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政治社会学とアイデンティティの話 #3

#2を投稿したのがいつのことか全くわからないが、書きかけの#3が発掘されたため、完成させてあげたいと思う。色々「面白い!」と思ったことを、忘れたくないがために書き留めているのに、そのまま忘却の彼方に放置してしまったら、それほど勿体無いことはないだろう。


あなたの「階級(Class)」は?と聞かれたら、なんと答えるだろうか?

珍しく、私の社会学のクラスは15人位いる中の大半の生徒が口を開くクラスだった。大抵のクラスでは良く喋る人が2人くらいいて、あとはグループディスカッションで話すのがメイン、みたいになるのだが、このクラスはそこそこみんながディスカッションの後の発表のタイミングや、先生が新しい質問を提示したときに全体の前で話す。よく話す子もいるが、他のクラスと比べて均等度が高い気がする。
その上、社会学の授業は他学部の自由履修の対象になっているので、色々な学部の色々な人が受けている。中国人、フランス人、南アフリカからフランスに移住したフランス人、スペイン人、ドバイで育ったイギリス人、日本人(私)。ウクライナ人、スコットランド人、ウェールズ人。みんなが自分の国や社会の経験を持ち寄るから面白い。

そんな社会学の授業で触れた、階級の区分けについて記しておきたい。

最近の英国では、今まで使っていた職業に基づいたクラス分けから、社会・経済・文化的資産の保有度合いによってクラスを分けよういう考え方が広まっている。それに基づいて、以下の7つの階級を提案している学者がいる。

①‘elite’ - whose wealth separates them from an established middle class
②‘Established middle class’
③‘technical experts’
④‘new affluent workers
⑤ageing traditional working class
⑥precariat’ characterised by very low levels of capital
⑦emergent service worker

Savage et al 2013

①エリート:確立された財産を有する点において、中流階級と区別される
②安定した中流階級
③技術的専門職
④豊かな労働者(新たに発展した)
⑤伝統的な労働者(高齢化しつつある)
⑥プレカリアート(不安定な就業契約上で働く人)
⑦サービス業従事者

和訳は筆者

こう見ると、この区分けはそこそこ重複している気がする。一方で、そこそこ信憑性のある区分けとし認識されているのも事実だ。

英国BBCには、自分の階級を特定するためのオンラインツールが提供されている。

それを見ながら、かつ自分の判定を見ながら、みんなで色々と話した。

英国
社会的・文化的資産が重要。確かにLordなどの制度が残っている国では、「エリート」が確立されて受け止められているのは当然に思える。同時に彼は、「たとえビジネスで成功してもエリートにはなれない」と付け足した。これは新しい資産であって、脈々と受け継がれてきたそれではないから。

中国
プロレタリアート、中流階級そして「自由な」階級。自由な人々は社会の中心的な人々で、その他の階級は搾取されている人々。私のリスニングがあっていたのか自信がなくなってきたが、英国初の階級区分制度は共産党統治の国には全くもって当てはまらないのは当然だ。

スペイン
スペインには王様がいるが、貴族の方が国王よりもいまだに大事。この貴族はaristocratである。そう思うと、ここの社会的やアイデンティティはその国の政治制度にも影響されるわけだ。

フランス
アルジェリアからの移民として暮らす彼女は、「労働者階級に属していることを意識すること」が大事だと言った。「一生懸命に働くこと」が上に登ことに繋がるから。

ドバイ
国籍に豊かな、国際色に溢れる国である。イギリスでドバイ出身の人に出会うことも少なくない。その国際色から、出身学校や属する文化圏、社会的関係は重要ではないー経済が全て。制度的には、外国人に対しても開いた身分制度であるわけだ。一方で、お金があっても頂点、エリートになることはできない。これはドバイ国民に限られている、という点においてはイギリスに似ているかもしれない。

ウクライナ
1989年以降(冷戦の終結後)からは、社会の中で強い影響力を持つためには、豊かなコネを持っていることが必要と言い切った。

こうやって書いてみると、社会的身分というのは、その区分けだけではなくて、国の社会制度やら歴史やら政治やらさまざまなものに影響されていることがわかるかと思う。

ここでは書かなかったけれど、あなたが教室にいたら、「日本の社会制度」をどうやって説明しますか。

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