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ナラッキー行った

クソ長文(5673文字)、ネタバレ、脱線を含む

17:04    見たものの記憶はすぐに逃げていくので、帰りの電車の中で書き留めておく。沢山歩いたので、タイツの圧でつま先が痛い。

15:17   新宿駅に到着。東口から1回外に出てトイレを探そうとするが、出てすぐに歌舞伎町だったので引き返してLUMINE ESTのトイレに入る。用を足し、すっぴんだったのでパウダールームで化粧をする。背後のギャルからの圧が怖い。
化粧を終え、緊張しながら歌舞伎町を歩く。誰か他の人を誘っても良かったが、面倒だったのでひとりで来た。路地裏の汚さや嫌な臭いにぞっとする。

16:00前(?)  王城ビルに到着。ビルの前で客引きやキャッチへの注意を促す放送が、スピーカーから流れている。これも作品なのか、それとも本当の放送なのかよくわからない。なんだかもう始まっているみたいでわくわくする。いや、JR新宿駅の東口を出た瞬間から、もう始まっていたのかもしれない(椎名林檎風に言ってみたが、ゴリゴリ京王線ユーザー)。
受付で「まずは同意書に同意をお願いします」と言われ、命でも狙われるのだろうかとビビる(そんなことはなかった)。チケットを買い、公園を回って展示入口に向かう。やっぱり路地裏は凄い臭いがする。

 路地裏の入口


展示入口

入口から入って2階に上がると、スタッフのお兄さんに「こちらへどうぞ」となんか暗い空間に案内される。入口が板一枚で橋渡ししてあって、めちゃくちゃ怖い。人数制限5人までって書いてあったが、5人でも充分怖いんじゃないかしら。入ると、朽ちたビルの内部構造が見える。その中で呪文(?)を唱えるような女の人の声がこだまする(内容はあまり聞き取れなかった)。怖いけどわくわく。人間にはみな廃墟マニアの血が流れているのだろうか。

なんか暗い空間

順路を進み、狭い部屋に入り、喋っている女性の口元だけが写されている映像作品を鑑賞。
エリイさんだろうか。口紅の色と歯の白い艶が毒々しい。「キャッチも才能だと思うんです。人の心をキャッチできるというのは」という台詞と、王城ビルの前で流れていた放送がリンクする。

映像が一周して、入口とは別の扉から入る。順路がわかりづらくて、どきどきする。でもそれも楽しい。扉の前に、過激な表現を含みますというような但し書き。「裸体表現や突起物」と書いてあって、「突起物は裸体表現に含まれないのかしら」などと思ったが、鉄の棒などのガチ突起物だった。ダブルミーニング?

ガチ突起物だらけ

あちこちに貼ってあった疑ってかかれ!のステッカーが印象深い。展示をやる度に、ホワイトキューブでやるなら考えなくていいことを、Chim↑Pomはずっと考えてきたのだなと思った。初めてChim↑Pomの展示を見たのが森美術館で、今回は2回目だったが、彼らにとってはホワイトキューブの方がイレギュラーなんだ、だからあんな風に道を作ったりとか2階構造にしたりしたんだ、ということがわかった。しかしいくら構造をいじったところでホワイトキューブというのはホワイトキューブなんだ。王城ビルの臭さとか構造の危なさを体感して、そう理解した。
空間は、色んな人の声(映像作品のもの)、ドンドンと何かを叩くような音、電話の音などがこだまして騒がしい。ライティングも毒々しい。
そういった

17:50 最寄り駅に到着。いったんスーパーで晩御飯のための買い物をする。買ってる間に忘れませんように。

18:35  買い物して、バス乗ってTwitterなどしてしまいこんな時間に。トマトが223円もして憤死しそうになった。

そういった、毒々しい雰囲気のものを王城ビルがもつレトロな雰囲気が包み込んでいる。不思議と居心地は悪くない。同じフロアの別室に入る。

同じフロアの別室

ドラァグクイーンの方の、化粧をテープで写し取った作品。美術教育を受けた方ではないのだろうが、私のような美大生がつくるしょうもない作品よりはるかに現代アート。生き様拓本。作品と一緒に、この作品に関するメモが展示してあって、それに心打たれた。泣きそうになった。この人にとって化粧は特別なものなんだ。私のようにトイレのパウダールームでぱぱっと雑に化粧なんか出来ないんだろう。作品を作ることに慣れるということは、

18:48  バス停から歩いて、帰宅。

演出の技術が高くなるということだ。洗練はされるが、生っぽさは失われる。
やっぱり、美術をやっていない人の、あるいはやっていても俯瞰できないタイプの人の、たまたま洗練された形式を取る生っぽい作品には勝てない。そういうのを才能って呼ぶんじゃないかとつくづく思う。

