めて実がならなかったのです。正確には、たった一粒だけ実をつけました。それでも、毎年秋になるとたくさんの柿を食べることが習慣になっていたし、祖母が庭に出ては豪快にぶちぶちと枝からもいでいたことが印象的だったために、なんだか寂しくなって。

 まだ緑だけどわずかにオレンジ。だいぶオレンジ色が濃くなってきたと愉しみがふくらむ中で、「おっ!食べられる。」と初めて思ったのが敬老の日でした。

 食卓には、お祝いのごはんとともに、初収穫の柿を並べて。


 二年ぶりの豊作となったことも、この日に合わせるかのように食べ頃を迎えてくれたことも、嬉しかった日。祖母とわたしの間にある絆が、彼女と柿の木にもたしかにあるように感じたのです。

 翌朝。ふたたび食卓に柿を並べます。「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺。」とつぶやく祖母。そんなごきげんな様子にまた歓びを感じて。



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