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🇷🇺英国大でのんびりロシア語[⑤軍事作戦]


火曜日の16時から18時。ロシア語。今週のロシア語の授業から。


大きな変化

1週間の中休みを経て(英国の大学には、学期の半分が終わったところで授業をキャッチアップするための休みの週がある)、2週間のストライキがあった。その間に、ロシアはウクライナを侵略し、もしくは軍事作戦を展開し、ロシア的理解では、日本はもはやロシアに敵対する国となった。ヨーロッパはロシアに対して空を閉じ、東回りで日本に向かって飛んでいた飛行機は、西回りでアラスカ上空を経由して飛ぶようになった。日本から英国向けの国際郵便物は昨日受け入れが停止された。イギリスから日本に飛ぶ飛行機の欠航が続く。たった3週間の間に、国際世界は大きく変わった。それでも、変わらずロシア語を学ぼう。

Миру мир:World peace

先生はいつも通り授業を始めた。久しぶりの授業で、久しぶりにみんなが揃った。ずっと母国から動けなかった子が顔を出した。いつも通りの教室、と言う感じだった。先生が身に付けた、青と黄色の大きなリボンの胸飾りを別にして。
何のタイミングか、「世界」という単語が出てきた。Миру мир:World peace. ふっ、と先生の纏う雰囲気が変わって、先生は椅子に腰掛けた。
「私は、幼い頃をソビエト連邦下で過ごしました。」

声高に政権を非難することができない時代に、人々は考えを共有する人たちの間でジョークを囁くことで、対抗を続けていました。プロテストをしたのが公になれば、15年どこかわからないキャンプに送られる時代でした。15年ー冗談抜きで、15年です。若者が路上で捉えられてキャンプに送られる時代でした。
今、ロシアではSpecial Operationとして戦いを起こしています。Peace と言う言葉も、Warと言う言葉も使いません。Peaceがあると言うことは、Warがあると言うことを隠示するからです。
私は40年間ロシア語を教えてきました。この40年間で、これほど教室に行くのが辛かったことはありません。ロシア語は美しい言葉です。ロシアには豊かな文化があり、それを伝えるために教えています。一方で、戦いが起これば、当然その国への興味も高まり、言語の必要性も高まります。皮肉なことです。
今日、3月8日は、国際女性デーです。ロシアでも、ウクライナでも、大きな祝日です。全ての女性のAchievementと平等を祝い、推進する日です。そんな日に、ロシアでもウクライナでも、母親は失った息子のことを考えています。国境を超えて、その悲しみは変わりません。

そこまで行って先生は、カバンからチョコレートと蜜柑をだして、みんなに配った。「せめて私たちは、国際女性デーを祝うことにしましょう」

いつの日か訪れたい国だったロシアは、敵意をまとった国として映るようになってしまった。

通貨と小賢しい学生たち

動詞:стоитьーworth, cost. 
Моя комната стоит 1000 фунтов.
My room is worth 1000 pounds.
Моя [所有代名詞・私の] комната [名詞・部屋] стоит [動詞・価値がある]
1000 фунтов [名詞・Genetive case 複数形].

動詞стоитьを扱った。先生が口を開く。「去年試験の問題に、『あなたの家賃はいくらですか?(あなたの部屋に対していくら払っていますか)』と言う質問を出しました。学生寮の寮費を聞いたわけです。多くの学生がユーロで答えたので、UCLは留学生に対して£ではなくてユーロで払わせているのかと思いました。」
そんなことはない。ロンドンではポンドが使われている。種明かしはこうだーポンドはロシア語でфунт(男性名詞・単数)、ユーロはロシア語でЕвро(中性名詞・単数)。中性名詞の場合は語形変化がないため、変形する手間が省けるから、みんなユーロ表記にして手間を省いたわけだ。

学生はいつだって小賢しい。

ストライキ

ロシア語の授業は、これまでの2週間がストライキで潰れている。昨日、最終週の授業も丸々潰れることが確定した。最終週にはテスト(全体の10%)がある。その次の週からは春休みの突入して授業に関連したことはできないから、テストをやるタイミングがにっちもさっちも行かなくなった。もうどうしたらいいのか分からないのよね、と先生が呟いた。先生が休憩を挟み忘れて2時間ぶっ続けになった授業は、むしろ短いくらいだった。

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