また元の広い空間に戻る。奈落で行われたパフォーマンスの映像。特殊メイクをしてネズミに扮するダンサーが印象的だった。路地裏のゴミの中からこちら(カメラ)を覗く映像の、怯える目付き動きとかが本当にネズミみたいだった。ダンスって演技なんだ。


もしもしチューリップ

かわいい~~ピンクかわよ。
これはもしもしチューリップという3人組による、パフォーマンス?3人が写る写真と、電話番号を広告に載せて町中に貼り出す。その番号にかけるとこの電話が鳴るという仕組み。展示されていた映像作品の中では新宿のデジタルサイネージで宣伝していた。その場にいたお客さんが番号にかけていたけど、電話は鳴ってなかった。あ、今(19:03)かけてみようかな?
19:05 え?なんか全然違う株式会社なんとかに繋がった。え~~めっちゃごめんなさ~~い
画像拡大して番号確認しただけだからな、間違えたんだろうか。てか買ってきたものを冷蔵庫にしまわねば。

21:56  ご飯を作り、食べ、お酒を飲んだらこんな時間になってしまった。大量のからあげ。続きを書こう。
電話のゾーンの、キラキラのスパンコールとか、ピンクの照明とか、Chim↑Pomが歌舞伎町を舞台に、そして電話という明確なコンセプトをもってやるからいいのであって(そして展示空間の1部に過ぎないからいいのであって)、名もない美大生の展示で、特に明確なテーマもないこういうテイストの作品をみたら高をくくって真面目に見ないだろうなあとか思ってしまった。ほんとは私もこういうかわいいの作りたいんだけど~~~~今の美大生においてはピンクキラキラサブカル系とかレッドオーシャン過ぎて~~差別化をはかるのが難しいから~~~~好きなのにできない~~~~~いつかめちゃくちゃ理論武装してやってみよう。ちゃんと自分の実感は伴った上でね。


ここ、なんか好きだった 通行人も見えた

2階のフロアを出て、順路合ってるのかな~と思いながら階段を上がると上の階から音楽が聞こえてくる。丸の内サディスティック。こっちだ!と確信を持ちワクワクしながら階段を駆け上る。

4F

上がるとそこはフリーカラオケブースだった。
お客さんの女の人がステージに立って歌っている。丸の内サディスティックが終わると、彼女の友人が東京事変の修羅場を入れたので、私もデンモクを手に取る。事変の女の子は誰でもを入れると、修羅場を歌っていた女の人に👌サインをもらった。知らない人なのに、なんか嬉しい。自分の番になって、ステージの上で歌う。自分で言うのもなんだが、私はそれなりに歌が上手い。でも高校生の時に入っていたアコースティックギター部の発表で、カーストが低いせいでボーカルをやらせてもらえなくて、あんまり人前で歌ったことがない(せいぜいカラオケくらい)。だから知らない人の前で歌うのはすごく嬉しかったし、気持ちよかった。なんか、また機会があれば人前で歌いたい。私の次に歌った人も、事変のキラーチューンを歌っていて最高だった。新宿っぽいかも。
森美の「道」の展示でもそう思ったけれど、Chim↑Pomの展示は「わたしたち」が主人公になれることが素敵だ。体験型って言うと陳腐な感じもするけれど、自分もちょっと危ない場所を歩くとか、くさい臭いを嗅ぐとか、歌うとか、他人事でなく自分がこの空間を体験するということを強いられるし、しかもそこに強制されているという感じがない。ナッジ?自発的に動いてるという意識を持ちながら、わたしたちは彼らにコントロールされているのかもしれない。
もちろん、私はこんなにビルを貸し切ってインスタレーション作品を作ったりということはしたことはないけれど、でも、ただの絵だったとしても、そういう鑑賞者が中に入って行けるような仕組みをつくるとができたら素敵だなと思った。どうしたらいいのかは、まだ何もわからないけれど。

カラオケした後は5Fの屋上に上がる。

王城ビルの看板の裏
光は新宿より

開けていてきもちいい。戦後(?)の復興のスローガンだったらしい(全部うろ覚えでごめんなさい)。大きい丸い半球のなんかがあって、2階にあったヌード写真を思い出す。ここの球体の上に立って撮ったものだったのか。

屋上を出る。順路がわからないでいると、清掃員のような格好をしたおじいさんが地下にも展示があると案内してくれる。階段を降りて地下に向かう。 1階に着いて、そこから地下に続く階段を降りていくと今までで1番きつい、ドブのような臭いがする。

