【日帰りParis】#2 旅程と朝焼け
朝4時。正確には3時50分に起床。前日夜遅くまで出ていたので、睡眠時間文字通り4時間である。ぼんやりとしたまま服を着て、顔をあらって化粧をした。4時半、家をでる。
朝4時は未だに暗い。暗いものの、12時を過ぎた後の街の静かさというよりも、これから動き出す街の静かさという感じがして面白いなと思う。目隠した状態で突然朝1時の街と朝4時の街に放り出されたら、多分月を見ることなくどちらかわかるだろうなと思う。
寒いのでマフラーをぐるぐるにして歩く。King's Crossの駅前は治安が悪いことで知られている。お家がない方がいらっしゃるのは平常として、路上の積極的な怪しい人も。最近しょっちゅう「駅で警察に止められて電車に乗れなくて、鞄を忘れてきてしまったのでチケットを買うお金を貸してください…」というタイプの怪しい人によく遭遇する。なんなら昨日大学の前でそれをやられ、朝4時のKing's Crossの前でやられ、のちにフランスのGare Du Nordでもやられることになる。「あなたなら助けてくれると思ったのに…!」と言われるが、こちらは毎日同じ手口に付き合わされているのだ。想像してもないと思うけど。まず現金持ってないしな。
とにかく駅にたどり着いて、列に並ぶ。ユーロスターロンドン発、始発である。6時30分発。イギリスがEU離脱したからなのか、出国審査がある。空港のパスポート読み取り機を彷彿とさせる改札を通り、ボーダー・コントロールにパスポートを見せる。禿頭の出国審査官のおじさんが、私のことをギロリと睨んで、それから私のパスポートもギロリと睨んで、私の顔を覗き込むようにしながらパスポートを返して、「アリガトウゴザイマス」と言ってニヤリと笑った。そのまましばらく待合室で本を読みながら待つ。
ながい電車だ。全部で20車両くらいあるんじゃないかと思った。17車両目まで延々と歩いて、ストンと腰を下ろしてそのまま眠った。窓際だったし、隣のおじさんは英国のビジネスマンっぽい人だったし、リュックを抱え込んで寝ればまあ。
途中で電車は地下にもぐる。トンネルを通るので、ぼんやりとしながらも何回か耳から空気が抜ける感覚があった。新幹線のように、なんとも静かな電車だな、と思った。
ーーー
ふと目が覚めると、電車はどこかの田園地帯を走っていた。朝焼けの直後なのか、穀物の生えていない畑の上に、淡い黄色の光が広がっていた。淡くてぼんやりとして、裸の畑を覆い隠すような淡い黄色の光は、息を呑むほどに美しかった。しばらくぼんやりとしてから携帯に目を落として、フランスに入っていることを知った。窓の外に広がる朝の光を見て、フランスという国に印象派の画家が育ったのは、フランスという国が美しいからなんだな、と思った。そう思わせるほどに、朝の光がそれほどに美しかったのだ。
ちなみに英国で契約を契約していれば、EUおよびその他ヨーロッパ諸国でも、自国内と同じようにデータを使うことができるらしい(Giffgaffの場合)。いちいちWiFiを借りるたりSIMカードを買ったりしたりするのは面倒くさい。経済統合って便利ですね。
そんなこんなで、2時間15分の惰眠と感動を貪っていたら、パリ・Gare du nordに着いた。イギリス側でフランスの入国審査も済ませているので、電車から降りたらフリーである。突然解放されて、しばらくワケがわからない気持ちになった。
ルーブル美術館に行こう。ルーブル美術館に行くには、電車が止まった駅からPoisson(魚)みたいな名前の地下鉄の駅から、地下鉄で5駅くらい歩けばいいらしい。今調べてみたら、Poissonnière(魚屋)だった。フランスのイメージに違わずまっすぐな道を下っていけば、地下鉄の駅があった。
カウンターのおじさんに、とりあえず à la Musée du Louvre, s'il vous plaitと言ってみる。おじさんが Un? と言うので、Oui. と言ってみたら、チケットを買えた。適当なフランス語バンザイ。シンガポールでも使っていたマルチ・カレンシーカードをそのまま使って、便利なものだなあと思う。
そのまま雰囲気で電車に乗り込み、Musée du Louvre駅に降りる。Sortier(出口)の標識に従って外に出れば、目の前にルーブル美術館が立っていた。Westminister Stationを出るとBig Benが立っている時のあの感じに似ている。駅を出て、どかん。
ルーブルにたどり着くまででだいぶ色々書いてしまったので、あとは続編に回すことにしようと思う。
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