奈落だ

下水道の映像


ナラッキー。神出鬼没らしい

ゴオオオオオオという爆音がずっと鳴っている。人の声がするけど、音声なのか、上にいる人の声なのかわからない。人の声がしたのは1階だっけ?もう記憶が曖昧である。
写真を撮り忘れたが、小さい魚が泳いでいる水槽があった。これは下水道なのだろうかと思ったが、水は綺麗そう。水槽の向かいにあるスクリーンには、足(ネイルをしている)のまわりに魚が集まって、足の角質?を魚に食べさせている映像。水槽のまわりにはせか

翌5:02 寝落ちしていた。何て書こうとしたんだっけ。水槽の写真を撮るのを忘れてしまった。水槽はふたつあって、水色のタイル張り。後ろ側には座って水に足をいれられるような台がある。台にいくつかティッシュペーパーが置いてある。台は、少し高い位置にあるので階段で登れるようになっているが、階段には足跡にバツが着いたマークのシールが貼ってある。これは、土足厳禁という意味なのか登っちゃいけないという意味なのか。
階段を登って水槽に足を入れることを、促しながら制限している。そういう装置ということなんだろうか。
そういえば、最初にQRで読み込んだ作品解説のハンドアウトは全然読まなかった。作品を鑑賞するのに精一杯で、存在を忘れていた。読んで全てが解明されたら悲しいので、それはそれでいい気がする。
あと、すごく小さなことだけど、この地下空間の床に、小さな蛍光テープの破片みたいなものが貼られていて、暗い空間だったので結構光っていて面白かった。貼ってあるのが故意かは否かわからない。この展示自体全部そんな感じだった。どこまでがホントで、どこまでが演出かよくわからない。だから故意の演出すらもリアリティをもってこちらに迫ってくる。

1階にあがる。

併設されたにんげんレストラン

メニューがおどろおどろしいのと、地下の酷い臭いを嗅いだ後だったので入店はしなかった。レストランをやるからには、ちゃんと衛生管理はされてると思うけど。

キッズスペース

ハッピースプリングの時にも森美に併設されていたキッズスペース。すごくいい取組みだけど、私が赤ちゃんだとして歌舞伎町連れてこられたら泣いちゃうかも。

グッズを売っているコーナーがある。胸元にラメで「にんげん」と書かれたTシャツが可愛かったが、大学生には厳しい値段だったので断念。「疑ってかかれ」ステッカーが330円で売っていたのでそれを買う。金髪のお兄さんがお会計をしてくれた。彼のレジに慣れていない感じとか、たくさんの小銭が並んで詰められているプラスチックのケースとか、学生の展示の物販みたいな感じでなんかエモくてよかった。

外に出る。隣の神社兼公園?みたいな場所に入る。

この、ワンカップ大関が置かれてるのが故意じゃないのがすごいよ歌舞伎町。これが一番衝撃だったまである。私は普段歌舞伎町に全然縁がないので、こういう現実のほうに驚かされてばかりだった。

また新宿駅にもどる。王城ビルから少し離れた場所でも、キャッチや客引きに関する注意の放送が流れている。あ、じゃああれはホントのやつだったんだ。  ていうか変な人に絡まれたりしなくてよかった。ドン・キホーテ前の交差点に着くと、向こう岸の人たちがみんな猫の3Dの広告にスマホを向けていた。
やっぱり、ディズニーランドが舞浜駅を出た瞬間に始まるように、ナラッキーも新宿駅を出た瞬間に始まっていたんだろう。それが、作られたものじゃないのがすごい。夢の国じゃなくて現実の国のくせにテーマパークみたいだった。私はこれからも歌舞伎町とは縁のない生活を送って行くと思うが、ネガティブなイメージを持っていた歌舞伎町という街の見え方が少し変わった。ナラッキーは、私のような人間では本来味わうことのできない、歌舞伎町のおいしいところだけを安全に味わわせてくれた。
最近は嫌なことがあって、しょっちゅう死にたいというようなことを思っていたが、Chim↑Pomというアーティストがいること、彼らと同じくらい、もしくはそれ以上に素敵なアーティストが世界にはたくさんいること、私もこういう現実か演出かよくわからないような作品を作ってみたいと思えたこと、そういうことを考えるとこれから生きていってもいいかもしれないと思った。ドラァグクイーンの方の作品を見ても改めて思ったけれど、悩むということはその悩んでいることがらに関する自論を体系化することで、それを形にすることが美術のひとつのあり方だ。嫌なことがあったら美術チャンス。そう思ってれば、天寿を全うすることが出来るかもしれない。それが幸せかもわからないけどね。でもがんばろう、ありがとう、Chim↑Pom from Smappa! Group。


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